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786話 魔女様は分断する

【夜刃】のライゼットさん……。威風堂々たる構えと、彼女が持つ二振りの剣から、只者では無い威圧感を感じます。

 剣技には剣技で対抗するべきでしょうか。それとも、彼女を上回る速さで圧倒するべきなのでしょうか。


 レナさんとエルフォニアさん、どちらにお任せするべきかと思考を巡らせていると、ライゼットさんの隣に立ち並んだ女性が気だるげに口を開きました。


「と言っても、全員出来ている以上は私達がいるって分かってたんでしょうし、元々二手に分かれて戦うつもりだったんでしょう。はぁ……私は戦闘向きじゃないんですけど、何でこうなるんですかねー」


「つべこべ言わずに戦いなさい! また怒られたいの!?」


「それは勘弁していただきたいと言うか、次は何されるか分かったもんじゃないと言うか。とにかくやらなきゃいけないことには変わらないですし、私も半分持ちますよ」


 気だるげな彼女に、ライゼットさんは眉をひそめます。


「ユリアナ……敵と戦う時は名乗りを上げなさいと何度言わせる気?」


「えぇー? 別に名乗る必要なんて無くないですか? 相手の名前で研究が捗るんなら考えますけど」


「そう言う問題じゃないわ! 敵だろうと味方だろうと、相手になると言う事は敬意を払って正々堂々と戦う! それが騎士道ってものよ!?」


「いや、別に私騎士でも何でもないですし。ただの錬金術師ですし。って言うか、ライゼットだってなんちゃって騎士じゃないですか」


「なんちゃってって何よ!? 確かに私には使える主はいないし、魔術結社とも雇用の契約でしか関係性はないけどね!? それでも心は騎士なの! わかる!?」


「あーあー、また始まっちゃいましたよ。だから分からないですって。騎士の家系に生まれたならともかく、あなたは魔族堕ちしたエルフでしょう? エルフが騎士になるなんて聞いたこともありませんって」


「あー!? 言ったわねあなた!? 私が一番言われたくない言葉を平然と言った!! 帰ったら覚えておきなさい、ただじゃ済まさないんだから!!」


「きっと覚えてないでしょうねー。研究に使えませんし」


 な、何なのでしょうかこのお二人は……。

 良く言えば戦場でもマイペースと言いますか、悪く言えば緊張感が無いと言いますか、何と言いますか……。


「ねぇシリア、もうめんどくさいからパパッと決めちゃわない?」


『う、うむ。ならば妾達はあの小娘を倒す。お主達はあのダークエルフを頼む』


「了解よ」『承知しました』


「分かりました」「えぇ、構わないわ」


「頑張ってねレナちゃん! メイナードくん!」


「あんたも戦うのよ!」


「きゃん!!」


 ……こちらも人のことは、あまり言えないのかもしれません。

 とにかく、先を急がないといけない状況ですし、強引に話を進めさせていただきましょう。


「ええと、ライゼットさんでよろしかったでしょうか」


「何!? まだ話してる最中なのよ!?」


「す、すみません……。ですが、こちらも先を急いでるので、そろそろ戦わせていただきたいなと」


 私の言葉にハッとした彼女は、顔を赤面させながら咳払いをしました。


「そ、そうね。それで? 私の相手は誰か決まったのかしら?」


「あたしがやるわ」


「……? あら、シルヴィが出てくるものだと思っていたけど、私も随分とナメられたものね」


「あんた如きにシルヴィが出る幕は無いのよ。騎士崩れさん」


「なっ――!?」


 レナさんが放った挑発に、ライゼットさんは容易く乗ってしまい、顔を怒りで真っ赤に染め上げました。

 そして、一目見て分かるほどに全身から殺意を放ち始め、物凄い形相でレナさんに剣を突きつけます。


「じょ、上等じゃない……! 私は騎士とは言え、売られたケンカは全て買う主義よ。泣いて謝っても許さないわ!!」


「せいぜい、あたしみたいなお子様に泣かされないよう頑張ってよね。それじゃシルヴィ、そっちは任せたわ!」


「待ちなさい!!!」


 私達から引き剥がすべく、猛スピードで駆けていくレナさんを、ライゼットさんは逃がさないと言わんばかりに追いかけていきます。

 そんな彼女達に苦笑していると、残されたユリアナさんは疲れたような溜息を吐きだしました。


「うちの相方がすみませんねぇ。普段は冷静で頭も回る人なんですけど、一回頭に血が上るとまぁ知性が下がるもので」


「い、いえ。大丈夫です」


「そんなことより、あなたは随分と余裕なのね。戦闘向きでは無いと言っていたような気がするけれど」


「えぇ、戦闘向きではありませんよ。錬金術師は生産職ですし、戦闘職ではありませんから」


 やはり彼女は、シリア様の時代に魔術師と統合された、錬金術師の正当な継承者であるようです。

 錬金術師の方と会うのは初めてですし、どのような戦い方をするかが分からない以上、より警戒を強めなくてはなりません。


「まぁ戦闘職では無いとは言え、自衛ができなくてはこんな世界では生きていけないのも世の摂理と言うものですからね。他の人たちに比べたら全然ですが、そこそこは戦えるつもりですのでお構いなく」


 そう言うと、ユリアナさんは虚空から星を象った何かを複数取り出しました。

 それを両手で持った彼女は、両腕を交差させながら少し楽し気に言いました。


「あまり名乗るのは好きでは無いんですけど、新世界の鍵という大切なお客様ですからね。魔術五指が一人、【流星】のユリアナの作品を堪能していただきましょう!!」

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