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680話 魔女様達はダンジョンを後にする

 シリア様による報酬の見繕いが完了した私達は、久しぶりのダンジョンの外へと戻ってきました。

 既に夕日が傾いていて、これから徒歩で街まで戻るとなると深夜になりそうです。


 再び変身用のチョーカーを着け、ルミナとしての姿になっていた私は、頭上にいらっしゃるシリア様へ尋ねてみることにしました。


「シリア様。皆さんを転移で送り届けても大丈夫でしょうか」


『それは構わんが、お主の魔力に余裕はあるのか?』


 そう返され、自身の体内にある魔力残量を確認してみると、行きは問題ないにしても、帰りの分が怪しいことに気が付きました。


「帰りの分が足りないかもしれませんが、送り届けるくらいならできそうです」


『ふむ。まぁ、帰りはメイナードを呼びよせて帰るでも良かろう』


「そうですね」


「シルヴィちゃん――じゃなかった、ルミナちゃん! 何の話をしていたの?」


「わっ!?」


『むおっ』


 唐突に背後からテオドラさんに抱き着かれ、頭上のシリア様が落ちてしまいました。

 テオドラさんは不機嫌そうに半目で見上げてくるシリア様に笑いかけると、改めて私へ視線で問いかけてきます。


「もう時間も遅いので、皆さんを転移魔法で街まで送り届けようかと相談していたところです」


「えぇ!? ルミナちゃん、転移まで使えるの!? ホント何でもできちゃうのね~!」


 そのままわしゃわしゃと私の頭を撫でてくるテオドラさんと笑いあいながらも、皆さんへ確認を取ります。


「皆さんさえ良ければ、街まで転移で送り届けますがいかがでしょうか?」


「そりゃあ楽に帰れるに越したことはねぇけど、大丈夫なのか?」


「はい。この人数での転移も何回かはやっていますので、安心してください」


「そうか。なら、俺達としては断る理由が無いな」


「ルミナ、様々」


「せっかくの厚意だ、ありがたく頂戴しよう」


「それじゃあルミナちゃん、よろしくお願いね!」


「はい。お任せください」


 皆さんに微笑み、続けてリィンさんへ視線を向けます。


「リィンさんは本当にダンジョン暮らしでいいのですか?」


「リィンはもうここが家みたいなものですから。それに、人里に下りたところでやることもありませんし」


 確かにリィンさんほどの魔女ともなると、その強大過ぎる力の使い道を持て余してしまうのでしょうし、魔女と素性が知られれば恐れられ、街から追い出されてしまう可能性も十分に考えられます。

 ですが、本心は人と関わりたいという想いを持つ彼女を、いつまでもここで暮らさせるのは不憫な気もしてしまいます。


 どうにかできないかと考えていた矢先、足元で座っていたシリア様が口を開きました。


『あの魔道具を作って売ればよかろう』


「えぇ? あの魔道具は暇潰しで作っただけですけど」


『阿呆。そもそも、妾がお主に魔法を教えたのは何のためじゃと思っておる』


「それはもちろん、“魔を以て人を導く”ためです」


『うむ。今のお主は暇を持て余し過ぎたが故に、かなり道を違えておるようじゃが、別に力を振るうことだけが魔導ではない。妾達魔女が作り出した道具で人の生活を豊かにできれば、それもまた魔導に通ずるのじゃよ』


 シリア様の言葉を受けたリィンさんは、しばらく考えるような素振りを見せていましたが、やがてポンと手を打つと。


「つまりシリア様は、えっちな魔道具を作ってリィンの性癖を布教しろと仰るのですね」


『何故そうなる』


 何とも頭痛がしてきそうな曲解をしたリィンさんは、その後も一人で納得したように頷きながら続けます。


「確かに、いろんな街を見てきましたがえっちなオモチャ――じゃなかった、魔道具はどこにもありませんでした。そういうお店はありましたが、どこか刺激が足りなかったのもそういうことですね。ここはやはり、リィンがひと肌脱いで世界のえっちレベルを引き上げなければなりません!」


『……こ奴に期待した妾が阿呆じゃったな』


 非常に落胆していらっしゃるシリア様があまりにも可哀そうに見えてしまったので、私はフォローを入れることにしました。


「リィンさん。そう言った魔道具の他にも、冒険者の方々や一般の方々にも便利な魔道具を作ってくださいませんか? その、そういう魔道具は夜だけ販売するとかにして、日中は普通の魔道具だけを売るとか……」


「そういうってどういうのですか? リィンはあなたみたいに賢くないので、ちゃんと言ってくれないと分かりません」


 こ、この人、自分は凄くて賢い魔女だとあれだけ言っていたのに、こういう時だけそんな主張をするのはずるいと思います!

 言い淀む私へ、いつの間にかテオドラさんまで一緒になって、ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながら迫ってきます。


「私も知りたいな~。そういう魔道具ってどんな魔道具なの?」


「ほらシルヴィ、早く答えてください。さもなくばそういう魔道具があなたを襲いますよ?」


「分かってるではありませんか!!」


「リィンの認識とは違う可能性だってあります。さぁ、早く答えてくだああああああああんっ!!」


「きゃあああああああっ!?」


 容赦のないシリア様の雷撃が、お二人の脳天から足元まで鋭く貫きました。

 お二人はパタリと倒れ、体を痙攣させてしまっています。


「なんで……私まで……」


『お主も本質は一緒じゃ、このたわけが。ほれ、さっさとこ奴らを抱えて転移するぞ』


「わ、分かりました。シュウさん、お二人をお願いできますか?」


「あぁ」


 シュウさんは軽い動作でお二人を両肩に乗せ、私が展開し始めた魔法陣の内側へ入ってきます。

 そこへ、ユニカさんが私にぴっとりとくっ付きながら言いました。


「転移は、肌を密着させた方が安全って聞いた」


「あながち間違いではないのですが、少し近すぎませんか……?」


「失敗するよりマシ」


 これは私が諦めた方が早そうです。

 アーノルドさんとシュウさんも私に近づいてきたのを確認し、私は転移魔法を行使しました。

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