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385話 魔女様は案内される

 イルザさんから学園内の調査を請け負った私達は、続けて学園の案内を受けていました。

 広い学園内を歩きながら、私達が担当することになる“魔法科”という科目について話を伺っていると、ちょうどお昼を告げる鐘が鳴り響き、それに合わせて教室の各所から生徒達が飛び出してきました。


「こらー! 廊下を走ってはいけませんよ!?」


「うわ、教頭先生だ! ごめんなさーい!」


「全くもう!」


 口では怒ったように装いながらも、元気いっぱいな子ども達の姿は好ましいようで、イルザさんは怒ったような笑ったような、判断をし辛い表情を浮かべています。

 そんな生徒達がほぼ全員一方向へと駆けていく姿を見ていて、ふと疑問を覚えた私はイルザさんに尋ねてみることにしました。


「彼らはあんなに急いで、どこへ向かっているのですか?」


「学食です。せっかくですし、シルヴィ先生も食べていかれますか?」


「もしよろしければ、ぜひ」


「ふふ! では案内は中断して、お昼にしましょうか」


 駆けていく生徒達に続くように足を向けて移動した先は、ペルラさん達の酒場を何倍にしたか分からないほどの広い食堂エリアでした。

 生徒が自由に好きな料理を取ることのできるビュッフェタイプのようで、エミリと同い年に見える子ども達は、揃って同じ場所に詰めかけているのが良く見えます。あれは恐らく、エミリも大好きなハンバーグなのでしょう。


 トレイの上にお皿を置き、色とりどりな料理を少しずつ取っていると、先ほどの子ども達とは少し年上に見える生徒から声を掛けられました。


「教頭先生! 新しい先生ですか?」


「はい。新しく魔法科の先生になる、シルヴィ先生ですよ。非常勤講師なので毎日は会えないと思いますが、仲良くしてあげてくださいね」


「わぁ! よろしくお願いしますシルヴィ先生!」


「シルヴィ先生、すっごく可愛いですね! それにめっちゃ若い!」


「先生おいくつなんですか!? 僕たちとそんなに変わら無さそうに見えますけど!」


「え、えっと……」


 年齢もそのままで登録していただいていたので、本当に答えてしまって大丈夫でしょうかと今さらながらに不安になってしまい、イルザさんをちらりと見ます。すると、イルザさんは問題ないと言わんばかりににっこりと微笑み返してくださいました。


「私は今月で十七歳になったばかりです。なので、他の先生方に比べると教え方が上手では無いかもしれませんので、お手柔らかに接していただけると嬉しいです」


「「十七!?」」


 私を囲むように質問をしてきていた生徒達が、声を揃えて驚きました。

 そのままこそこそと話し始める姿を見て、ペルラさん達と出会ったばかりの頃を思い出してしまい、何だか懐かしく感じられてしまいます。


「え、待って待って! シルヴィ先生って先生になるまで何してたんですか!?」


 最終的には貴族として魔法職に就くか、魔女や魔導士を目指すことになる魔法学園とは言えども、森で魔女をやっていましたとは言えないので、ここはエルフォニアさんとの打ち合わせ通りに答えましょう。


「ええと、普段はタウマト教のプリーストとして、教会に治療を求めてくる方の対応をしていました」


「十七歳で先生にもなれるプリーストってなんだよ……あ! まさか先生、半年くらい前にフェティルアに現れたっていう凄腕プリーストだったりしませんか!?」


「あー! 言われてみれば特徴そっくり! 髪も銀色だし、片目を隠してるし!」


 私、そんなに噂になっていたのですか?


「じゃあ先生は魔法科でも治癒魔法専門なんだ!」


「治癒魔法かー。俺は光に適正がないから、先生の授業受けられないな……」


「僕もだ……」


「私もー……。はぁー、光属性に適正があったらなぁ」


 肩を落とす生徒達に何と答えればいいか迷っていると、シリア様が体の主導権を渡すように指示を出されました。言われるがままに体を明け渡すと、シリア様は私になりきって柔らかい笑みを浮かべながら答え始めます。


「専門は光属性ですが、私は他の属性も特化している方以上に使えますので、皆さんにも教える機会があると思いますよ」


「うえっ!? マジかよ先生、器用貧乏は自分を苦しめるって授業で習ったぞ!?」


「うんうん。自分に合った適性を伸ばした方が優秀な魔法使いになれるって、先生たちが言ってました」


 やはり、生徒達としてはそれが常識となっているのでしょう。イルザさんも申し訳なさそうな顔を浮かべているあたり、教職員側としては間違った教えをしなくてはならない状況にあるのだと思います。

 そんな彼らに、シリア様は小さく笑い。


「では、教頭先生に許可をいただけたら、お昼を食べ終えてから少しだけお見せしましょうか」


 真っ向から否定するかのように、そう言うのでした。

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