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501話 魔女様は誤解する

 窓を小さく叩く雨音で、私は目を覚ましました。

 ぼんやりする頭で今は何時頃かと考えながら時計を探すも、どうも私の部屋と家具の配置が異なっているように見えます。


「……っくしゅん!」


 今日は少し、肌寒いのかもしれません。

 やや冷えているように感じられる体を温めるべく腕を擦ると、何故か素肌の感覚が手に伝わってきました。

 ちらりと自分の体を見下ろすと――。


「え?」


 見たことも無い下着を付けているその姿に、声を失ってしまいました。

 胸元だけを覆う真っ白なランジェリーはところどころに青いフリルの装飾が施されているのですが、何故か私の谷間部分を強調するかのように、猫の顔に見えなくもない大き目の穴があけられています。

 少し嫌な予感がしたので、掛布団を捲って下を確認してみましたが、どうやらショーツの方は特におかしな点はないようで、やや可愛らしい白地の物のようです。


 いつの間にこんな下着を……と、首にも付けられていた鈴付きチョーカーを触りながら現状把握に努めようとしましたが、私のすぐ隣ですやすやと健やかな寝息を立てている下着姿だけのフローリア様を見つけてしまいました。


 まさか。いえ、流石にそんなことは無いでしょう。

 無い……ですよね?


 段々と怖くなり、血の気が引いてしまいそうな感覚に襲われながらも、必死に昨日までの記憶を掘り起こします。

 覚えている限りでは、昨日はシリア様から洗脳魔法への対処として、日々の生活の中で鍛練を行っていくという取り決めが行われたはずです。

 レナさんやエミリ達がシリア様からいただいた魔石を用いて、私に洗脳を試みようとして来たのも覚えていますし、フローリア様からも夕飯を作っていた時に狙われた気が……。


 そこで私は気づいてしまいました。

 そう言えばあの時、レナさんとじゃれあいながらも彼女は私に洗脳を仕掛けてきていました!

 と言うことは、やはりそう言うことなのでしょうか!?


「ふ、フローリア様! フローリア様!! 起きてください!!」


「ふぇやあぁぁぁ……」


 寝起きからまともに思考が働いてい無さそうな声を上げながらも、フローリア様はまだ眠ろうと私に背を向けました。

 そんな彼女を揺さぶり続けていると、凄く迷惑そうな顔をしながらも薄っすらと目を開けてくださいましたが、それと同時に掛布団がずれ、仰向けになった彼女の体を覆う物が無くなってしまい、私は慌てて掛布団を掛けなおします。


「なぁに~レナちゃん……」


「シルヴィです! 起きてくださいフローリア様!!」


「んえぇ~……?」


 少しずつではあるものの、フローリア様の瞼が持ち上がっていきます。

 そして私を見つけるや否や、隣にいるのがレナさんではないことにきょとんとした顔を浮かべ。


「あら? 何でシルヴィちゃんがいてレナちゃんがいないの?」


「私が聞きたいのですが!?」


「う~ん……朝はレナニウムが無いとダメなのよぉ……。レナちゃ~ん……」


 訳の分からないことを口走りながら部屋から出ていこうとするものですから、またしても下着姿の彼女が視界に入り込もうとしてしまい、私はさらに焦らされてしまいました。


「ま、まずは服を着てください!」


「ん~……? あら?」


 どうやら私に指摘されるまで、ご自身がほぼ服を着ていないということに気が付いていなかったらしく、パチンと指を鳴らしていつもの神衣へと着替えると。


「シルヴィちゃんのえっち!」


「私は何も悪くないと思うのですが……」


 何故か責任転嫁をしてきました。

 寝起きでも無茶苦茶であることはこれまでもよく分かっていたつもりですが、今日は一段と酷いような気がしてしまう中、そろそろ頭も回ってきているのではないかと思い、彼女に問いかけてみることにしました。


「あの、フローリア様。昨夜、私に洗脳を掛けてから何をしていらっしゃいましたか?」


「何って?」


「ええと、その……。え、えっちなこと、とか……」


 具体的な内容を口にするのは憚られてしまい、やや口ごもりながら誤魔化して問う私に、フローリア様は小首を傾げます。


「シルヴィちゃんにえっちなことはしないわよ?」


「え? で、ですが朝起きたら私、フローリア様と一緒になって寝ていて、しかもこんな格好で」


「うーん? あぁ~!!」


 フローリア様はようやく何かを思い出してくださったらしく、軽く握った右手を左の手の平にぽんと打ちました。


「あれはね、シルヴィちゃんが考えてたようなことじゃないわよ! ほら、これ見て?」


 彼女はそう言いながらウィズナビを取り出して操作すると、私にその画面を見せてきました。

 そこに映っていたのは、猫の耳を付けた可愛らしい給仕服に身を包み、まるで猫のように手招きをしている私でした。


「なっ!? こ、これ!?」


「可愛いでしょ~!? ほら、これとかも見て見て!?」


 彼女がサラサラと指を滑らせると、次から次へと異なる衣装とポーズを取っている私が映し出されていきます。

 それはお姫様のようなふんわりとしたドレス姿であったり、去年の夏に着ていた水着であったり、中にはフローリア様が愛用していらっしゃる神衣を着ているものまでありました。


「もう滅多にないチャンスだと思って、シルヴィちゃんを着せ替えてずーっと遊んでたの! 反応が無いから面白くなかったんだけど、これはこれで可愛かったから大満足ね!」


「で、では、私達のこの格好の理由は」


「私が寝る時はだいたい裸なのはシルヴィちゃんも知ってるでしょ?」


「いえ、今初めて聞きました」


 もしかして、レナさんが後々起こしに来る私のために、辛うじて何かを着せてくださっていたのでしょうか。

 そうであるならば、何故かシャツ一枚だけであったり、サイズが合っていない異世界の服だけで眠っていたのも納得ができます。


「あら、そうなの? 寝る時は裸が健康にいいってレナちゃんの世界の本で読んだから実践しようかなとか思ってたんだけど、まぁそっちはいいわね! でね、シルヴィちゃんで遊んでたらだんだん眠くなってきちゃって、次に何を着せてあげようかな~って考えている内に、いつの間にか寝ちゃってたみたいなのよね~」


「それで、私の体が少し冷えていた訳ですね……」


 ようやく昨夜から何が起きていたのか理解ができ、フローリア様のおもちゃにされていただけであったと胸をなでおろすことができました。

 しかし、私が変な勘繰りを行っていたせいで、彼女のイタズラ心をくすぐってしまうことになっていたようで。


「あらあら~? もしかしてシルヴィちゃん、そういうえっちなことを期待しちゃってたのかしら!? 洗脳されてなーんにも覚えてないのに、あーんなことやこーんなことまでされちゃって、きゃあ~! みたいな!」


「そ、そんなことは考えていません!!」


「え~? そんなことってどういう事かしら? お姉さんに教えてくれないかな~……えいっ☆」


「ひゃあ!? 放してください!」


「ほらほら~、正直に言った方が楽になるわよ~? みんなには黙っていてあげるから、どんなことを考えちゃってたのか言ってみない?」


「嫌です! シリア様ぁー!!」


「あっ! 待ってシルヴィちゃーん!!」


 雨天という悪天候から来るものとは別に、私はぐったりとした一日を始めることになるのでした。

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