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892話 異世界人は合流する 【レナ視点】

 おばあちゃんからフローリアとの昔話を聞いていると、(あずさ)のスマホから通知を報せる音が鳴った。


「ん? あぁ! 相葉(あいば)くん、上賀茂(かみがも)着いたって!」


「おや、もう一人来るのかい?」


「うん。あたしが異世界で知り合った人なんだけど、一緒にこっちに戻されちゃってたみたいでね。どうせなら一緒に帰ろうって話になってるみたい」


「なるほどねぇ。その相葉くんって子は、もしかして恋奈(れな)の彼氏」


「な訳ないでしょ。あたしに色恋はまだ早いですー」


「あっはっは! そんなことを言ってると、あっという間に三十になるからねぇ! せいぜい気を付けるんだよ?」


「分かってるよ、もう」


 おばあちゃんにからかわれ、わざと頬を膨れさせてみせる。

 そんなあたしを笑いつつ、おばあちゃんはすっと立ち上がった。


「さて、それじゃあもう一人の子を迎える準備をしようかね。駅で待ってるよう伝えてくれるかい?」


「え、おばあちゃんが迎えに行くの?」


「ここから駅までは遠いだろう。ついでに買いたいものもあるし、ささっと行ってくるよ」


 ならあたし達の時だって迎えに来てくれたって良かったじゃん。

 なんて可愛げのないことを考えている内に、おばあちゃんは庭先にあったひと際大きな物置へと入っていき、やがて見覚えのある黒の車と共に出かけて行ってしまった。


「うっわ、恋奈のおばあちゃんベンツ乗り回してるの!? カッコイイ~!!」


「結構車にこだわりがあるみたいなのよねー。っていうか、まだ返納してなかったんだ」


「話してた感じボケとかも一切無さそうだし、動きもキビキビしてるから心配無いんじゃない?」


「それもそうかも」


 おばあちゃんがボケることなんて生涯無さそうだし、この歳でもまだ趣味で舞いをやってるって言うんだから、ある意味スーパーおばあちゃんよね。

 長生きしてほしいねーなんて話をしていると、相葉さんを乗せたおばあちゃんがあっという間に戻って来た。


「戻ったよ。あぁ、別に持たなくたっていいんだよ。お客さんなんだから」


「い、いえいえ。乗せていただいたお礼に持たせてください」


「そうかい? 若いのにしっかりした子だねぇ」


「あはは……」


 そんな話をしながら縁側にやってくるおばあちゃん達を見ながら、相葉さんって確かトータルで八十年は生きてるのよね? とか思ったけど黙っておくことにした。

 縁側からひょいと降り、あたしは久しぶりに会った彼に手を振る。


「久しぶり、相葉さん!」


「恋奈ちゃん!? ひ、久しぶり、です」


「え、なんで敬語?」


「いやぁ、何でだろう……はは……」


 なんか緊張してるみたいだけど、あたし何かしたっけ?


「ちょっと相葉くん! ヘラヘラしてないでさっさとこっち来てくれる!?」


「あ、はいっ!! ごめん恋奈ちゃん、これちょっと預かっててくれるかな」


「うん、いいけど」


「相葉くん!」


「い、行きます行きます!!」


 相葉さんからリュックサックとおばあちゃんの買い出しの荷物を預かると、小走りで梓の方へと走っていき、あたし達の視線から外れるように移動していった。

 あの感じ、まさか梓がなんか脅してたりしないわよね?


「あっはっは! 相葉くんは梓の尻に敷かれてたんだねぇ!」


「そういう関係なのかなぁ……」


 あたしには「探しておく」「見つけた!」「ばっちり記憶取り戻させた!」「でもパンツ見られたからぶっ飛ばしちゃった☆」とか雑な報告ばっかりだったから、正直あの二人がどういう関係なのかさっぱり分からない。

 まぁでも、梓に限ってそういう関係になるとは思えないし、気にする必要も無いわよね。


 そう思っていた時期が、二分前のあたしにもあった。

 若干体を火照らせて、何故かフラフラになっている梓と、気まずそうに顔を背けながら肩を貸している相葉さんを見るまでは。


「嘘でしょ……?」


「やれやれ……。若さが溢れてるってことは良いことだけど、人様の家でいきなりそういう事をするのはどうかと私は思うよ?」


「い、いやいやいやいや!? 違うんです! その、俺達そんな関係じゃなくて!!」


「おや、じゃあ何だって言うんだい? 最近の若い子の遊びには疎くてねぇ、後学のために教えてくれないかい?」


「え、えぇ!? ええと、何て言うか、どう口で説明すればいいんだ……!?」


 助けを求めるようにあたしを見てくるけど、今回は全く関与してないから何一つ分かんないわよ。

 あたふたしながら、説明兼弁明を必死に考えている相葉さんに肩を貸してもらっていた梓が、縁側へ辿り着いてすぐにふにゃりと横になる。

 そのまま自分の胸元に風を送り込もうと服をパタパタさせながら、梓は息を整えながら言った。


「相葉くんに入れようとしたんだけど、上手く入らなくてね……? ちょっと無理やり入れようとしたら、相葉くんのが私に入ってきちゃって、色々大変だったの……」


 その説明に、相葉さんは口を大きく開けながら顔を青ざめさせ。


「はぁ……。恋奈、物置に竹刀(しない)があるから取って来ておくれ」


「分かったわ」


「待って!? 恋奈ちゃん、キミは勘違いをしている!! おばあさんも待ってください!! 俺達そう言う関係じゃないんです!! 信じてください!!」


 即座にあたしが持って来た竹刀を装備したおばあちゃんの前で、恥も外聞も投げ捨てた見事な土下座を披露したのだった。

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