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729話 魔女様達は目を覚ます

 崩壊寸前の魔王城から帰還した私が目を覚ますと、そこは玉座の間ではなく、天蓋付きのベッドの上でした。

 顔を横に向けてみると、私の両腕を抱きながらエミリとティファニーが寝息を立てているようです。


 今は何時頃で、ここはどこなのでしょうか。

 動けないながらも周囲の状況把握に努めようとしていると、奥の方からドアが開かれる音が聞こえてきました。


「あら、お目覚めですの?」


 声の主は、レオノーラです。

 と言う事は恐らく、ここは彼女の寝室なのかもしれません。

 私よりも先に目を覚ましていたらしい彼女は、ベッドにふわりと腰を下ろすと、エミリの頭を優しく撫でながら私へ言います。


「本当に貴女は愛されておりますわね。この子達、(わたくし)が先に目を覚ましたのに貴女だけが目を覚まさなかったからと、不安で泣きついておりましてよ?」


「私は、どれくらい眠っていたのでしょうか」


「そうですわね。私も記憶干渉を受けてからの記憶が曖昧ですが、少なくとも、あの心象世界から帰ってから四時間は経過しておりますわ」


「四時間……。そんなに眠っていたのですね」


「無理もありませんわ。いくらシリアやフローリア様が手伝っていたとは言え、貴女は本気の私の相手をさせられた上に、心象世界への干渉を行っていたのです。貴女に掛かり続けていた負担は相当なものだと、皆も理解しておりましてよ」


 レオノーラはそこで言葉を切ると、エミリとティファニーの頭を軽く触りながら睡眠魔法(スリープ)を行使しました。

 より深い眠りに落ちたエミリ達からそっと私の腕を外し、彼女は先にベッドから立ち上がります。


「まずは、食堂へ行きますわよ。今後の話なども含めて、食事をしながら話したいそうですわ」


「分かりました」


 私は身を起こし、二人の頭を撫でてからレオノーラの後に続くことにしました。





「あ! シルヴィおはよう! 体の調子はどう?」


「おはようございます。体の方は特に問題はありません」


「それは良かったわ~。ね、シリア?」


『何故妾に振る』


「だってシリアってば、“妾の調整が間違っておったか!?”な~んてパニックになってたじゃない」


「うふふ! 私には“何故貴様だけ目覚めてシルヴィが目覚めんのじゃ!!”とか噛みついてきてましたわね」


『なっ……!!』


 お二人にからかわれたシリア様は、毛を逆立てながら怒りの声を上げ始めます。


『逆に貴様らは無頓着過ぎるのじゃ!! 大神様ですら神経を使う超高度の魔法じゃぞ!? 何か手違いがあってシルヴィを失っては事じゃろうが!!』


「きゃあ!? 何で引っ掻いてくるのよ!? ホントのことでしょ~!?」


「……とまぁ、ずっとこんな感じだったから目覚めてくれてよかったわ」


「ふふ、心配をおかけしてすみません」


 シリア様とフローリア様、そして時々レオノーラでのじゃれ合いがひとしきり落ち着いた頃を見計らい、奥の扉からワゴンを押しながらミオさんとミナさんが入室してきました。


「お待たせいたしました。お夕食になります」


「いやぁ、二人だけだとやっぱり大変ですよねぇ~って、あぁー! シルヴィ様もお目覚めでしたか! お久しぶりです~!」


「お久しぶりです、ミナさん」


 今日も桃色の髪をツインテールにしているミナさんは、どこか申し訳なさそうにしながら私に言います。


「あー、その、大変申し上げにくいと言いますか、何と言いますかですね。当面は目を覚まされないとお聞きしていましたので、シルヴィ様の分はまだできていないと言いますかですね、そのぉ……」


「申し訳ございません、シルヴィ様。今、急ぎ用意いたしますので、少々お待ちいただけますでしょうか」


「あ、いえ! そんなに急がなくても大丈夫です! そこまでお腹が空いている訳でも無いので!」


「それはそれ、これはこれです! 同じ食卓に着いているのに、一人だけご飯が無いだなんて許されませんから!!」


「ミナの言う通りですわ。とりあえず、私の分をシルヴィに回しなさい。私は後でも構いませんわ」


「えぇ!? 良いんですか魔王様!? 今日は魔王様の好物の、豚肉の香草焼きですよ!?」


「客人をもてなすのが最優先事項でしてよ。その代わり、早く私の分も用意し直しなさい」


「承知いたしました。行きますよ、ミナ」


「ぁ痛っ! し、失礼致しますぅ!」


 お二人は私達の前に料理を並べ終えると、いそいそと戻っていきます。

 そんな彼女達を見ながら、私は安堵しました。


「彼女達に掛けられていた記憶干渉の魔術も、無事に解けていたのですね」


『うむ。とは言え、元々の計画通りではあるがの』


 シリア様の言葉に、レオノーラが頷きながら手を軽く開閉します。


「“操られていると見せかけた偽装魔法”……微弱な不快感は残っておりますが、この程度ならどうと言う事はありませんわ」


「ねぇシリア。これで効果があるって証明できたのはいいけど、なんでシューちゃんは効果が無かったの?」


『うむ。それはじゃな』


 シリア様がレナさんの問いに答えようとすると、扉の奥からドタバタと誰かが駆けてくる音が聞こえてきました。

 その足音の持ち主は扉を勢いよく開け放つと。


「戻ったで! いやぁー、あちこちでケンカに巻き込まれて敵わんわぁ」


 丁度、話に上がった本人がボロボロの姿で現れるのでした。

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