403話 異世界人達は駆け付ける 【レナ視点】
急いでご飯を食べ終えたあたし達は、シリアが作った猫の転移像でラヴィリスまで飛び、エルフォニアとの合流地点であるハールマナ魔法学園にエミリ達の先導で向かった。
流石に夜ということもあって人気は無いけど、魔法学園という名に相応しいドーム型の結界で学校が守られているみたいだった。
「ちなみにだけど、これは魔法では無く魔術よ」
「あたしの考えてること読まないでくれる?」
エルフォニアに考えを読まれて不快感を示すも、エルフォニアは気にせずウィズナビを操作している。
それが何だか腹立たしくて、あたしは続けて聞くことにした。
「それで? シルヴィが捕まってるってどういう事? なんで魔法学園に魔術師がいるの? 魔法使いを育成する施設なんでしょ?」
「…………」
「ちょっと、無視しないでくれるー?」
「…………」
ダメだこれ。完全に世界入っちゃってるわ。
ていうか、エルフォニアもこういう一面あるのね。なんかこう、人前で没頭するようなタイプじゃなさそうだったから意外に見える。
でもシルヴィがピンチな訳だし、申し訳ないけどこっちの世界に帰ってきてもらわないとね。
そう思ってウィズナビを取り上げようとした寸前で、エルフォニアが先にウィズナビをしまう方が早かった。
「待たせて悪かったわ。それで、何だったかしら」
「何だったかしらじゃないわよ。シルヴィが魔術師に捕まってるって話の詳細を教えなさいよ」
「そうね。それじゃあ、まずは状況から説明するわ」
エルフォニアから手短に説明を受けると、大体こんな感じだった。
曰く、学園長って人が魔術師と繋がっていたらしく、どういう状況かはわからないけどシルヴィだけを呼び出して捕まえたらしい。
それで、学園全体に魔術の結界を張り巡らせて、この学園の中央にある時計塔にシルヴィとシリアを拘束しているのだとか。
「なんで場所までわかるの? もう入ったとか?」
「魔術結界には魔法では干渉できないわ。ただ、あの子の魔力は独特だから、どんなに結界で阻まれようと魔道具で魔力を抑えようと、溢れる残り香のようなもので察せるのよ。あなたも魔女の端くれなのだから分かるでしょう?」
「全然」
「……まぁいいわ。とりあえずシルヴィを救出するにあたって、あなた達に頼みたいことが二つあるの」
一瞬哀れみを込めた視線を送られてムカついたけど、今はそれどころじゃないからぐっと堪えたあたしを誰か褒めて欲しいわ。
「何をすればいいの?」
「一つは陽動ね。派手に暴れられるだけ暴れてくれると助かるのだけれど、その分危険が生じるわ。特に、エミリちゃんとティファニーちゃんは純粋な魔力持ちだから、中級以上の魔術師を相手取ると苦戦するかもしれないわね」
エルフォニアの言葉に、あたし達の視線がエミリ達に向けられる。
でも、本人達はそんなことは承知の上だと言わんばかりに、あたし達に意気込みを見せてきた。
「大丈夫だよレナちゃん! わたし、狼になっていっぱい暴れるから!」
「エミリが危なくなったら、ティファニーが支援してあげます! お母様譲りの治癒魔法もありますので、ご安心くださいませ!」
「へぇー、意外と相性いいのね二人共。でも、相手は本気で殺しに来るかもしれないから、本当に危なくなったら無理せず逃げるのよ?」
「うん!」
「心得ております!」
「ってことらしいけど、エルフォニアから見て危険度はそんなに高いの?」
「そうね。人の身で神力を使える魔女を捕えて何に使うのかは分からないけど、この学園全体を使って何かを成そうとしているのなら、魔術師の中でも幹部以上は出張ってきてもおかしくないと思っているわ」
魔術師の幹部と聞いて、半年前に戦った魔術師――ロジャーを思い出した。
あの頃のあたしは手も足も出なくて、暴走した憎悪に支配されるしかなかったけど、あれから死ぬ気で支配下に置けるようにトレーニングは続けてきたわけだし、もしいたのなら今度こそお返ししてやるわ。
「レナちゃん。やられた分をやり返したいって気持ちは大切だけど、自分を見失わないように気を付けるのよ?」
「分かってる。でも、万が一の時は頼んでいいかしら」
正直、フローリアの心配は正論。
あたしも何かの拍子でもう一人のあたしに体を持っていかれるかもしれないし、その時はフローリアの時間巻き戻しが唯一の命綱となってしまうのが現状だ。
それでも、フローリアはあたしの意見を尊重してくれたみたいで、いつも通りにっこりと笑いながらブイサインを見せてきた。
「まっかせて! 神様パワー全開でレナちゃんをサポートしてあげるから!」
「ありがとフローリア。……で、あんたはいつまであたしの頭の上にいるのよ」
図々しくも、転移後からあたしの頭上で羽を休めているメイナードに少し苛立ちながら尋ねると。
『せいぜい戦闘が始まるまで、我の止まり木の役割を果たすがいい』
「今すぐ降りなさ――ぁ痛たたたた!! だから爪を食い込ませないで! 人の頭皮は弱いのよ!?」
『ふん、軟弱な小娘め』
降ろそうにもかぎ爪を出して抵抗しようとしてくるから、異物感を頭に感じながらもこうして乗せ続けるしかないのが不快でしかない。
そんなあたし達を笑ったフローリアは、「ところで」と話を変え始めた。
「エルフォニアちゃん、二つ目って何かしら?」




