24話 魔女様は最終戦に挑む
会場に戻ってきたシルヴィ達を迎えたのは、温かい声援でした。
応援してくれる観客の期待を背負い、遂に最終戦へと臨みます……!
「皆さま、お待たせいたしました! 【森組】が復帰したため、これより決勝トーナメント最終戦を始めさせていただきます!!」
「大丈夫かシルヴィちゃーん!!」
「誰も責めないから棄権してもいいんだぞー!!」
歓声に混じって、私の身を案じてくださる声が聞こえます。司会の方からも心配されましたが、どうやら私が多重詠唱を行った上で倒れたため、トーナメントどころの騒ぎでは無くなってしまっていたようでした。
私は拡声器をお借りして、観客席の皆さんに安心してもらえるように挨拶をすることにしました。
「皆さん、私を案じてくださりありがとうございます。並びに、軽率に多重詠唱を行ってしまい、ご心配をおかけしてすみませんでした。私はご覧の通り元気ですので、最終戦に勝って優勝を目指したいと思います。ですので、どうか私とレナさんを応援していただけると嬉しいです」
お辞儀をして顔を上げると、それまで静まり返っていた観客席から爆発的な大歓声が沸き上がりました。
「頑張れよー!!」
「シルヴィちゃん達なら勝てるわー!!」
「「シールーヴィ! シールーヴィ!」」
こ、これは思った以上に恥ずかしいです。もうやらないことにしましょう……。
拡声器を司会の方へ返そうとすると、「あたしにも言わせて」とレナさんが横から持って行ってしまいました。
「あたし達はただの新米魔女じゃないってことを、あんた達に見せてあげるわ! だから最後の最後まで、応援よろしくね!」
「レナー!! 応援してるぞぉー!!」
「ただちっさいだけじゃねぇって見せてくれー!!」
「きゃあ~! レナちゃんカッコイイ~!!」
「誰よ今ちっさいって言った奴ー!!」
「れ、レナさん落ち着いて……!」
手にしていた拡声器を投げつけようとするレナさんから取り上げ、司会の方へ謝りながら返すと、司会の方が咳払いをひとつしてから話始めました。
「会場の熱狂も高まってきたところで、【森組】の対戦者を発表いたしましょう! 最終戦を飾るお二人のお相手は…………【神出鬼没の双翼】のお二人です!!」
「げっ、あんなふざけた格好だったのに勝ったんだ……」
レナさんが心底嫌そうな声を出しました。私としてもあまり喜べない結果とはなりましたが、見るからに強そうな【土塊の魔導士】さんが倒されてしまったということは、やはり決勝トーナメントに選抜されるほどの実力者ではあったのでしょう。
一体どのような戦い方をする方々なのでしょうか……。
「はーっはっはっは! 我らがどのような戦い方をするのかが分からない、とでも言いたげな顔をしているな! 【慈愛の魔女】よ!」
考えていたことが読まれ、動揺して背筋が伸びてしまいます。
声のした方へ振り返ると、仮面を押さえながら肘を組むという、また謎のポーズと取っているディルさんがいました。
「な、何故分かったのですか?」
「ふっふっふ。何故分かるのかだと? 愚問、あまりにも愚問だ!!」
シュバッと音がしそうなほど大きな動きでポーズを変え、今度は空を仰ぎながら仮面を押さえています。そんなに押さえる必要があるのなら、外した方がいいのでは……。
「だが、聞かれてしまったからには答えてあげるのが、紳士というものさ! 良く聞くと言い、それは――」
「あ、もういいわ。行くわよシルヴィ」
「わわっ、ちょっとレナさんー!」
説明が始まりそうなところでしたが、飽きてしまったレナさんが私の手を取って転移門へと向かってしまったため、一緒に移動します。
「――ということなのさ! あれ、【慈愛の魔女】はどこへ?」
「お前がノリノリで楽しんでいる間に、先に転移していったぞ」
「なんで呼び止めないんだよ!? そういうとこだぜ!?」
「知らん。私達も行くぞ」
「はーっ、相変わらず堅物なんだからよぉお前は……」




