407話 義妹達は陽動する 【エミリ視点】
レナちゃん達と別れてから、わたし達はとにかく派手に動いて陽動? っていうのを頑張っていた。
『エミリ。右から四人来るぞ』
『分かった!』
メイナードくんはこっちに向かってきてる人が見えているみたいで、こうやってわたしに教えてくれている。だからこそ、急に攻撃されてびっくりしないで済んでいる。
『えいっ!!』
「ぎゃ!?」
「うわあああ!!」
「流石エミリ! さぁ、どんどん参りましょう!」
『いや、まだだ。屋上から狙ってきている雑魚がいるな。右に飛べ』
ちらっと顔を上げると、確かに人影みたいなものが見えた気がした。
言われた通りに右に大きくジャンプすると、わたしがいた場所をめがけて氷の塊が何個も飛んできた!
『わっ! 危なかったぁ!』
『当たったところで大したことはないだろうがな』
「ですが、不意打ちは最低です! ティファニーがお返しして差し上げます!!」
そう言うとティファニーは、わたしの上で魔法の詠唱を始めた。
「花よ謳え、生命の輝きを。光よ集え、宵闇を切り裂く閃光となれ――降り注げっ! ライトニング・ミーティア!!」
ティファニーの周りに細い光の柱がたくさんできたかと思った次の瞬間、それは花びらを舞い散らせながら空高く飛び上がり、流れ星のようにキラキラと輝きながら屋上に向かっていく。
それから間もなく、さっき人影が見えた場所らへんから光の柱が立ちのぼり、建物の端っこが爆発する音と一緒に、微かに悲鳴みたいなのが聞こえてきた。
「悪い人はお仕置きです!」
『魔術師は魔法耐性の刻印を持っているとはいえ、あの威力ならしばらくは動けんだろう』
『いいなぁティファニー。わたしも、あんな風にキラキラどかーん! ってやりたいなぁ』
「エミリはレナ様のような、体を使った魔法の方が向いてますよ! ティファニーも腕の一振りで木人を壊してみたいです!」
『でもわたし、学校でもあんまり上手に魔法使えなかったし……』
『魔法には属性の適正もあるが、出力型と強化型にも分かれると聞く。我らのような魔獣は、出力より強化の方が向いているのだろう。気にするな』
メイナードくんはそう言って慰めてくれるけど、わたしはやっぱりお姉ちゃんやシリアちゃんみたいに魔法をカッコ良く使いたかったな。
少しだけしょんぼりとした気分になっていると、ティファニーがわたしの頭を抱えるようにふわりと抱き着いてきた。
「お母様やシリア様が凄い魔女なので、憧れてしまうのは分かります。でも、エミリの魔法だってクラスの皆様から褒めていただけているではありませんか」
『それはそうだけど……』
「この前だって、お母様がたくさんプリントを持ってふらふらしていた時、エミリが支えていましたよね。あれは力が強いエミリだからできたのですよ? ティファニーでは、一緒に倒れてしまいますもの」
ティファニーの言葉で、先週くらいにお姉ちゃんを助けたのを思い出した。
確か、授業で使うプリントが多すぎて運ぶのが大変なんだけど、時間がないからやるしかないってことでふらふらしながら廊下を歩いてたのを見つけて、わたしが持ってあげたんだよね。
あの時に「エミリがいなかったら授業に遅れてしまうところでした。頼りになる妹ですね」って褒めてもらえたのも思い出して、勝手にほっぺが緩んじゃう。
わたしはちょっとしょんぼりしていた気持ちを切り替えるために、ぶるぶると顔を振った。
ティファニーやメイナードくんの言う通り、わたしはお姉ちゃん達みたいに魔法が使えなくても、体を強くする方で頑張ればいいんだ!
『よーし、強くなったわたしを見てもらうためにも、絶対お姉ちゃんを助けなきゃ!!』
「その意気です! さぁ、どんどん進みましょう!」
『……ふっ』
待っててねお姉ちゃん。絶対悪い人達から助けてあげるから!
気合いを入れなおしたわたしは、メイナードくんの指示に従って学校をぐるぐると走りながら暴れ続けることにした。




