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405話 異世界人は大暴れ 【レナ視点】

 ハールマナ魔法学園に強硬突入してから十分ほどが経った頃。

 あたし達は、既に何十人と数えきれないくらいの魔術師を相手に大暴れしながら、エルフォニアの言っていた“結界維持の術式”を探し続けていた。


「エミリ! そっち来てる!!」


『任せて! えいっ!!』


「ぐああああああ!?」


 エミリの可愛らしい掛け声とともに、全然可愛くない威力の爪撃が魔術師の集団に襲い掛かっていった。

 学園も無傷ではなく、派手に暴れることでところどころ壊れたりしちゃってるけど、フローリア曰く「後でシリアと直すから気にしないでいい」とのことだから、体も一撃も大きいエミリでも心置きなく全力で戦わせてもらえている。


「エミリエミリ! あちらにも敵様の影が見えます!」


『分かった! えーいっ!!』


 そんなエミリの上で、ティファニーは楽しそうに指示を飛ばしながらキラッキラの笑顔を咲かせている。

 あの子、実はかなりの戦闘狂なんじゃないのってくらい、敵を見つけては的確にエミリへ攻撃指示を飛ばしていて、まさしくサーチアンドデストロイって表現が相応しいほどだった。


 そのエミリ達にメイナードも付いてくれているし、少なくともあたしが気にするまでも無さそうかなとか考えていると、廊下の奥から一瞬だけきらりと何かが赤く光った気がした。

 咄嗟に身を屈めて回避行動に移ると、あたしの顔のあった場所を、火の玉がいくつも貫いていった。


「クソッ、完全に死角からだったはずだぞ!!」


「次弾構え――早っ!?」


 加速を使って一気に距離を詰め、身体強化だけの蹴りで全員を吹き飛ばしながら、あたしはお土産のように教えてあげる。


「悪いわね。いつもはこれの何倍も速くて、威力の高いのを相手にしてるのよ」


「ひゅうひゅう! レナちゃんかっこいい~!!」


「馬鹿言ってないで、早く術式って言うのを探すわよ。何か感じたら教えてよね」


「は~い……あ、ちょうど見つけた! そこの窓から出た木の裏にあるわ!」


 フローリアの言葉に頷き、一度やってみたかったダイナミック窓割りをしながら外に飛び出る。

 いざやってみると意外と自分には刺さらない物なのねとか感動しつつ、言われた場所を探すと。


「これが術式?」


 木の裏に隠されていたのは、やや赤黒い球体を中心として魔法陣が展開されている物体だった。

 何だろう。見た目的には土星とかUFOとか、そんな感じのイメージに近いわね。


「そうそう! これを結界割りの要領で、思いっきり叩き割っちゃえば壊せるわ!」


「ふーん。それじゃ、一個目行きますか!」


 右手だけに反転した魔力を集中させて、思いっきりぶん殴る。

 すると、メキメキッと嫌な音を立てながら球体にヒビが入り、一際光を強めながら術式とやらが爆散した。


「これでいいの?」


「おっけーよ! ほら見て?」


 フローリアが指で示していた先には、この学園を覆うように張られていた結界の色が、やや淡く揺らぎ始めていた。


「これをあと何個か壊せば、エルフォニアの方も準備ができるって訳ね。なら、ちゃちゃっと回って合流させましょ」


「そうね! あ、次は二階かな? 似たような感じのがあるわね」


「二階ね、了解!」


 地面を思いっきり蹴り、二階の窓ガラスを蹴り割りながら侵入する。

 ……窓ガラスを割るのって、ちょっとだけ気持ちがいいわね。不良漫画とかでバットを振り回して割る行為が理解できなかったけど、ちょっとだけ分かっちゃいそうになるかも。


「もうレナちゃん! あとで直すとは言ったけど、そんな一々壊しながら進まなくたっていいじゃなーい!」


「時間短縮よ! 大目に見て!」


「しょうがないなぁ!」


 とか言いつつ、フローリアも雷の槍で同じように割りながら入ってくるから、実は楽しんでるんじゃないかって思う。

 そのまま二人で駆け出し、迎撃に来た魔術師を蹴散らしながら術式をいくつか壊して回っていると、ウィズナビに着信が入った。画面を見ると、エルフォニアって表示されている。


「何ー!? 今忙しいんだけど!!」


『結界がかなり緩んできているのが確認できたわ。あと一個壊せれば、こっちも動き出せそうよ』


「そう! なら良かった! じゃあ流れでもう一個壊しちゃうから、さっさと来てよ――ねっ!!」


『えぇ、また後で』


「……もう、通話中くらい邪魔しないでくれる!?」


「がふっ!!」


 近くにいた魔術師を殴り飛ばしながら、ウィズナビをポケットにしまいなおす。

 ホント、エルフォニアは手短に用件だけ伝えてくれるからこういう時は楽でいいわね。シルヴィも用件だけ伝えるタイプだけど、あの子は丁寧過ぎるっていうか気遣い過ぎて、そこそこ長くなっちゃうのが欠点ね。


「レナちゃん、行き止まりの部屋にあるっぽいわ!」


「了解!」


 ご丁寧に、その部屋への行く手を阻むように魔術師が配置されている。

 こんなの、そこが正解ですって言ってるようなものじゃないとか内心でちょっと笑いながら突き進み、部屋の中へ足を踏み入れると。


「……え?」


「あら?」


 建物の一室であるはずなのに、だだっ広い広間のような場所にあたし達はいた。

 やや赤みの強いライトで照らされている部屋の中には、アニメや漫画で見るような拷問器具がいくつか並べられていて、悪趣味極まりないって思ったのが率直の感想だった。

 後ろを振り返ると、あたし達が入ってきたはずのドアの姿は無く、完全にどこかに飛ばされてしまったのだと言うのだけが分かる。


 うっかり罠でも踏んだ? と警戒しつつ、敵の出現を身構えていると。


「やぁやぁ、久しぶりだねレナちゃん。会いたかったよ……僕のこと、覚えているかな?」


「……忘れたくても忘れられないわよ。あたしこそ、あんたに会いたかったわ。ロジャー」


 あたしに何度も叩きつけて来た長い棍を持った、カジュアルな白シャツとロングパンツ姿の男――魔術結社の五指の一人、【罠士】のロジャーが現れた。

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