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324話 義妹は感化されがち

 懺悔(?)も終わり、街をぶらぶらと見て回りながら祭典を楽しんだ私達は、日も落ちてきていたことから早めに休むことにしました。


「なんかごめんね、あたしだけこんないい所に泊まっちゃって」


「いえ、気にしないでください。これがこの街のルールならば仕方がありません」


「ばいばいレナちゃん、コーレリアさん! また明日ね!」


「エミリん、シリア、シルシルおやすー!」


『ほれ、いつまでも手を振ってないで行くぞ』


 亜空間収納の中へと入り、昨日は時間も遅かったことから整理が出来ていなかった収納物を片付けます。

 魔導書や魔道具は全て客室へ。衣服は私の部屋へ。食材は倉庫……いえ、倉庫が無いのでレナさん達の部屋に置かせていただきましょう。


『やれやれ、お主はほんにマメじゃな。こんな亜空間収納の中なぞ、誰に見られる訳でも無かろうに』


「それはそうなのですが、ここまで広くしていただいたのですから、有効に使いたいと思いまして」


『まぁ好きにするがよい。さて、片づけが終わったら飯の準備をするぞ』


 シリア様に頷き、夕食の準備に取り掛かります。

 今日はエミリの希望で、特大のハンバーグを作る予定です。


「お姉ちゃんお姉ちゃん!」


「何ですかエミリ」


 挽き肉と玉ねぎを混ぜ合わせながらエミリに振り返ると。


「バッチ来いやぁ!」


「……」


 あの“バッチコイ屋”の店員さんのポージングを覚えてしまったエミリが、レナさんの言うドヤ顔を決めながら可愛らしくポージングを見せつけてきました。

 そう、あのバッチコイ屋で看板に書いてあった“マッスルハンバーーーーグッ!!”という、太く逞しい腕で抱えられていたハンバーグにエミリが強く興味を示していて、店から漂って来ていたお肉の匂いとメニュー、そして店員さんを覚えてしまっていたのです。


『くはっ! くはははははは!! エミリよ、こうじゃこう!』


「こ、こう?」


『そうじゃ、そのままゆっくりと腕を曲げ腰を落とせ。……そうじゃ、そこでもう一度決めよ!』


「バッチ来いやぁ!」


 お願いですシリア様。エミリをそちらの道へ連れて行かないでください。

 それにエミリもエミリです。確かにエミリは森の皆さんと暮らしていた時間が長かったこともあって、彼らがどのようなポージングを決めていたかを、間近で見て覚えていたのは千歩譲って仕方がありませんが、だからと言ってわざわざ真似しなくても良いではありませんか。


 可愛い妹の遊びを止めさせるべきか、楽しんでいる愛らしい姿をそのままにしておくべきか、激しく葛藤していると。


「ちょりーっす! おっじゃま~!」


「コーレリア様!?」


「あ、コーレリアさんだ!」


 軽すぎる挨拶をしながら、コーレリア様が亜空間収納の中に姿を現しました!


『コーレリア、貴様どうやって入ってきた? 入口なら閉じてあったはずじゃろう』


「ちっちっち。ウチを誰だと思ってんの? 【空間の女神】様ぞよ?」


『はぁ……。そうか、貴様の権能ならば亜空間だろうと異空間だろうと出入りも自由なのか』


「さす猫! 天才じゃん!」


『じゃから猫と呼ぶでないわ!!』


 パチパチと拍手を送りながら笑うコーレリア様に、私はとりあえず聞いてみることにします。


「どうかされたのですかコーレリア様? 連絡ならレナさんのウィズナビでも行えると思いますが」


「なはは! シルシル冷たくね? 用が無かったら会いに来ちゃいけない系?」


「そういう訳ではありませんが、突然いらっしゃったので何か大事なようがあるのかと思ってしまいまして」


「用、用……。あ、あるわ用!」


『今思いついたのじゃろう』


「ちょ、そんなこと無いし! ウチ、お腹ペコ丸だから飯ってこよっかなーって外に出たの! んで、ついでだからシルシル達何ぱくついてるのかなーって見に来た的な?」


「お姉ちゃん! コーレリアさんもお姉ちゃんのめちゃうまハンバーグ食べたい的な!」


「エミリ?」


「エミリん分かってるぅ~! さすエミ! うぇ~い!」


「うぇ~い!」


 どうしましょう。この街に来てからという物、エミリが日に日に毒されています。

 もう祭典なんかお構いなしに、私とエミリだけでも帰って元の生活に戻った方が良いのでは無いのでしょうか。


「っつーことで、とりまウチにもよろたん!」


『貴様の分の材料は無い。帰れ』


「はぁ~!? 猫奴何様!? 神様~!!」


『黙れド阿呆が! 上手い事を言ったつもりか!』


「バリ上手くね!? 今のウチ、チョー神がかってたっしょ!? なっはははは!!」


『貴様は神じゃろうが! 神が神がかるとか訳が分からんぞ!?』


「くぅ~! シリアキレッキレ! よっ、ツッコミ猫神様~!」


「うぇ~い!」


『ええい! もう帰れ帰れ! 貴様と話しておると頭が痛くなる! エミリも乗るな! 馬鹿が感染る!』


「シリア知ってた? 馬鹿って天才と紙一重じゃん? だからウチ、紙一重で馬鹿にされてるなら実質褒められてんじゃね!?」


『何をどう受け取ればそうなる!?』


「いぇーい! アイアム、天才女神コーレリアぁ! 今夜は寝かさないゼーット!!」


「うぇ~い!」


「行くよエミリん、せーのっ!」


「「バッチ来いやぁ!!」」


『やかましい! 早う帰れ!!』


 誰か、助けてください……。

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