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671話 魔女様はラスボスと戦う・後編

 猫の騎士団対、死を振りまくドラゴン。

 その体格差はあまりにも大きすぎて、後ろで見守っていたアーノルドさんから不安そうな声が上がります。


「ど、ドラゴン相手に、そんな猫で立ち向かうつもりなのか!?」


 確かに彼の言う通り、何も知らない状態であれば無謀かもしれません。

 ですが、私の頼もしい騎士団は、あのソラリア様を相手にしても一歩も引けを取らなかったのです。

 そんな騎士団が、ドラゴンを相手に負けるはずがありません!


「エンチャント・ホーリー!!」


 猫の騎士団に聖なる力を付与し、万全の態勢で構えなおします。

 そこへ、耳を塞ぎたくなるような咆哮を上げたドラゴンが襲い掛かってきました。


「ニャッ!!」


 猫の体の何倍もある手で押し潰そうとしてきますが、大盾を構えた猫がそれを真っ向から受け止めます。

 その後ろから、両手剣を構えた猫が飛び上がり、お返しにと鱗に刃を叩きつけました。


 ですが、聖なる力を宿した剣であっても、ドラゴンの強靭な鱗を貫くことができませんでした。


「……はっ!! 所詮はシリア様の真似事だったんですね! 焦って損をしました! さぁデスドラゴンよ、あの生意気な新入り諸共、全てを土に返してやるのです!!」


『グオオオオオオオオオオオッ!!!』


「ルミナ!!」


「ルミナちゃん!!」


 アーノルドさん達の叫び声が聞こえてきます。

 確かに、今のままでは猫達の攻撃がドラゴンに通用しないかもしれません。


『くふふ! 全く焦りを感じておらんようじゃな?』


「はい。あのドラゴンからも、先ほどのように魂を縛り付けていた魔力と同じものを感じます」


『正解じゃ。あのドラゴンは生物ではなく、魔力によって生成された疑似生物じゃ。故に、お主の力で大幅に弱体化させることができる』


 シリア様との答え合わせを済ませた私は、早速実行に移すことにしました。


昇天(アセンション)!!」


「無駄ですよ! デスドラゴンは昇天では倒せません!」


「昇天では倒せないかもしれませんが」


「ニャニャッ!」


 私の言葉の続きを言うように、両手剣を振り下ろした猫がドラゴンの左前脚を斬り落としました。

 突然重心のバランスを失ったドラゴンが前のめりに倒れたところを、斧を構えた猫が反対の足を斬り落とし、槍を構えた猫が目を突き刺しました。


 痛みに苦悶の咆哮を上げたドラゴンと私を交互に見たリィンさんは、ドラゴンに魔力を供給し直しながらこちらへと駆けてきます。


「ならば、あなたを封じてしまえばいいだけのこと!!」


 何となくそうなるのではないかと予想は出来ていたため、彼女から飛んできた攻撃に対し、余裕をもってディヴァイン・シールドで対応することができました。

 その後もリィンさんは、私の注意を惹くように大鎌を振り回して攻撃を仕掛けてきます。


 やはり闇属性の魔法を使う方は、大鎌を使う傾向にあるのでしょうか?

 いえ、レオノーラは鎌ではなく槍だったような気がします。となると、ただ単に好みなのでしょうか。


 そんなことを考えられる余裕があるほどに優しい連撃を防ぎつつ、ドラゴンと猫達の攻防を見てみます。ドラゴンは再生した前脚と黒い炎による攻撃で猫達へ猛攻を仕掛けてはいましたが、猫達は完璧な連携でその全てを防ぎ、必ず一撃を返すと言った行動を取っていました。


 あちらの攻撃は、私が指示しなくても問題が無いかもしれません。

 せっかくですし、シリア様から教えていただいた多重詠唱の練習をしてみましょう。


 頭の中でもう一人の私を思い描き、その自分に魔法を使わせる。これを可能な限り最速で行う事で、多重詠唱までの隙を減らせるとのことだったはずです。

 今必要なのは、ドラゴンへの弱体とリィンさんの攻撃を防ぐための盾だけです。

 盾も浄化から転じた昇天魔法も、両方とも日常的に使っていたため得意な魔法ですし、ノンタイムで同時に使ってみるには最適でしょう。


 早速、私は多重詠唱を試してみることにしました。


「――昇天(アセンション)!!」


「なっ!?」


 出来ました! 見ててくださいましたか、シリア様!

 内心で成功に歓喜していると、振り下ろした大鎌を防ぎながらドラゴンの弱体を成功させた私へ、シリア様からの評価が寄せられます。


『ほぅ! もう物にしたか! 流石はシルヴィじゃのぅ!』


「シリア様! 多重詠唱くらいリィンだってできますよ!!」


『何じゃ。貴様より遥かに経験の浅い魔女に後れを取っておるのが悔しいのか?』


「悔しくは無いです! でもリィンだってデスドラゴンを自在に扱えるようになってるんですから、褒めてくれてもいいじゃないですか!!」


『くふふ! シルヴィに勝てたら褒めてやってもよいぞ?』


 そのシリア様の言葉を受け、リィンさんの瞳が輝いた気がしました。


「絶対ですよ!? 絶対ですよシリア様!? またシリア様の膝の上でなでなでしてくださいね!?」


『うむ、良かろう』


「やったー!! と言う事でシルヴィさん、あなたには何が何でも負けてもらいます!!」


 焦りの表情から嬉々としたそれへ一変させた彼女は、これまでは手加減をしていたと言うかのように、鎌の威力と速度を上げてきました。

 これは流石に、多重詠唱の練習などしていられないかもしれません。そう感じてしまいましたが、視界の端で私の猫達がドラゴンの首を斬り落としたのが見えました。


 そのままこちらへ加勢してくれる猫達を見て、ようやくドラゴンが倒されてしまったと気が付いたリィンさんは、距離を取って再び骸骨の戦士達を呼び出そうとします。


「させません!!」


「うっ!?」


 即座に魔法を切り替え、拘束魔法でリィンさんを捕えます。

 直後に凄まじい抵抗がフィードバックされますが、そうはさせないと猫達がリィンさんへと飛び掛かりました。


「きゃあああああああ!! な、何ですか猫!? 重っ、どいてください!!」


「ニャニャー!!」


「ありがとうございます! ――これで、終わりです!!」


 のしかかった猫達のおかげで一気に抵抗力が弱まり、無事に拘束を完成することができました。

 魔力による身体強化も切れてしまったリィンさんは、土で出来ている猫達の重さで苦しそうに呻いています。


「お、重いです……骨が、骨がミキミキ言ってます……」


『くふふ! 勝負ありじゃな!』


 そう笑ったシリア様に続き、“ドリームチェイサー”の皆さんが私に駆け寄ってくるのでした。

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