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28話 魔女様は認められる

 拮抗する双方の力に魔法が耐えきれず、竜巻が放つ稲妻の音とは異なる火花のような音が、私の結界を中心に鳴り始めました。それと同時に、衝突している面が少しずつ、何かに吸い込まれるように凝縮されていきます。


「こ、これは……!?」


「まずいぞアーデルハイト、魔力爆発だ!!」


 ヘルガさんの警告が聞こえた瞬間、私の結界とアーデルハイトさん達の渦の間で激烈な爆発が発生し、それに伴って激突の衝撃波なんて比べ物にならないくらいの爆風が私達を襲いました。


「「きゃああああああああああ!?」」


「ぬおおおおおおおおお!?」


 とても耐えられるような爆風ではなく、私達の体はいとも簡単に吹き飛ばされ、レナさんを背中にしてエリア外の壁に叩きつけられてしまいました。


「げっほ、えほ……。シルヴィ、大丈夫?」


「いたた……。はい、何とか……」


 体は大丈夫でしたが、私達がいる場所は完全に場外でした。顔を上げると、戦闘エリアを囲む光の柱も消えてしまっています。


 つまり、私達の場外落下による負けが決まってしまったということです。


「……あーあ、あたし達負けちゃったかぁ!」


「……ですね、負けてしまいました」


「でも、シルヴィ」


「はい、レナさん」


 そう言いながら私達は顔を見合わせ、どちらからともなく笑い始めました。

 負けてしまった。その事実は確定的ですが、なぜか楽しくて笑いがこみ上げてきてしまいます。


「あっはははは! なんで負けたのに笑ってんだろあたし達!」


「ふふふっ。何故でしょう?」


「なんだなんだ、楽しそうじゃねぇかよ。何の話をしてたんだ?」


 そう言いながら自分も笑顔を浮かべているヘルガさんは、「ほら、立てるか?」と言いながら私達に両手を差し出してきました。私達は片方ずつ取り合い、起こしていただきながら戦闘エリアの上に立ちます。


「なんか、負けたはずなのにスッキリしたっていうか、あー負けたー! って感じっていうか。ね?」


「はい。悔しさはもちろんあるのですが、それ以上に楽しかったという気持ちが強くて」


「そうかそうか。楽しく勝負できたって思えたなら、俺達も体張ったかいがあったってもんさ。なぁ総長?」


「……そうだな」


 アーデルハイトさんは腕組みをしながら顔を少し背けていますが、どこか楽し気な表情に見えます。


「でも負けたのはやっぱり悔しいわ!」


「負けて悔しくない奴なんてそうそういねぇって。それに、お前らも悔しいかもしれねぇけど、俺達だって悔しいんだぜ?」


「なんでよ。勝ったのに何か悔しいことでもあるの?」


 レナさんの疑問に、少し肩を落としながらヘルガさんが答えます。


「ここだけの話だけどな? 俺達のアレを正面から受け止めて無傷だったのは、お前らが初めてなんだよ。そもそもあまり使わない技だが、確実に仕留めるって言うときに使う大技だったんだよアレ」


「そう、なのですか?」


「そうだ。まぁ相反する力が暴走して魔力爆発で決着っつー形になったが、アレを止められた時点で俺達も負けたようなもんなんだよ。だから悔しいって訳さ」


「だよな」とアーデルハイトさんに笑いかけるヘルガさんでしたが、アーデルハイトさんは何も言わずに鼻を鳴らすだけでした。


「んまぁ、そんな訳で。今年の模擬戦は俺達の勝ちだが実質引き分けだ。来年もある訳だし、お前らが来年までにどれくらい成長するのか今から楽しみだぜ」


「え、来年も総長さん達出るの!?」


「どうだろうなー? 楽しみが出来ちまったし、また誰かふらっと抜けちまうかもな! だははは!」


「おい、まさかお前……マレリアに吹き込んだな?」


「何のことだかー。んじゃ、俺は一足先に帰ってるぜ!」


「待てヘルガ! ……ったく、本当に面倒ごとしか持ってこない奴だ」


 アーデルハイトさんの制止の声も聞かずに、ヘルガさんは手を振りながら転移していってしまいました。頭を抱えながらその後を追おうとしたアーデルハイトさんでしたが、ふと足を止めて思い出したように私達の名前を呼びました。


「……あぁ。【慈愛の魔女】シルヴィ、【桜花の魔女】レナ」


「はい」


「なに?」


 彼は肩越しに私達を見ると、優しく微笑みました。


「お前達を、実力共に正式にシリア先生が認めた魔女であると私も認めよう。そして、私が認めるということは周りの魔女も文句なしに認めるということだ。……お前達のこれからに期待しているぞ」


 一瞬、彼の言っている内容が理解できませんでしたが、私達を認めてくださったということを理解すると、嬉しさで笑みを浮かべることを堪えることが出来ませんでした。それはレナさんも同じだったようで、私に飛びつきながらぐるぐると回り始めます。


「やった! やったわシルヴィ! 今の聞いた!? 聞いたよね!? 総長さんがあたし達を認めてくれたわ!!」


「はい! 私達、シリア様に恥をかかせない戦いができたのですね!」


「やったぁー!! あっははははは!!」


 シリア様、フローリア様。見ていらっしゃいますか?

 私達、やり遂げました。負けてしまいましたが、皆さんに実力を認めて頂くことが出来ました!

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