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394話 ご先祖様は教鞭を振るう・前編

 先ほどのクラスは学年の中でも問題児が多いクラス、という評価を受けていたようで、幸いにもあまり怒られることなく穏便に済ませていただくことができました。

 そんな出鼻をくじかれてしまったスタートダッシュから、気を取り直して二時間目。同じく中等部二年ではあるのですが、二つ隣の一組で授業を行おうとして入って来た私達は、二種類の声に迎えられることになりました。


「うわっ、めっちゃ若い先生! え、俺達を変わんなくない?」


「髪サラサラ! スタイルやば! 俺めっちゃタイプだわ!」


「ちょっと男子! 静かにしなさいよ!」


 ひとつはシリア様――もとい、私の外見を褒めてくれる声。

 そしてもうひとつはと言いますと。


「ひっ!? 出た! 銀の魔女!」


「お、おいジン。絶対に怒らせるなよ? 丸焼きにされるぞ」


「なんで俺なんだよ! お前こそ……」


 先ほどの校庭での騒ぎを耳にしていた一部の生徒から、恐れられる声でした。

 というよりも、この学園では銀の魔女と呼ばれることになるのですね……。

 悪名が高くなってしまう前に、何とかイメージを覆さなければと嘆息していると、教壇の前に立ったシリア様が集中を促すように、机に音を立てながら魔導書を置きました。


「こほん。初めまして、中等部二年一組の皆さん。既にご存じの子もいるようですが、改めて自己紹介から失礼しますね。私は臨時教師のシルヴィと言います、担当科目は魔法学です。よろしくお願いします」


 シリア様はそう言うと、生徒に向けてにこりと微笑みました。すると、生徒達が一斉に沸き上がり始めました。


「は、はい先生! 質問です! 先生は何歳ですか!?」


「先生、彼氏はいますか!?」


「どうやったら先生みたいに美人になれますか!?」


「先生! 先生!」


 次々にぶつけられる質問にシリア様は優しく返しつつ、ある程度答えたところで授業に入りましょうと、質問をばっさりと打ち切ります。


「私のことは、これから先の生活で少しずつ覚えてくれると嬉しいです。ですが、私も皆さんのことを知りたいと思いますので、まずは皆さんの知識や技量などを教えていただきますね」


 シリア様はチョークを手に取り、黒板にさらさらと基礎魔法の仕組みと魔法式の組み方を書いていきます。


「魔法とは、皆さんも知っていると思いますがイメージを具現化する術です。ですが、如何にイメージだけを描いても基礎となる式が分かっていないと魔法は発動しません」


 魔法の入門とも言える内容に、生徒達も何を今さらと言うような表情を浮かべながらも、大人しく聞いてくれています。シリア様もその反応は分かっていたようで、気にすることなく言葉を続けます。


「続いて、基礎が分かっていても魔法が発動しないのは、大きく二つの原因があります。では、今あくびをした窓際のあなた。その原因について答えてくださいますか?」


「うぇ? あー、えーっと、自身の得意属性の不適合と、行使する魔法に要求される魔力不足です」


「正解です。基礎のお話ですからつまらないかもしれませんが、大事な内容なのでしっかり聞いていてくださいね」


 柔らかく怒られた生徒は、少し恥ずかしそうにしながらも姿勢を正し、意識をシリア様へ向けてくれました。そんな彼に微笑みを向けると、シリア様は黒板にとんがり帽子を被った可愛い猫のイラストを描きながら続けます。


「さて、ここで問題です。この猫に炎属性の適性があり、初級魔法なら十発ほど行使しても問題がない魔力量を保有していると仮定します。ですが中級魔法を放つには、魔力量が二十パーセントほど足りません。この猫には、中級魔法を放てる日が来るでしょうか、来ないでしょうか」


 シリア様の問いかけに、最前列に座っていた女子生徒が手を上げました。

 発言を許可された彼女は立ち上がると、当然のように答えます。


「来ません。なぜなら、魔力の保有量は一生涯変わることが無いからです」


「なるほど、それがあなたの答えですか。……他に答えを持っている人はいますか?」


 クラス全体に問うも、誰一人として手を上げたり口を開こうとする人はいません。

 先日イルザさんから教えていただいた教育方針が本当であると確かめることができたシリア様は、ひとつ頷きながら先ほどの女子生徒に改めて問います。


「では、少し質問を変えましょう。あなたが体育の授業で長距離走をした翌日、筋肉痛になったりすることはありますよね?」


「あります」


「それを繰り返していく内に、最初は辛かった距離でもだんだんと楽に走れるようになったりしませんでしたか?」


「あったと思います」


「はい。それは筋肉が成長している証拠ですね。それと同じで、魔力もたくさん使えば使うほど、皆さんが持っている魔力量を増やすことができます」


 シリア様の発言に、クラスが一斉にざわめき始めました。


「せ、先生! それはあり得ません! だって俺達、初等部の頃から魔力量が変わってないです!」


「そうです! 適当なこと言わないでください!」


 クラス全体から反発を受けたシリア様でしたが、その表情は少し楽しそうでした。


「適当、ですか。では、皆さんとひとつ賭けをしましょうか」

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