684話 異世界人は割り切る
本話で19章が完結です!
明日は新章開幕として、いつも通り2話投稿予定です!お楽しみに!
次に繋がる負け方。
仰っている言葉の意味は分かりますが、現実として、そんな都合のいい敗北はあり得るのでしょうか。
そう思っていたのは私だけでは無かったらしく、シリア様が代弁してくださいました。
『敗北を糧に、とでも言いたいのか? じゃが、此度の決戦は世界を揺るがす規模じゃろう。ましてや、奴らの目論見は妾達魔女を世界から消すことじゃ。敗北した後の世界で、妾達が存在できているかすらも分からぬのじゃぞ?』
「その点は心配しなくても大丈夫です。この戦いに敗れたからと言って、すぐに消される訳ではありませんから」
「っていう事は、ゆくゆくは消されちゃうのかしら?」
フローリア様からの問いかけに、スティア様は頷きます。
そして彼女はマジックウィンドウを出現させると、私達にその画面を見せてきました。
「最終的には魔女どころか、魔術師もこの世界に生きていた人も神も、全てが消されます」
「これはっ!?」
そこに映されていたのは、大規模な戦争で世界の全てが壊されてしまったかのような、無残な光景でした。
森は燃え尽き、国は滅び、空は淀んだ黒紫色に染まった生き物がいない世界。
こんな世界が、ソラリア様が望む世界なのでしょうか!?
『スティアよ。本当にこれが、この世界の運命なのか……?』
「今のところは」
「待って! 今のところはってことは、あたし達の負けとは別で変えられる運命ってことよね!?」
スティア様は、レナさんに柔らかく微笑みながら頷きました。
「その通り。だからこそ、私達で滅びの運命を変える必要があるのです」
その言葉に、レナさんは顔を俯かせながら考え込みます。
やがて彼女は、自分の考えをまとめるようにゆっくりと口を開きました。
「……何であたし達が勝てないのか分からないし、納得もできないけど。でも、スティアが言う“全てを失う負け方”をしなければ、この未来は変えられる。それなら」
レナさんは決意を込めた視線を、スティア様に向けながら続けます。
「あたし達にできるのは、最善を尽くして負けること。そのためにあたし達は、何をすればいいのか教えて」
「レナちゃん……」
レナさんの言葉に、フローリア様が少し感動したような様子を見せました。
私としても、フローリア様の気持ちが分からないでもありません。
普段から負けず嫌いで、日々試行錯誤をしながらメイナードに勝とうと頑張っているレナさん。
いずれは私の守りも崩せるように強くなりたいと、貪欲に強さを求めている彼女が、自ら負ける選択をするなど、今までなら考えられませんでした。
そんなレナさんの気持ちは、同じく負けず嫌いのシリア様の気持ちも動かしていたようでした。
『……やれやれ。妾としては、何とか勝てる策を模索したいところなんじゃがのぅ』
「あたしだって負けたくないし、最初から負けに行く戦いなんてしたくないわよ。でも」
『皆まで言わずとも、分かっておる』
シリア様は嘆息すると、私達へ言いました。
『試合に負けても勝負に勝つ、という言葉がある。此度の決戦で敗れようとも、最終的にあ奴らの目論見を砕ければ妾達の勝ちじゃ。そのために、対抗策を練ることにするかの』
「もちろんよ! ソラリアとプラーナのワガママで、あたし達どころか世界まで消させるもんですか!」
「はい。私にできることなら、何でもやるつもりです」
「うふふ! それも大事だけど、まずは負けちゃう時に死なないようにしないとね♪」
先ほどまでの空気とは一変し、希望を見出せた私達が盛り上がりを見せると、スティア様はクスクスと笑いました。
「やっといい顔になりましたね。私の話を最初から聞いていれば、もっと早くこの話ができましたのに」
「うっ、それは、すいません……」
『端的に貴様らは負ける、とだけ伝えられたようなものじゃ。無理もなかろう』
「勝手に決めつけて盛り上がっていたのは貴女達ではありませんか」
スティア様の正論に、シリア様とレナさんが着不味そうな顔を浮かべながら視線を逸らしました。
そんなお二人にまた笑いながら、スティア様は続けます。
「では、改めて対策の話を進めましょうか。先ほどレナさんも言っていましたが、私から貴女達へお願いしたいのは――あら?」
言葉を止め、廊下の方へと視線を向けたスティア様につられて、私達の視線もそちらへ向きます。
すると、食堂のドアを開けながら、お風呂上りのエミリとティファニー、監督役のメイナードが入ってきました。
「お姉ちゃん、お風呂あがったよー!」
「今日も気持ちのいいお湯でし――た?」
先にティファニーが見知らぬ顔がいることに気が付き、続けてエミリもそれに気が付きます。
二人はそのまま私達とスティア様を何度か見比べるように顔を動かすと。
「え、エミリエミリ! お話し中みたいです、お部屋に戻りましょう!」
「う、うん。お邪魔しました!」
私達を気遣ってか、パタパタと部屋へと駆けていってしまいました。
何ともタイミングが悪かったエミリ達に苦笑しながら、テーブルの上に乗ったメイナードへスティア様を紹介します。
「メイナード、こちらは【運命の女神】スティア様です。スティア様、こちらは私の使い魔のメイナードです」
「ふふ。初めまして、天空の覇者メイナード。私はスティア、貴方の運命も良く知っています」
『我如きをご存じとは恐れ入ります、スティア様』
「えぇ。貴方も重要な役割がありますから」
『役割、と申されますと?』
スティア様はその問いには答えず、改めて私達へ顔を向けます。
「では、本題へ入りましょう。貴女達にやってほしいことですが――」
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