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684.5話 それぞれの決戦前夜・4 【リョウスケ編】

今日は新章開幕と言う事で、いつも通り本編を1時間後に投稿します!

お楽しみに!

 この世界には、主人公になれる運命を持った人がいる。


 それは華々しい活躍をするアスリートだったり、会社を大きく成長させるキーマンだったりするし、もっと身近な例で言えば、誰もが知っているようなビッグタイトルのゲームの生みの親だったりする。

 そんな彼らの周りには、必ず彼らをサポートする人間がいる。


 俺はそれを、“引き立て役”と勝手に呼んでいる。


 当然、聞こえは悪いとは思うし、彼らなりに努力しているのを蔑むように聞こえるかもしれない。

 だけど、俺もまた“引き立て役”の一人だったから、そうなるべくしてなったのだとしか言いようがない。


 どれだけあがこうとも、決して晴れ舞台に上がることはない。

 どれだけ努力を重ねても、最終的には自分の手柄にはならない。

 そんな虚しく、何も残らない運命をたどるしかできない人間。


 それが俺、相葉(あいば) 亮介(りょうすけ)だ。


 ブラック企業のプログラマーとして長年勤め、体を壊し、入院先で脳梗塞を発症して死んだはずの人間。

 それがどういう運命か、魔女や魔法が存在するファンタジーな世界に転生することになった俺。

 物心がついて自分に前世の記憶があることを打ち明けると、気味悪がられて家を追い出された不器用な奴だ。


 今思い返せば、そんな記憶があるのを黙っていれば平和な生活を送れていたのではないかとも思う。

 だが、あの時追い出されて魔獣に襲われ、死に掛けていた俺をラティス様が助けてくれたおかげで今があるとも言えるから、これはこれで正しい選択だったのだろう。


 ……彼女の人使いの荒さと前世の職場、どっちがマシかと言われると時々悩みそうになることもあるが。


 そんなモブ中のモブである俺は、これまたどういう訳か異世界から地球に戻って来てしまっている。

 間違いなく、俺の推しであるシルヴィちゃんとレナちゃんが魔術師との決戦を行った結果だとは思うが、そんな事実を思い出したのもたった三日前のことだ。


 あれから約四カ月。

 また社畜として働いていたことに何の疑問も感じなかったが、俺が記憶を取り戻してからというもの、この世界は俺を拒絶するようになっている。

 具体的にどういう事かと言うと。


「お弁当の車内販売はいかがですかー? 鮭弁、丸の内弁、焼き肉弁と取り揃えていますよー」


「あ、鮭弁貰えますか」


 やや小腹が空いていたのもあり、新幹線内の車内販売のお姉さんに声を掛けるも、お姉さんは俺に気づかずその場を通り過ぎていく。



 ……そう。俺と言う存在が、この世界から認知されなくなり始めているのだ。



 そしてさらに言えば、ふと視線を落とした先にある俺の両手が、薄っすらと透けているのも分かる。

 この世界にとって異物である俺という存在を、世界の(ことわり)とやらが消そうとしているのだろう。

 これも、前にレナちゃんから教えてもらった話だ。


『異なる世界で、生物は行き来することができないんだって。あたしはフローリアに連れてこられたから例外だったみたいだけど、あれから大神様が制定し直したことで、“前の世界からは存在していた痕跡すら消される”ようになってるみたいよ』


 あの話が、今になって俺に重くのしかかってくる。

 俺はあと、どれくらい存在できるのだろうか。


 先の見えない不安と焦燥感に、息が苦しくなる。

 だけど、不思議と自分が消えるということに絶望はしていなかった。


 何故なら――。


『当列車はまもなく、京都駅へ到着いたします。お降りのお客様は、お忘れ物の無いようにお気を付けください』


 車内アナウンスが聞こえ、ふと窓の外へと視線を向ける。

 三月二十三日ともなれば、京都も夜桜が見れるということで観光客が普段より多くなる。


「夜桜楽しみだねー!」


「ホントに! 清水寺から夜桜とか見れるのかなー?」


「夜は開いてんのあそこ?」


「知らなーい」


「「あっははは!」」


 どうやら、前の席に座っていた若い子達も夜桜を見に観光に来ているらしい。

 そんな会話を耳にしながら、車窓から見える京都の街並みをまっすぐに見据える。


 俺が持っている情報は、本当に少ない。

 こんなことになるなら、もっと色々と聞いておけばよかったとか思うが、俺の推しである子にそんな過去の話なんて聞いて、表情を曇らせる訳にはいかなかったから仕方がない。


 ただ、幸いなことに彼女の苗字は、この京都の街でもかなり珍しく、彼女の話から出てきたワードを組み合わせれば、ある程度は絞り込むことができていた。


 こんな“引き立て役”の俺でも、消えかけの推しの運命を未来に繋げられる。

 見ようによっては厄介オタクと思われるかもしれないが、オタクは推しのためなら何でもできるんだと諦めて欲しい。


『ご乗車、ありがとうございました。京都、京都です』


 俺はレナちゃん達みたいに戦えないし、命を張ることもできない。

 そんな俺が、何で異世界なんかに……ってずっと考えていたが、ようやく答えが出た。


「待っていてくれ、レナちゃん。必ず、君をあの世界に戻して見せるから」


 全ては、今日という日のためだったんだと。

 決意を新たにし、俺は京都の地に降り立った。

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