表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

415/994

396話 義妹達は学校が好き

 他の授業でも似たようなことをして回り、一日の日報を提出して帰路につこうとした私達でしたが、校門の近くで見慣れた影が二つ並んでいるのを見つけました。


「エミリ、ティファニー。先に帰っていたのではなかったのですか?」


 私がそう呼びかけると、二人はぱっと頭を上げてこちらへ駆け寄ってきました。


「お姉ちゃん! 一緒に帰ろ!」


「お母様、手を握りながら帰ってもよろしいでしょうか!?」


「ふふ、もちろんですよ」


 二人と手を繋いでラヴィリスの街を歩きながら、今日の出来事を聞かせてもらいます。

 エミリ達は初等部の四年生として編入させていただいたのですが、特にエミリにとっては授業の内容が難しかったらしく、先生の授業を必死にノートに纏めるだけで精いっぱいだったようです。

 ティファニーは私の知識をほとんど持っているのであまり困らなかったらしく、エミリに教えてあげましたと胸を張りながら得意げにしていたことに対し、エミリがずるいと悔しそうにしていたのがとても愛らしいと思ってしまいました。


 獣人族や植妖族だからと仲間外れにされてしまうのではと懸念していましたが、幸いにもクラスメイトに仲良くしていただけているようで、彼女達の初日はとても充実した内容だったようです。


「あ、そうだお姉ちゃん。朝、校庭で凄い魔法使ったのお姉ちゃんでしょ?」


「あれは私ではなくシリア様ですが、私がやったと言うことになってしまっていますね」


「だよね! あれ使ったのわたしのお姉ちゃんだよって言ったら、みんなびっくりしてたの!」


「流石はお母様です! ティファニーのクラスの皆様ったら、お母様は魔女ではと怯えておりました!」


「分かってるとは思いますが、私が魔女だと言うことは言わないでくださいね?」


「もちろんです! お母様はタウマト教の中でも、それはもう凄いシスターとお伝えしておきました!」


「うんうん! わたしもちゃんと内緒にしてるよ!」


「ありがとうございます。魔女だとバレてしまっては、先生でいられなくなってしまいますからね」


 厳密には在籍していられるとは思いますが、私とシリア様の目的である魔術師と繋がりがあるかもしれない学園長先生との接点を持てなくなるという点から、魔女であることは必ず伏せておきたい内容です。


 そんな話をしていると、あっという間に別荘に到着しました。

 当面はこの別荘では寝泊まりせず、もし帰りが遅くなりそうな時や緊急時には使うという取り決めになっているので、今日はこのまま転移像を使って帰宅します。

 一瞬の浮遊感を経て庭に戻ってくると同時に、ちょうど今日の営業を終えようとレナさんが玄関先に出てきました。


「あ、シルヴィ! エミリもティファニーもおかえり、学校楽しかった?」


「ただいま戻りましたレナさん。店番ありがとうございます」


「ただいまレナちゃん! 学校ね、とっても楽しかった!」


「レナ様の仰る通り、学校という場所は素晴らしい場所でした! 明日が楽しみです!」


「あはは! 気に入ってるようで良かったわ。もう少しでフローリアがお風呂から出てくると思うから、二人で入っちゃいなさい」


「「はーい!」」


 エミリ達は仲良く返事をすると、学校の荷物を置きに部屋へと駆けていきました。その後ろ姿を見ながら、レナさんが小さく笑います。


「ホント、あの子達の元気な姿を見てると和むわー」


「同感です。エミリ達が楽しそうにしていると、こちらまで元気を貰えます」


『レナも外見はほぼ同い年なのじゃ、はしゃいでも構わんぞ?』


「あたしはこれでも二十四だって。もうそんな無邪気に遊べないわよ。それに、あたしよりシルヴィの方が遊んでおいた方がいいんじゃない?」


「私ですか?」


「こっちの世界で十七歳は成人らしいけど、あたしの世界じゃ遊び盛りの花の時期なのよ。友達とカフェでくだらない話をするために時間を使ったり、ゲーセンでプリ撮ったりカラオケ行ったりってね」


「げーせん、と言うのは初めて聞きました。シリア様、ご存じですか?」


『また異世界の話じゃろう、妾が知る訳が無い』


「あー、ゲームセンターって言うんだけどね? UFOキャッチャーで何百円も無駄にしながらぬいぐるみ取ったり、ゾンビを撃つゲームして騒いだりって……なんて説明したらいいのかな。とにかく、遊ぶためのおもちゃがたくさん置いてある場所なの!」


「ええと、レナさんの世界ではぬいぐるみを買うのにお金を無駄にしないといけないのですか?」


「違う違う、買うんじゃなくて取るの。こう、上から手みたいなのが吊り下げられてて、それを動かして置いてあるぬいぐるみとかを掴むってゲームで」


 レナさんは身振り手振りでどんなゲームだったかと教えてくれますが、買った方が安いと分かっているのにお金を無駄にして遊ぶという行為を理解できない私は、どうしてもレナさんの楽しかったという思いに共感することができませんでした。


『まぁ、異世界なりの娯楽なのじゃろうよ。金銭の浪費をすることで、一時的な快楽を得る者もおる訳じゃ。それの類ではないかの』


「そう言うのじゃないんだって! 何て言うの? その、友達と騒ぐことが目的って言う感じ? これで分かるでしょ!」


『逆にその説明で理解しろと言う方が無理があると思うのじゃが』


「申し訳ないですが、レナさんの説明だけだとよく分かりません……。いつか、フローリア様に写真で撮ってきていただきましょうか」


「いつもは理解してくれるシルヴィまでそんなこと言うー!」


 いつもはと言われましても、レナさんの世界のお話は本当に理解しづらいものが多いので、分かったように見せているとは絶対に言えません。

 分かってほしいレナさんを適当にあしらったシリア様が、家の中へ入っていくのを追う私に、レナさんは悔しそうな顔をしながらも続くのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ