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277話 魔女様は証拠を集める・前編

 食事を終えた私達は、早速一時間後の“魔女裁判”に向けて証拠を集めることにしました。

 ペア分けとしては、私とレオノーラ、シリア様とミオさん、ラティスさんとミナさんとなっていて、そこへレナさんとフローリア様、そして秘書の女性の三人ペアがひとつ出来上がっているという形です。


 何故ミオさんとミナさんが一緒では無いのか疑問に感じ、シリア様へこっそり尋ねてみたところ。


『少し気になることがあっての。万が一あ奴らが何らかの手段を使っておったのであれば、片方を絶対に逆らえない相手にすることで証拠の隠滅ができぬようにする、ということじゃ』


 と言う事らしく、シリア様としてはミオさん達に疑いを持っているようでした。

 私としてはあまり人を疑いたくは無いのですが、先程もミナさんが口走っていた「あの気弱そうな人」という外見の情報が気になりますし、一応念頭に置いておいても良いのかもしれません。


「それで? (わたくし)達はどこから探します?」


「そうですね……。あまり気乗りはしないのですが、商人の方を見てきてもいいでしょうか? シリア様が死体を調べてくださった結果、何らかの毒が体を回って死亡したとのことでしたので、口から毒となる物を食べてしまったのか、体外から打たれたのかで見え方が変わる気がしますので」


「構いませんわ。あぁ、もし気持ちが悪くなったら無理せず言ってくださいまし。多少の癒しの心得はありましてよ?」


「ありがとうございます、レオノーラ」


 彼女の配慮に感謝しつつ、意を決して商人の方の部屋へと足を踏み入れます。

 すると、先に調べに来ていたらしいミオさんとシリア様が私達に気が付き、こちらへ振り返りました。


『シルヴィ、お主は無理に死体を見なくとも良いのじゃぞ?』


「本当はあまり見たくは無いのですが、やはり自分で確認しないと分からないかと思いまして」


『そうか……。あまり無理はするでないぞ』


「お気遣いありがとうございます、シリア様」


『良い良い。して、何を調べに来たのじゃ?』


「シルヴィが“毒を口から摂取したのか打ち込まれたのかが知りたい”とのことですのよ」


『ほぅ? それならば妾が答えてやろう。こ奴の死因は、“何らかの形で毒を自身の口から摂取したことによる毒殺”じゃ』


「口から、ですか。となると、その毒となる物が一見分からない状態で無ければ、自分から食べたりしませんよね?」


「当然ですわ。進んで毒を体内に取り入れようとするなんて、余程の狂人ですわよ?」


 レオノーラの至極当然な言葉に頷きながら、頭の中でしっかりとメモします。

 続いて、少し気になっていたことを尋ねてみることにしました。


「ちなみになのですが、いつ頃亡くなったかとかは分かりますか?」


『妾は死体の専門職では無い故、正確な時間までは分からぬが……。死後に体が動かなくなると筋肉が凝縮し、置物のように固くなる現象があっての。それから察するに、恐らく最初に見つけた時点で四時間は経過しておったのでは無いか?』


「補足させていただきますと、シルヴィ様が今朝方にキッチンへお越しになった際の時刻は、六時半となっておりました」


「ということは、夜中の間に毒で死んでしまった。ということなのですね」


 その情報で、少なくとも夜中一緒に眠っていたはずのシリア様やレオノーラ、そしてミオさんとミナさんは候補から外していいと思いました。

 ですが、そう思っていたのは私だけであったらしく。


「そう言えば魔王様。昨晩お手洗いへと向かわれたのを記憶しておりましたが、その際に苦悶の声などはお聞きになってはおりませんでしたでしょうか」


「聞いていませんわ。まぁ壁越しだったというのもありますし、そもそもお花を摘みに行く場所が下の階ですから、何かあっても聞こえませんのよ?」


「左様でございましたか。失礼いたしました」


 そのやり取りを聞き、私の中での前提条件が崩れてしまいました。


「レオノーラは夜中、お手洗いに部屋を出て行っていたのですか?」


「えぇ。何度も言わせないでくださいまし」


「すみません……。もし覚えていれば、何時ぐらいだったか教えてくれませんか?」


 私の質問にレオノーラは、顎に指先を添えながら宙に視線を彷徨させます。


「何時、何時……。あまりはっきりとは覚えてませんわね。ミオ、何時か分かりまして?」


「はい。おおよそ深夜一時過ぎであったかと」


「だそうですわ」


 レオノーラが部屋を出て行ったのは、深夜一時過ぎ。

 そして、商人の方が亡くなったのは二時半頃。

 そうなると、あまり考えたくはありませんがレオノーラにも犯行が可能と言うことになってしまいます。


 私の表情から、嫌な予測が立ち始めていることを察したらしい彼女は、慌てて否定し始めます。


「わ、私は毒など盛ってませんのよ!? 疑わないでくださいませ!?」


『くふふ! お主に当時のアリバイが立証できねば、魔女裁判中も疑われることになるのぅ!』


「そんなこと言われても、ただお花を摘んで帰ってきただけでしてよ!? どう立証すればよろしいのですの!?」


 シリア様にからかわれ、慌てふためくレオノーラを見ながら、私は念のためこの情報も頭の中にメモしておくことにしました。

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