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38話 魔女様と穏やかな一日(後編)

明日で3章が完結します!

明日はいつもの時間に色々と投稿予定です。お楽しみに!

 先ほどまでエルフォニアさんに授業を受けていたこともあり、お礼と言う訳ではありませんが、おやつを食べてから帰ればよいとのシリア様の提案から、メイナードの分を除いた六人分のフルーツゼリーをトレイに乗せて別棟へ向かいます。


 メイナードは時々、散歩に出ると言って夜まで帰ってこないので、今日も帰ってくる様子は無いと判断しています。


 別棟の窓際では、既にフローリア様を始めとした全員がおやつを今か今かと待ちわびている様子でした。


「あ、シルヴィちゃん来た~!」


「お姉ちゃん、今日のおやつはなに~?」


「お待たせしました。今日は涼しいおやつとして、フルーツゼリーを作ってみました」


「わぁ~! 見て見てレナちゃん、果物がゴロゴロ入ってて美味しそう!」


「ホントね! あ、シルヴィ。これもヒマジョに載せると良いわよ!」


「分かりました」


 レナさんに言われ、食べる前の出来上がりを写真に収めてヒマジョに投稿します。レナさんは自分も映るようにウィズナビを掲げて写真を撮って、同じように投稿しているようでした。


『全く、食事前だというのに(せわ)しないのぅ。どれ、先に頂くとするかの。…………ふむ、これはひんやりとしてて美味い。時期にぴったりなおやつじゃな』


「こんなに甘い桃は初めて食べたわ。シルヴィ、これはどこで仕入れてるのかしら」


「近くにハイエルフの集落がありまして、そこで作られたものです。彼女達が作る果実や野菜は、とても味が詰まっていて美味しいのですよ」


「ハイエルフってとっくに絶滅していたと思っていたけど、この森の中でひっそりと生活していたのね」


「はい。とても明るい方々でいい人達ですよ。毎日誰かしらは診療所に足を運んでくださるので、今日は技練祭の後と言うこともありお休みをいただいていますが、明日からは通常営業なのでお会いできると思います」


「なるほどね。なら、近い内に見ることがありそうね」


「皆さん、とても良い方々ですよ」


 和やかにエルフォニアさんと話していると、いつものようにレナさんの悲鳴に似た怒声が聞こえてきました。


「あぁぁぁぁぁ!? なんであたしの桃を食べるのよ!?」


「だってレナちゃん、いつまで経っても食べないんだもん。嫌いなのかな~って思って食べてあげたのっ」


「あたしは好きなものは最後に食べたいタイプなの! しかもフローリアの桃残ってるじゃない! 代わりに寄越しなさいよ!」


「あんっ、やだレナちゃん! そんな激しくされたら……!」


「変な声出さないでよバカフローリア! くっ、身長が足りない……!!」


「うっふふふ~! ちっちゃな体を懸命に伸ばしてるレナちゃん可愛いわぁ~! ほら、もうちょっとよ! が~んばれ♪ が~んばれ♪」


「だああああああ!! じっとしてなさいよおおおおお!!」


「……あの二人って、いつもあんな感じなのかしら」


「あはは……」


 レナさんを弄ぶフローリア様の姿を見ながら、今日も平和ですねと私は思いました。




「それじゃあ、また来週来るわ。ご馳走様シルヴィ」


「いえいえ。いつもありがとうございます、エルフォニアさん。お気をつけて」


 家の前で別れの挨拶を済ませたエルフォニアさんは、自身の姿を影の中へと溶かし、やがてその影すらも消えてなくなりました。


「はぁー、やっと帰ったのね! なんでアイツも生真面目に毎週来るのかしら……」


「私は色々と教われるのでありがたいですが、レナさんはやっぱりお嫌いですか?」


「んー……。教えてくれるのはいいんだけど、なんか上からだからムカつくのよね。メイナードとは違うイライラって言うか」


『自分の無学を、教鞭を振るう者にぶつけるとは……とんだ愚者だな小娘。苛立ちを覚えるより前に学ぶがよい』


「うっさいわね!! あんたみたいに単純じゃないのよこっちは!」


『ほう? ならば、そんな単純な我にも及ばない貴様は何だと言うのだ。無学な我にも分かるように言うがいい』


「あームカつく!! エルフォニアも嫌いだけどコイツの方がよっぽど嫌だわ!!」


 牙を剥き始めたレナさんを抑えるように、背後からフローリア様が優しく抱きしめながら笑いかけました。


「もぉ~、そんなカリカリしてたらお肌が荒れちゃうわよレナちゃん! 私とお風呂に入って、つやつやになってきましょ!」


「あたしは今日は一人で入りたい! うわわ、ちょっと放してフローリア!! 助けてシルヴィー!!」


「お風呂は出来てますので、ごゆっくりどうぞ」


「またこの流れ!? こんの裏切り者ぉー!!」


 いつもよりテンションが高めなフローリア様に抱きかかえられたレナさんを見送りながら、私は感想を口にしました。


「……なんだか、今日のフローリア様とても楽しそうでしたね」


『あやつが気持ち悪い笑みを浮かべておるのはいつもの事じゃが、今日は一段と気持ち悪かったな』


「何かいいことでもったのでしょうか?」


『分からぬ。じゃが、長年の付き合いの勘では関わらぬ方が利口じゃと妾は思っておる』


「そうですね……」


『ほれ、あやつの事よりもお主のことを考えよ。明日はまたポーションを納品せねばならぬのじゃろう? 作り置きはあるのか?』


「あぁー!? すっかり忘れてました……!」


 どうやら、今夜は寝るのが遅くなってしまいそうです。

 手伝ってやると仰ってくださったシリア様に感謝しつつ、私達は部屋の方へと足を向けることにしました。

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