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884話 義妹達は遊びたい 【シリア視点】

 フローリアの阿呆に連絡が付かず、どうせ今日もぐうたらと遊んでおるのじゃろうと読んで庭園へ向かうと、案の定そこに奴の姿があった。


「ほぉらエミリちゃん、行くわよ~!!」


『わぁい!!』


「エミリ凄いです! 今度はティファニーにも投げさせてください!」


 庭園でフリスビーに興じているフローリアとティファニーは、容姿に共通点があることから、見ようによっては仲睦まじく遊ぶ姉妹にも見えるのじゃろう。

 ……そのフリスビーを咥えて駆けているのが、縦に二メートルを優に超える神狼種のエミリでなければ。


「遊ぶのは構わんが、もう少し人目を気にせよ。周囲からの視線が凄いぞ」


「あら、シリア! いつ来てたの?」


「今じゃ。貴様がウィズナビに出んから探したぞ、このたわけ」


「わ~お! 見て見てティファニーちゃんエミリちゃん! 私達人気者よ~!」


 キャッキャと周囲の魔女に手を振り始める阿呆に呆れていると、あろうことか奇特な視線を送っていたはずの連中まで手を振り返しておった。

 何じゃこれ。妾の感性が間違っておるのか?


 頭痛を覚え、額に手を当てながら溜息を吐く妾に、エミリが嬉しそうに額を押し当てて来た。


『えへへ~! シリアちゃんと会うの久しぶりだぁ~!』


「むおっ、これ、やめんか! ……ったく、ほんにお主はしょうがないやつじゃのう!」


『わぁ~!! あはははっ! くすぐったいよシリアちゃん~!!』


 魔法でひょいとエミリをひっくり返し、仰向けになった腹をまさぐりまわしてやる。

 体をくねらせながら喜ぶ姿に、次第にティファニーとフローリアも混ざり始めた。


 わしゃわしゃと撫でてやっていると、申し訳なさそうにユリアナが口を開く。


「あのー、シリア様。大神様の下に向かわれるんじゃ……」


「そうであった! ほれ、貴様が遊んでばかりいたから忘れたでは無いか!」


「いたっ!? 何で叩かれたの私!? 遊んでたのはシリアじゃない!!」


「日頃の行いじゃ! して、大神様は今どこにいらっしゃる?」


「大神様ならあそこよ」


 フローリアが指で示す先には、庭園の隅の方でティータイムを楽しんでいる大神様と、その給仕に勤しんでいるスティアの姿があった。

 妾がその姿に気づいたのを察し、大神様はにっこりと笑いながらこちらに手を振ってくる。


「さ、先に言わんか!! このたわけが!!」


「きゃん!? 何で叩くのよ~! 脳細胞が死んじゃうじゃない!!」


「貴様の脳細胞なぞ、ハナから死滅しておろう!!」


 見られていた気恥ずかしさを誤魔化すようにフローリアの頭をパシンと叩き、何事も無かったかのようにそちらへと足を向ける。

 じゃが、今の今まで見られていて、何事も無かったかのようにしていただくのは到底無理な話じゃった。


「ふふ、珍しくはしゃいでいる姿が見れました。今日はいい日ですね、シリア」


「後生ですから、忘れていただけないでしょうか……」


「おや、何を恥じらう必要があるのですか? 家族とのスキンシップもまた、大切なコミュニケーションです」


「それはそうと、フローリアの頭を何度も叩くのは止めてください。ただでさえ手が付けられないほどのバカなのに、バカがさらに加速します」


「スティアお主、機嫌でも悪いのか? 素が出始めておるぞ」


 早々に罵倒が出て来たスティアの様子を伺おうとした瞬間、妾は何となく察してしまった。

 奴の頭上には、自身の髪色とお揃いの薄紫色の犬耳が生えており、腰元には風になびいている犬の尻尾が垂れていた。


「……お主まさか、エミリのように触れられたいと」


 いう訳では無かろうな。と口にしかけた妾の顔面を目掛けて、テーブル上に置いてあったナイフが投げつけられた。

 それをひょいと躱し、図星か……と呆れていると、遠くの方から「いったぁぁぁぁい!? 何!?」と悲鳴が上がった気がした。恐らく空耳じゃろう。


「口を慎めよ新入りが。大神様にそんな不純な気持ちを持つ訳がねぇだろ」


「おやスティア、お前も撫でて欲しかったのですか?」


「はい! 撫でていただきたいです!!」


 ……こ奴の身の変わりようは、ほんに目を見張るものがあるな。

 その場にしゃがみ込み、さながら犬のように両手を顔の横に持って来たスティアに小さく笑い、大神様はその頭を優しく撫で始めた。


 もう一々気にしてなどいられぬ。さっさと用件を済ませるか。


「大神様。レナの件ですが、もしかしたら私のみの力では及ばないかもしれないと思い、錬金術師を連れて参りました」


「初めまして。錬金術師のユリアナと言います」


「知っていますよ。由緒正しい錬金術師の家系、スタースミス家の一人娘、ユリアナ=スタースミス。お前のことも生まれた時から見ています」


「わ、私の家のこと知ってるんですか!?」


「知ってるも何も、こちらがこの世界を創られた創造神である、大神様じゃ。妾が生まれ、魔王を倒す時も天界から見守られていた」


 ぎょっとしながら、阿呆二号を撫でている大神様と妾と何度も見比べるユリアナ。

 その反応も無理はないじゃろうなぁと苦笑しつつ、妾は事前に大神様と異世界の神――シーラから預かっていた設計図についての話を進めることにした。

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