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15話 魔女様のポーションはお菓子に合う

『シルヴィ、もういいじゃろう? 少し早いやも知れんがおやつにせんか?』


「ダメです。あと一時間我慢なさってください」


「シルヴィちゃん! 私お腹空いて来ちゃった!」


「軽食をご用意しましょうか? おやつが入らなくなりますが」


「シルヴィ、お願い!」


「お姉ちゃん、わたしも早く食べたい!」


「うっ……。だ、ダメです。そんな目をしても出しません」


『主よ』


「ダメですメイナード。待っていてください」


『我はまだ何も言っていないのだが……』


 おやつ時まであと一時間。皆さん待ちきれないようで、我が家の台所担当の私に代わる代わるおやつを要求してきます。

 食べさせてあげたいのは山々ですが、あまり早くおやつにしてしまうと夕飯まで持たなくなりますし、逆に遅くすると夕飯が入らなくなるということになるため、おやつの時間はシビアにならざるを得ないのです。


 そんな私は現在、部屋に勝手に入って食べようとしていたシリア様とフローリア様を防ぐべく、私の部屋の前に机と椅子を運び、扉を塞ぐ形でポーション作りをしています。

 黙々とポーションを作っていると、レナさんが出来上がったポーションを手に取り、匂いを嗅ぎ始めました。


「うーん、この匂いどこかで嗅いだことあるのよねぇ。しかもかなり身近だった気がするんだけど……」


「異世界で馴染みのある物なのですか?」


「たぶん。ねね、ちょっと飲んでみてもいい?」


「回復効果は得られないと思いますが、どうぞ」


 私の了承を得たレナさんはくいっとポーションを口に含み、しばらく舌先で転がすように味わうと、飲み込みながら何かに気が付いたようでした。


「あ、分かった! これお茶だわ!」


「お茶ですか? 私が知っているお茶とはだいぶ味が異なりますが……」


「違う違う! こっちの世界で言うお茶っていうのは、あたしの世界だと紅茶って言うのよ! で、あたしの国のお茶は緑茶って言うの!」


 どうやら私のポーションの味は、レナさんの国に馴染みの深い味だったようです。私達が愛飲するお茶と同じように捉えているあたり、日常的に飲む味なのでしょうか。


「ねぇシルヴィ。このポーションを温めておやつと一緒に出してくれない?」


「えぇ!? ポーションを温めるのですか!? と言うよりも、おやつのお供にするのですか!?」


「お願い! 騙されたと思って!」


「うーん……。そこまで仰るならお出ししますが……」


「ありがと! じゃあ楽しみに待ってるわね!」


 そう言うとレナさんはご機嫌そうに下へ降りていってしまいました。

 本当に温かいポーションを片手におやつを食べるおつもりなのでしょうか……。


 それから間もなく、皆さんが待ちに待ったおやつの時間が来ました。

 今日は天気も良いので、別棟のリビングの窓辺でおやつを食べることにします。


「お待たせしました」


「来たー!!」


「やったぁー!」


「わぁ~! ホントに色鮮やかで綺麗だわ!」


『ほぉー! ちんまりしておるが、趣向の凝った逸品じゃのう!』


 お皿に取り分けたおやつを全員分手渡し(メイナードとシリア様の分はそのまま窓辺にお皿を置きました)、レナさんに言われた通りにコップに注いだ温かいポーションを渡します。


『は? なんじゃシルヴィ、ポーションなぞいらんのじゃが』


「私も疑問なのですが、レナさんが温めて出してほしいと……」


「いやいやシリア、お菓子食べてから飲んでみてよ! 絶対合うから!」


『ポーションじゃぞ? よもや、異世界の人間の舌はどうかしておるんじゃなかろうな……。どれ』


 シリア様はお菓子を堪能した後、温まったポーションを小さな舌先で掬いました。すると驚いたような表情をされ、私へ勢いよく振り返ります。


『なんじゃこれは!? シルヴィ、これはいつもお主が作っておるあれじゃよな!?』


「え、えぇ。いつものポーションと同じものを温めただけです」


『変な味だとは思っておったが、妙にこの菓子に合う……。何なのじゃ一体、菓子と共に飲むポーションなぞ聞いたことも無いわ』


「レナちゃんが言うなら私も試してみよ……。ん~、何これ? なんだかとっても落ち着くわぁ……」


「ほらほら、エミリも試してみて?」


「うん。……わぁ~、なんだか日向ぼっこしたくなる」


 皆さんほっこりとした顔になっています。そんなに相性のいい食べ合わせなのでしょうか。

 私もとりあえず、“いもようかん”というお菓子を食べ、とろりとした甘味を味わった後で温かいポーションを飲んでみることにします。


 ……何でしょうか。口いっぱいに広がっていた甘さが、ポーションの僅かな渋みで流され、それが爽やかに吹き抜けていきます。これは思った以上に大発見かもしれません。お菓子のお供にポーション。聞こえは最悪ですが、馬鹿にならない組み合わせです。


『主よ、まだ菓子はあるか?』


「え? あぁ、今持ってきますね」


 メイナードに出した“おせんべい”はかなりお気に入りだったようで、綺麗に平らげられていました。私は立ち上がり、奥のテーブルから甘くなさそうなお菓子を適当に取り分けて戻ると、食べている最中だったエミリがレナさんの肩に寄りかかって眠ってしまっていました。


 よく見れば、食べ終えて寛いでいるシリア様とフローリア様も、どこか眠たげにしているようです。

 私も皆さんに倣って、のんびりとした昼下がりを満喫することにしましょうか。


 たまにはこうしたゆったりとした時間も悪くないものですね。

2章はここまでで完結です!

次回からは、舞台が変わり魔導連合編となります!


今後も1日1話は最低でも投稿していきますので、

引き続きご愛読のほどよろしくお願いいたします!


-----------------------------

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今章も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[良い点] これは面白い(笑)! 主人公以外の視点で日本文化を持ち込むのはなかなか素敵です。 ポーションが緑茶の味とは斬新ですね! せんべいを食べてるメイナードもいい♡
[一言] まさかの緑茶だったー!ヾ(*´∀`*)ノ し、シルヴィ。あなたはやはりすごい。ポーションで再現してしまうとは。 のほほんな日常、ほっこりですね。 次回からは魔導連合編ということで、どうなるこ…
[良い点] シルヴィを中心とした人間関係がドンドン形成されて、楽しくなってきました。読んでいてストレスフリーですし、気楽に安心して読めますよ。 [一言] 普通なら異世界モノの主人公になっているようなキ…
2021/11/05 19:23 退会済み
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