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705話 ギャル女神は引き受ける

 十月下旬の、太陽の日。

 今日はカイナへ協力を取り付けに、フローリア様を信仰するクロノス教の本拠地――クロノス大聖堂へ来ています。


「うぇいうぇーい!! シルシルお久~!! バイヴス上がってる~?」


「こ、こんにちはコーレリア様。バイヴス……と言うのはテンションのことで良かったでしょうか」


「そそ! ウチはもう久シルでバイヴス上がりまくりのパーリナイよ!!」


「ぱ……?」


 ダメです。相変わらずコーレリア様が使う異世界語は理解できません……。

 今日も変わらぬ“ギャルコーデ”という異世界のコーディネートに身を包んでいるコーレリア様は、「エヴリディパーリナイッ!」と謎のポーズを取りながらご機嫌に笑っています。


「もう、コーちゃんったらシルヴィちゃん困ってるでしょ~?」


「おん? お姉もなんかバイヴス低くね? どしたん? 話聞こか?」


 コーレリア様にも助力を求めたいという手紙を出していたはずですが……。とは流石に言えず、以前フローリア様によって体を成り代わられた際にお世話になった司教の方へ声を掛けます。


「改めまして、今日はお時間をいただきありがとうございます」


「とんでもございません。王女殿下の頼みとあらば、自分が使える権力の全てを使ってでも時間を設けさせていただきます」


「そ、それはありがたいですが、あまりお仕事に影響が出ない範囲でお願いします」


 かつてのグランディア王家。つまり私の本当の両親への忠誠が未だに高い司教さんに苦笑しながら、今日の本題について話し始めます。


「コーレリア様は、フローリア様からどの程度お話を共有していただいていますか?」


「キョーユー? ウチは別に何も聞いてないけど? え、ガチめに何かあった系?」


 ちらりと、フローリア様へ冗談ですよね? と視線を投げてしまいます。

 それを受けたご本人は、慌てながらコーレリア様へ説明し始めました。


「ほ、ほら! この前シルヴィちゃん達が魔術師に襲われて、シリアと一緒に核が壊されそうだったーって話したじゃない? あれよ、あれ!!」


「あぁー、そんな話もありけり。ちょい待ち、でもあれはもう解決した的なサムシングじゃなかったっけ?」


「そうなのよ~、あれで終わったって訳じゃないの。十二月にもう一回戦わないといけないんだけど、そこでシルヴィちゃん達が負けるって運命が決まってるみたいなのよね~」


「マ!? ウェイウェイウェイ、それまさかスティアがご神託出した系!?」


「そのまさか。この前スティアがうちに来てね?」


 フローリア様がこれまでの一部始終を話し終えると、コーレリア様は腕を組みながら頭を悩ませ始めてしまいました。


「こマ? シルシルはなんかヤバ気な運命ありそーってフィーリングで感じてたけど、こんなんなるって思わなくね? お姉、これ解決できんの?」


「う~ん、無理かなぁ」


「サラッと諦める辺りマジお姉って感じ。さす(あね)~、でもウチでもお手上げだわ。神殺しだなんて、ピンポイントでウチらメタじゃん。Doすんの」


「だから、コーちゃん達に手伝ってもらいたいのよ~。もちろん司教ちゃんや、うちのクロノス教のみんなにもね♪」


「はい。そのための作戦を、これからお伝えしようと思っています。私達の世紀の逆転劇のためにも、力を貸していただけませんか?」


 真剣な表情で頼み込む私に、コーレリア様はふいっと司教さんへ顔を向けました。

 それに対し、司教さんはスッと片膝を突きます。


「自分は、コーレリア様やフローリア様のご決断に従います」


「なはは。ホントそう言うとこ真面目ちゃんだわー。でも、そう言うとこがウチのお気になんだよね」


「勿体ないお言葉、恐れ入ります」


「ってな訳で、とりま話してみ? ウチ的には乗り気だけど、物によってはウチだけじゃ決められないかもしれないし?」


「ありがとうございます。では――」



 ☆★☆★☆★☆★☆



「はっは~ん、なるほどなるほど。シルシル、お主も悪よのぅ」


「私が考えた訳では無いのですが……」


 概要を伝え終えると、コーレリア様は親指と人差し指で作ったVサインを顎に当てながら、何故かあくどい顔を浮かべていらっしゃいました。


「シルヴィちゃん、そこは“オダイカンサマほどではありませぬ”って返さないと!」


「どちら様でしょうか」


「たっはー! 真面目ちゃん系シルシルはボケ殺しがキツいゼット!!」


 え、えぇ……? これは私が悪いのでしょうか……。

 どう反応したらいいか分からず困惑していると、「んま、そんなことはどーでもいいんだけど」とコーレリア様が話題を戻します。


「シルシルが捕まって、シルシルの力が使われることを前提とした作戦ね。ウチとしてはアリ寄りのアリだと思うけど、司教っちDoよ?」


「そう、ですね。自分からすればあまりにもお話の規模が大きすぎて、まだ細部の理解までには至っていないのですが」


「そーゆー細かい話は後で考えれば良くね? とりま、今はウチらが乗るか乗らないかだけ出しておきたいし」


「左様でございましたか、失礼致しました。では、クロノス教としてお答えするのであれば、協力すべきと考えます」


「っしゃ!! 信じてたわ~司教っち! さすがウチのしゅきピ! マジ推せる!!」


「恐悦至極でございます」


「ってな訳で、ウチらカイナとしてもお姉達に協力する感じでよろ~!」


「ありがとうコーちゃん! 大好き!」


「ふむほぉ!? え、マジ待ってお姉。なんか胸圧(ムネアツ)強くなってね? デブった?」


「で、デブってないわよ!! 成長したの!」


「いやいや、ウチら神が成長とかありえねーし。ほら」


 コーレリア様はそう言いながら、フローリア様のお腹のお肉をぐいっと摘まみました。


「Doよお姉? バリ霜降り肉じゃね? 女神の腹肉、一グラム当たり五百円で売っとけそうじゃね?」


「や、やめてコーちゃん! シルヴィちゃんの前で恥ずかしいわ!!」


「ね~シルシル? お姉、デブったっしょ?」


「え、えぇ? どうでしょうか……私からではそんなに分かりませんが、レナさんなら分かるかもしれません」


「ダメ!! レナちゃんには聞かないで! 絶対ダメ!!」


 と、突然涙目になりながら、フローリア様が私に言ってきました。

 聞くも何も、毎日一緒に寝ているレナさんなら気づいていそうな気もしますが……。


「なははは! レナちーなら知ってそ――んぎゃ!?」


「ふふふ……! そういうコーちゃんこそ、このお肉は何なのかしら?」


「う、ウチのお肉はデフォだし! 大神様が、ちょいムチで設計したんだし!!」


「嘘おっしゃい! コーちゃんこそ、毎日毎日外食ばっかりして太ったんじゃないの!? ほらぁ! ここも! ここも!! 黒女神の横腹肉、一グラム三百円で売っちゃうわよ!?」


「う、ウチが三百円!? ならお姉の横腹肉は二百円っしょ!!」


「どうして私の方が安いの!? このこの~!!」


 そのまま二人でもつれ合いながら、お互いのお腹や腕のお肉を摘まみ合い始めてしまったため、どう止めさせようかと困っていると、司教さんがスッと私の隣へ近づいてきました。


「王女殿下。もしよろしければ、別室で先ほどのお話に着いて詳しくお聞かせ願えませんでしょうか。教皇への説明や、カイナの民への説明のためにも理解を深めておきたく……」


「分かりました。では――」


 私達は仲睦まじく戯れている姉妹を置き去りにして、別室へと移動するのでした。

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