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404話 異世界人はお披露目する 【レナ視点】

「二つ目は、この結界を維持している術式を壊してほしいのよ」


 エルフォニアは結界を見上げながら言葉を続けた。


「この結界には魔法への強い抵抗力を付与されているから、私では術式を壊すことができないわ。でも、レナの魔法でならそれも可能でしょうね」


「あたしの魔法って、何であんたが知ってんのよ」


 少なくとも、あたしはフローリアとシリア以外にあの魔力反転魔法について喋ったことは無い。

 また勝手に覗いてたのかしらとか思っていると、エルフォニアはすっと顔をフローリアへと向けた。


「……えへ☆」


「えへじゃないわよ馬鹿フローリア!! なんで人の奥の手をそうやって話しちゃうわけ!?」


「やぁん! だってだって! レナちゃんの成長が嬉しかったんだもん!」


「だからって、あたしに許可なく言いふらすんじゃないわよ! 他の人には言ってないでしょうねぇ!?」


「あぅあぅあぅあぅ~」


 フローリアの両肩を掴んでぐわんぐわん揺らしながら問い詰めるも、フローリア自身言うつもりがないらしく、変な声を出しながら笑っている。

 コイツ……帰ったらみっちりお説教してやるわ!!


「れ、レナ様! 今はお母様とシリア様の救出が先です! フローリア様と遊ぶのはお部屋の中でお願いします!」


「その言い方意味深だからやめなさいティファニー!」


「そうだよレナちゃん! 時々レナちゃん達が裸で遊んでることがあるってお姉ちゃん言ってたけど、お外でそれはダメだと思う!」


「何の話!? え、待ってエミリそれ詳しく聞かせて!」


「レナ様……やっぱりティファニーが見てしまった時は、そういう事だったのですね!? 申し訳ございません!」


「違うわよ! ちょっと待って何なのこの状況!? フローリア、あんたからも否定してよ!」


そう助け舟を求めて、あたしは求める先を間違えたと盛大に後悔した。


「いい? エミリちゃん、ティファニーちゃん。女の子は、大人になると裸の付き合いがしたくなる時があるの。だから、恥ずかしいことでもなんで――」


「もういい分かったから黙ってて!!!」


「きゃん! もう、そういうのはセクハラって言うのよレナちゃん!」


 自分は日ごろから、あたしの体を好き勝手触ってるくせに、お尻引っぱたかれただけでそんなことを……!!

 カッとなりそうなあたしを制するように、再びメイナードの爪が頭皮に食い込まされる。


「痛い痛い痛い!! 分かってるわよ! さっさと救出して帰るわよ!!」


『ならさっさとやれ。貴様が遊んでいれば遊んでいるほど、主達に危険が及ぶ』


「じゃあ降りなさいよ! あんたが頭の上にいると動きづらいのよ!」


 半ば八つ当たりのようにメイナードに吠えると、アイツはふんと鼻を鳴らしながらエミリの頭上へと飛び移った。エミリはエミリで乗られ慣れているらしく、両手でメイナードの位置を微調整し始めている。

 そんな様子に溜息を一つ吐き出し、あたしは皆より数歩前に出て、エルフォニアに念押しで言った。


「これ、この世界では禁止されているはずの魔法らしいから、絶対に他の人に言わないでよね」


「えぇ」


 まぁエルフォニアは、他人の秘密を誰かに言うような人じゃないっていうか、人付き合いが下手だから言う機会が無さそうだけど。

 とりあえず約束はしてもらったことだし、あたしも始めるとしますか。


 大きく深呼吸をして、フローリアから貰ったクロノス教徒のペンダントを握りしめながら憎悪を想起する。すると、待ってましたと言わんばかりにもう一人のあたしが歓喜の声を上げ始めた。


『いいじゃんいいじゃん! みんなの前でかっこつけさせてもらえるなんて、最高に決まってるじゃない!?』


 うるさいわよ。かっこつくか付かないかなんて、全部終わってからじゃないと分からないでしょ。


『でもさ、なんであたしがエルフォニアの前で手の内晒さないといけないわけ? 何となくだけど、エルフォニアだって奥の手あるの分かってるでしょ?』


 それは同感よ。でも、ここで使えない事情があるなら仕方ないじゃない。


『はぁ~あ。これでまた、あたしが苦労した分を誰かに横取りされるのね。まーた繰り返すんだ、あたしは』


 安い挑発だけど、あたしの過去の傷口に塩を塗りたくって憎悪を沸き上がらせるには十分すぎる。

 身を焦がすような憎悪を感じながら、あたしは自分に言い聞かせるように吠えた。


「適材適所って言葉を信じなさいよ! 魔力反転――憎悪に舞え、墨染ノ桜!!」


 あたしを中心として、ぶわっと真っ黒な桜の渦が沸き上がる。それに応じるように、もう一人のあたしの高笑いが聞こえてきた。


『あっははは! それじゃ、今日も頑張ってねあたし? せいぜい無駄にならないよう応援してるわ』


 渦が収まり、ひらひらと黒く染まった桜を舞い散らせながら、あたしは体に異常がないかと手を開閉する。大丈夫、今のところはあたしの支配下にすべて置けてるみたい。


「魔力反転……。話で聞いてはいたけれど、実際に目にすると驚きを禁じ得ないわね。この世界の理の外の力、とでも言い換えられるのかしら」


「まぁあたし自身、この世界の人じゃないし」


「それもそうね。じゃあ、入り口の作成と陽動、術式の破壊は任せたわ」


 エルフォニアの言葉を聞きながら、あたしは右手に魔力を込め始める。


「はいはい。あんたが何をするか分からないけど、そっちこそ失敗しないでよ……ねっ!!」


 結界に思いっきりそれを叩きつけると、あたしの想像以上に結界は脆かったらしく、触れた場所からガラスが割れるようなけたたましい音を奏でながら、背の高いフローリアでも余裕で通れるくらいの大穴を開けることができた。


 あたしは半身で振り返り、みんなの士気を高める意味合いも込めて宣言した。


「さぁ、囚われのお姫様を取り返しに行くわよ!!」

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