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265話 騎士団長は暇つぶしがしたい

 シリア様に不服そうにされながらも説明いただくと、どうやら彼女は旧知の中でも特に付き合いが長い大魔女の一人であるらしく、例の空間固定魔法を扱える例外の方のようでした。

 ラティスさんは【氷牢の魔女】と呼ばれているそうで、そんな大魔女が何故、全くベクトルの異なる騎士団の団長を――もとい、国の統治を行っているかと質問してみたところ。


「そろそろ研究する内容も尽きてしまいそうでしたし、ここらで国を治めてみるのもいいかと思いまして」


『そんな適当な理由で人間を振り回すな!!』


 と、シリア様も突っ込まざるを得ない、凄まじい理由で行動されていたようでした。

 ですが、彼女の手腕は誰もが認めるほどであるらしく、ラティスさんが騎士団長として就任してからかれこれ五十年ほどになるそうですが、国内の治安は安定し、外交問題もほぼほぼそつなくこなしているため、これまでのイースベリカ史上最高の環境が整っているとのことでした。


 それを聞いたシリア様が、魔女を辞めて(まつりごと)を専任すればいいだろうと口にすると。


「それは違います。あくまでも今の立場は、暇死にしないための娯楽に過ぎません」


 と、この国に生きている人が耳にしたら卒倒してしまいそうな返答がありました。

 流石のシリア様も開いた口が塞がらず、私共々呆れてしまっていた中、一人楽しそうなラティスさんはポンと手を打ちました。


「そうです! シリアもグランディア王国の政治に携わっていたのですよね? せっかくですし、私に色々教えてくださいませんか?」


『教えるも何も、今のイースベリカは歴代最高なのじゃろう? それならば何も教えることなぞ……』


「国を崩す時って、どこから崩せばより混沌に落とし込めるのでしょうか」


『今すぐ辞めろ貴様!! 未だに人を貶めて遊ぶ癖が治っておらんのか、ド阿呆め!!』


「ふふ、冗談ですよ。大事に育てた国を壊すはずないではありませんか」


『その発言を二千年前の貴様に聞かせてやれ! 逆境こそ燃え上がりますよね? なぞくだらん理由で防壁を破壊しおったのを、忘れたとは言わせんぞ!?』


「シリア、あなたが神になって二千年も経つのですよ? そんな昔の話を掘り返すなんて良くありません」


『なら初めから、不穏な冗談を口にするでないわ!!』


 ……この方は、どこまでが冗談でどこまでが本当のことを言っているのか、全く分からなくなりそうです。

 とにかく、シリア様ととても仲が良く、気心が知れている関係であると言うことだけは理解したので、そろそろ本題について尋ねてみることにしましょう。


「お楽しみのところすみません、ラティスさん。結局、私はお眼鏡に適ったのでしょうか」


「えぇ、もちろんです。私のアレを止めたのなんて、それこそシリアのアラドヴァルくらいですし。現代において最高峰の魔力を持ち、神力を操る人の子に花丸を贈りたいくらいです」


「そうでしたか。ありがとうございます」


 認めていただけたことに胸を撫でおろしていると、その返答に疑問を覚えたシリア様が問いただします。


『待てラティス。よもや貴様、ラーグルフを撃ったのか!?』


「厳密には撃つ前に阻止されてしまいましたが、概ね顕現させることはできましたよ。あんなに本気にさせられたのは久しぶりでしたから」


『馬鹿か貴様は! シルヴィ相手だったからこそ良いものの、あの威力じゃとイースベリカを吹き飛ばすことになったぞ!?』


「吹き飛んだら再建すれば良いではありませんか」


『ダメじゃこ奴! 頭の中身が死んでおる!!』


 シリア様がぜぇぜぇと荒い息を吐く隣で、その反応すら楽しんでいるラティスさんに、私は少し恐怖を感じてしまいました。

 事前に拘束用の魔力を籠められていて、シリア様から結界の応用を学べていたから使えた魔法でしたが、仮に発動を止められなかった時は、国ごと私を消し飛ばすつもりだったのでしょうか……。


 改めて始原の大魔女という次元の異なる存在に慄く私に、ラティスさんは柔らかく微笑みます。


万象を捕らえ(アーレスト・)る束縛の槍(ジ・オール)。本来発動するためには、対象に応じて印を刻む数の変動や相応の集中力、そして莫大な魔力が要求されますので、行使難易度は非常に高いものですが、とても良い精度のものでしたよ。花丸です」


 指で渦を描き、その周りに花びらを描いて見せる彼女の仕草が可愛らしく、私はつい微笑み返してしまいました。

 そんな私に、「ですが」とラティスさんが続けます。


「攻勢に出ないのは魔女としてダメです。カウンターに特化させる者も僅かにいることはいますが、必ずしもカウンターが取れる相手とは限りませんから、今後は攻勢に出るようにしましょうね」


『シルヴィは一生、攻勢に出ることはできん。こ奴には【制約】――いや、条件付きの【加護】が付与されておるからの』


「そうなのですか?」


 少し驚いたように尋ねるラティスさんに、私は頷きます。


「はい。幼い頃に【夢幻の女神】ソラリア様から【加護】をいただいたのですが、“悪意のある攻撃から身を護る代わりに、一切の攻撃行為が禁じられる”という条件が課せられています」


「それはまた、何とも不便な加護ですね……。何故そんな条件を飲んでまで加護を得ようとしたのです?」


「ええと、話すと長くなるのですが――」


 シリア様へちらりと視線を送り、話していいでしょうかと伺うと、シリア様は頷いて代わりに説明をしてくださいました。

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