698話 魔女様は気づかされる
協力の話自体は非常にスムーズに進み、イルザさんは全面的に協力することを快く引き受けてくださいました。
その際に“本当に命の危険は無いのか”とか、“他にも手段があるのではないか”など、私の身の危険について色々と検討してくださっていましたが、どれも【運命の女神】スティア様に聞いては首を横に振られた内容であったため、これ以外に方法が無いことも伝えると。
「そうでしたか……。分かりました、これが最善と言うのであれば最善を尽くすまでですね」
と、悲しそうにしながらもバックアップは任せて欲しいと、頼もしい言葉もいただくことができました。
学園の皆さんにはイルザさんから協力要請をしていただけるとのことでしたので、ここでやるべきことを終えた私達は、手土産のジェラートを配り、学園を後にしようとしたのですが。
「そうだシルヴィ先生! 私も魔法庁に用事がありますので、ご一緒してもいいですか?」
との申し出があり、今はイルザさんも含めて四人で魔法庁のエントランスへ訪れていました。
魔法庁のエントランスは広い円形ホールのような造りになっていて、見るからに魔法使いと思われる方々があちこちから出入りしているのが分かります。
「やはり、学園を出る際にシルヴィ先生には着替えていただいていて正解でしたね~」
「そうですね。ここで教師としての服を着ていたら、少し浮いていたかもしれません」
「でもお姉ちゃん。学園長先生はいつもと同じ格好だよ?」
「私はこれでいいのです。私にとっては、これが魔法使いとしての正装でもありますからね」
そう言いながら、豊満な胸を張って得意げになるイルザさん。
ですが、イルザさんの服装はやや露出が多いため、ここでも少し目立っているような気がします。
せめて上着でも羽織ってくだされば……と考えていると、周囲の方々の視線が私にも向けられていることに気が付きました。
いえ、どちらかと言えばイルザさんよりも、私の方が注目を集めているように感じられます。
「イルザさん。気のせいならいいのですが、もしかして私、注目されていますか?」
「それはそうですよ~。だってシルヴィ先生は魔女なんですよ?」
「そうかもしれませんが、その、少し違うような気がしてまして……」
ただ好奇心で見られると言う事には、ある程度慣れていたつもりでしたが、今日はそれとは何となく違う気がしてしまうのです。
この違和感は一体……と考えながら受付を進めていると、近くにいた方のひそひそ話が聞こえてきました。
「見て、イルザ先生と一緒にいる子。お腹をあんなに出して風邪ひかないのかしら」
「お腹どころか胸もあんなに見せつけるようにして、スカートの丈だって凄く短いわ」
「あの子、自分のスタイルにそんなに自信があるのかしら」
「……っ!?」
聞こえてきてしまった内容に、思わずローブで体を覆い隠します。
「どうかしましたか? シルヴィ先生?」
「い、いえ……何でもありません」
首を傾げるイルザさんに、愛想笑いで誤魔化そうとしますが、余計に訝しげにされてしまいます。
ど、どうしましょう!? 今さらながら、少し恥ずかしくなってきてしまいました!!
言われてみれば、私のこの魔女服は体の動かしやすさを重視されていることから、今まで出会って来た魔女の方々に比べると、肌面積が少し――いえ、かなり広めです。
今まではローブを羽織っていたことやシリア様からいただいた思い入れのある服と言う事から、あまり気にする機会はありませんでしたが、こうして直接声を聞いてしまうと、どうしても意識せざるを得なくなってしまいます……!
もしかして私、肌を見せるのが好きな不埒な女性と思われていたりするのでしょうか!?
「シルヴィ先生? もしもーし?」
「お姉ちゃん、呼ばれてるよ?」
「お母様? どうかされたのですか?」
「えっ!?」
ハッと我に返ると、受付の方を始めとした皆さんが、私を心配そうな表情で見つめてきていました。
思わず自分の世界に入ってしまっていたせいで何も聞けていませんでしたが、どうやら私のことを呼んでいたようです。
「は、はい。何でしょうか……?」
「ええと、確認が取れましたので、応接室へ移動していただきたいのですが」
「あぁ! すみません、すぐに移動します!」
「あ、シルヴィ先生! そちらではなくこちらですよ!」
動揺しきってしまっていた私は、顔を隠すように帽子を深く被り、イルザさんの背に隠れるようにして移動するのでした。




