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304話 魔導連合は忙しい

 次に向かう先として私達が連絡を取ることにしたのは、もちろん魔導連合です。


 魔導連合に加入させていただいてからというもの、様々な事を経験させていただきました。

 そう言った意味でも、まずはアーデルハイトさんやヘルガさん、そしてここ最近は忙しくて都合がつかないエルフォニアさんにも、しっかりと挨拶はしておきたいと思ったのです。


「ていうか、エルフォニアは最近何してんだろう? 全然来なくなっちゃったじゃない」


「彼女も彼女で、魔女として探究している内容があるようですので、恐らくそれで忙しいのでは無いでしょうか」


「わたしもエルフォニアさんに会いたいな」


「また近い内に会えますよ」


 アーデルハイトさんの連絡先に掛けてみてますが、珍しく連絡が付き辛いようで長い呼び出し音が続いています。もしかすると、年末は魔導連合も忙しいのかもしれません。

 そう思っていた矢先、聞きなれた声が応答してくださいました。


『おーっすシルヴィちゃん! ちょっと手が離せないトゥナに代わって俺が出るぜ』


「ヘルガさん! こんにちは、お忙しい中すみません」


『いいっていいって! んで、今日はどうしたんだ?』


 早速ヘルガさんに年末のご挨拶にとお話を伝えたところ、彼は悩むような声を出しました。


『あー、気持ちはありがたいが今はちょっとなぁ……』


「やはり、年末はお忙しかったでしょうか」


『忙しいか忙しくないかって言えば忙しくはないんだが――んだよトゥナ、別に嘘は言ってねぇだろ?』


『お前が忙しくないのは私に押し付けているからだろうが!』


『あーはいはい、総長様のおかげで俺は楽ができてますよーだ』


「なんか、いつもの感じね」


「あはは……」


 軽口を叩くヘルガさんに噛みつく勢いのアーデルハイトさんの姿が、ウィズナビ越しでも想像できてしまいます。

 ですが、忙しい事には変わりなさそうですし、日を改める方が良さそうです。


「すみませんヘルガさん。今度、また改めて伺うことにします」


『おう! 悪いなシルヴィちゃん、シリア様にもよろしくな!』


「はい。それでは、失礼しますね」


『またなー!』


 通話を切り、次に挨拶に行く先をどうするか相談しようとした時、今度は誰かから私のウィズナビに連絡を掛けてきたようでした。

 しまいかけていたウィズナビの画面を確認すると、どうやらエルフォニアさんからのようです。


「はい、シルヴィです」


『こんにちはシルヴィ。今、大丈夫かしら』


「はい、大丈夫です。私もちょうど、エルフォニアさんとお話しできればと思っていたところでした」


『そう、ならちょうど良かったわ』


「エルフォニアから掛けて来るって珍しいわね」


『あら? シルヴィ以外にも揃っているのかしら』


「全員ではありませんが、レナさんとエミリが一緒です」


「エルフォニアさーん! こんにちは!」


「久しぶりね、エルフォニア」


『こんにちはエミリちゃん、今日も元気そうね』


「あたしには無いの!?」


『あなたは聞かなくてもいい歳でしょう? ……あぁ、もしかして寂しいのかしら』


「うざっ……」


『ふふ、毒を吐く元気があるのは伝わったわ』


 早々にからかわれてしまい、レナさんがぷくーっと頬を膨らませています。

 そんな彼女を笑いつつ、本題について聞いてみることにしました。


「ところで、エルフォニアさん。先にエルフォニアさんからの用件を伺ってもいいですか?」


『そうね。私からは、ネイヴァール家の年越しパーティにあなた達を招待してほしいと妹に頼まれたから、その代理連絡よ』


 やはりネイヴァール家も貴族である以上、パーティは開くのですね。

 そのパーティに領主であるミーシアさんから直々に招いていただけるのは、光栄なことだと思います。


「ありがとうございます。ですが、私の独断で決めていい内容ではありませんので、一度帰ってシリア様達に共有させていただいた後での返事でも良いでしょうか?」


『構わないわ。その代わり、明日までに返事をもらえるかしら』


「分かりました」


『それで、あなたの用件は?』


「え? あぁ、すみません。私の用件は、年末にお世話になった皆さんへ挨拶に回ろうと考えていたので、エルフォニアさんの予定が空いていればと思っていました」


『じゃあ、それは当日でいいわね。それにしても、お世話になった人にわざわざ挨拶して回るなんて……随分と面倒なことをしているのね』


「面倒だけど、あたしの国ではそれが礼儀なの」


『子どもなのにしっかりしてるじゃない』


「ぁんですってぇ!?」


「ねぇエルフォニアさん、わたしもパーティに行って良いの?」


『えぇ、もちろんよ。シルヴィと一緒に来ると良いわ、ミーシアも喜ぶだろうし』


「わぁい! お姉ちゃん、一緒に行こ!!」


「ふふ。まずはシリア様達に聞いてからですよエミリ。たぶん許可をいただけると思いますが」


 今からパーティが楽しみなエミリの頭を撫でて興奮を抑えさせつつ、ひとまず連絡を纏めることにします。


「では、出欠確認が出来次第連絡しますね。もし何か、持って行く必要があれば教えてください」


『別に何もいらないと思う――あぁ、ならポーションを持ってきてもらえるかしら。あの子、ネイヴァール領でも取り扱いたいって商人に突かれているみたいだから』


「分かりました。量はどうしましょう?」


『試供段階だから三十もあれば十分じゃないかしら』


「三十本ですね、用意しておきます」


『助かるわ。それじゃあ、また明日』


「はい、失礼します」


 通話を終えると、まだ機嫌を損ねているレナさんが腕組みをしながら悪態を吐きました。


「ホント嫌な性格してるわあいつ! あたし、あいつに挨拶しなくてもいい気がしてきた」


「まぁまぁ……。ですが、エルフォニアさんのおかげで色々と学べたのは事実ですし、彼女の助けがあって人間領で活動できた件もありますから」


「それは分かってるけど! あぁ~もう!」


「レナちゃんとエルフォニアさん、仲が悪いの?」


「いいとか悪いとかそう言うのじゃないのよ。何て言うの、根本的に相性が悪いって言えばいいのかしら。犬猿の仲って感じ」


「けん……?」


「あー、そっか。えっと、犬と猿はお互いに威嚇しあうくらい仲が悪いでしょ?」


「え? すっごく仲良しさんだよ? ね、お姉ちゃん?」


「私は書物でしか知識がありませんが、犬と猿の仲が悪いというのは聞いたことがありません」


「えぇ……?」


 困惑するレナさんに、私達の世界では犬と猿は非常に仲が良く、犬の背に乗って遊んでいることがある話や、中には言葉を話す犬と猿の魔獣で構成された部族があることなどを伝えながら、私達は一度家に帰るのでした。

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