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655話 魔女様達は決着をつける・前編

「……よし。それじゃあルミナ、頼んだぞ」


「ルミナちゃん、信じてるからね?」


「はい。皆さんもどうか、無理だけはしないでください」


「ルミナこそ」


「俺達のことは気にするな。死なない程度には立ち回ってみせよう」


 私からの立案を承諾してくださった皆さんへ頷き返し、改めてスカルプリーストへと向き直ります。

 こうして作戦会議の時間を貰えるのはありがたい限りですが、それは私達への心遣いなどではなく、自身の強さから来る絶対的な自信の表れなのでしょう。


 ですが、この作戦が上手くいけばそんな余裕も無くなるはずです。


「行くぞみんな。失敗は許されない一発勝負だ」


「あぁ」


「いつでも行けるわ」


「同じく」


 各々が武器を構え直し、戦闘態勢に入ったことを確認したスカルプリーストは、どこからでもかかって来いと言わんばかりに両手を広げて見せました。

 私は皆さんに支援魔法を掛け直し、大きく息を吸い込んでから合図を出しました。


「それでは皆さん……お願いします!!」


「「おう!!」」「えぇ!!」「ん!」


 私の合図と同時に、まずは前衛組であるアーノルドさんとシュウさんが駆け出します。


「行くぞシュウ!!」


「あぁ!!」


「インテンス・エッジ!!」


迅雷穿(じんらいせん)龍掌(りゅうしょう)!!」


 剣先で床を削るように振り上げられた大剣から業火が放たれ、鋭く打ち出された右の手のひらからは雷にも似た衝撃波が放たれました。

 しかし、それは巨大化したスカルナイトの剣によって防がれてしまいます。


「まだまだ!! レディアント・ブレード!!」


命狩(めいしゅせ)旋風脚(んぷうきゃく)!!」


 アーノルドさんは続けざまに、赤いオーラを纏わせた大剣を横薙ぎに振り抜きました。それを躱すように飛び上がったシュウさんは、同じく赤いオーラを右足に纏わせて回し蹴りを繰り出します。


 こちらもスカルナイトの剣の腹で受け止められますが、アーノルドさんとシュウさんは構わずに次々と技を繰り出し続けていきます。


 そこへ、魔力を練り上げていたテオドラさんと、銃への魔力充填が終わったユニカさんの追撃が続きます。


「ロック・ビート!!」


「ブレイクショット!」


 テオドラさんが魔法で作りあげた岩塊が着弾する寸前で、その全てをユニカさんの弾丸が撃ち抜きました。すると、岩塊は数倍に膨れ上がり、小規模の爆発を引き起こしながら弾け飛びました。


 流石のスカルナイトでも、前衛のアーノルドさん達の攻撃を防ぎながら細々と爆発を続ける岩塊を防ぐことは難しかったらしく、スカルプリーストの視界を塞ぐように襲いかかっています。


『ほぅ! 面白い使い方をしておるのぅ!!』


「あれは爆発系の魔法でしょうか?」


 スカルプリーストの死角を移動しながら“万象を捕らえる(アーレスト・ジ)戒めの槍(・オール)”発動のための印を刻む私の肩の上で、シリア様が感心する声を上げました。


『いや、撃ち込んでおるのは凝縮された火属性の魔力弾じゃ』


「では何故、爆発を引き起こせているのですか?」


『万物には必ず急所があるのじゃよ。急所を鋭く突けば動物なら死に至り、物体なら崩壊を引き起こせる。して、あれは崩壊で生じるエネルギーに火属性の魔力を当てることで、擬似的な爆破魔法に転じておるのじゃ』


『狙ってやれる芸当では無いがの』と補足するシリア様の説明を受け、ユニカさんが常人離れした戦い方をしているという事に驚きを隠せませんでした。


 形も不揃いかつ、かなりの速度で撃ち出された岩塊の急所を的確に撃ち抜く。それだけでも離れ業だと思いますが、それを着弾の寸前というタイミングで実行できる彼女の集中力は、とても真似できるものではありません。


 ユニカさんの集中が切れてしまう前に、私の方も仕込みを終わらせてしまわなければいけません。そう判断し、次の印を刻むために駆け出します。

 ですが、その直後に聞こえてきた苦悶の声に、思わず足を止めてしまいました。


「シュウ!!」


「この程度……気にならん……!!」


「んな訳あるか!! うおっ!?」


 紙一重でスカルナイトの剣を躱したアーノルドさんの反対側では、二の腕を深く切り裂かれてしまっているシュウさんがいました。

 そんな彼へ、スカルナイトはここぞとばかりに連続で狙い始めます。


「シュウさん!! 今そちらへ――」


「来るなッ!!!」


「っ!?」


 有無を言わせないその迫力に、私の体が動きを止めます。

 彼は右腕をだらんとさせながらも、スカルナイトの攻撃を掻い潜りつつ私へ吠えました。


「言っただろう! 俺達に何があっても、お前はお前のやるべき事をやれと!! それに、この程度の負傷で戦えなくなる俺では無い!!」


 そうは言うものの、彼の身のこなしは目に見えて悪くなってしまっていて、最早反撃に転じる余裕は無いほどです。

 しかし、そんな彼をカバーするようにアーノルドさんがスカルナイトの剣を弾き返し、言葉を続けました。


「俺達が心配なら、早く準備を終わらせてくれ!! 中断するよりも、そっちの方がこの戦いを早く終わらせられるだろ!?」


 シュウさんを護るように立ち回り始めるアーノルドさんの言葉を受け、テオドラさんとユニカさんも私へ頷いて見せました。


「シュウなら大丈夫だよ! うちの中で一番頑丈だから!!」


「ルミナは準備を進めて」


 そこへ、シリア様も同意を示します。


『今、お主がやるべき事は“万象を捕らえる(アーレスト・ジ)戒めの槍(・オール)”の発動準備じゃ。判断を違えるな』


「……分かりました」


 脂汗を垂らし、苦しそうな表情を浮かべるシュウさんから視線を外し、私は次の印を刻むために再び走り出しました。

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