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12話 ご先祖様は確かめる 【フローリア視点】

 大神様の膝にしな垂れかかりながらウトウトとしていると、シリアがこっちへ戻ってくる足音が聞こえた。

 薄っすらと瞳を開くと、一仕事を終えて一息吐きながら肩を回しているのが見える。


「存外時間を掛けすぎてしまったな……。よもや七十近くにも及ぶとは思わんぞ」


「お疲れ様です。時間としては、地上時間で八時間ほど経過しています」


「はちっ!?」


 大神様に労われつつ経過時間を告げられたシリアは、表情をぎょっとさせたかと思うとその顔を青ざめさせていく。


「いかん、制定に気を取られすぎて時間を忘れておった!! 大神様申し訳ございません、聞きたい件はまた後程お伺いに参ります!!」


「まぁそう慌てずに。空を見上げてみなさい」


「空?」


 シリアは視線を空に移し、じっと空を見つめながらしばらく逡巡すると。


「……そうか。手間を掛けさせたな、フローリア。礼を言うぞ」


「うふふ。シリアが集中すると時間を忘れるなんていつものことでしょ~? これでも付き合い長いんだから分かってたわよ」


「くふふ。礼は妾の秘蔵の酒で良いか?」


「全然おっけ~!」


 OKサインを出して見せると、それの意味は分からないけどなんとなく理解はしたシリアが、眉尻を下げながら苦笑した。そういう顔、ホントシルヴィちゃんとそっくりよね。

 血の繋がりって良いわね~とほっこりとしているところへ、大神様が実際の経過時間のネタばらしをした。


「フローリアの権能のおかげで、実際には三時間経ったか経っていないかというところです。夜会の時間まではあと一時間ほどはありますよ」


「ありがとうございます。では大神様、早速ですがいくつか質問をさせていただいても?」


「えぇ、構いませんよ」


 私の頭を撫でながら微笑む大神様に、シリアは表情を厳しくさせながら尋ね始める。


「では、まず始めに。大神様は、シルヴィが妾以外の神と契約をしていたことをご存じでしたか?」


「知っていましたよ」


「何故それを教えてくださらなかったのですか」


 シリアの問いに、大神様は平然と答えた。


「私がお前に教える理由が無いからです」


「なっ……」


 絶句するシリアに、大神様は続ける。


「私はこの世界を平定し、神々を束ねる神です。お前達が世界にどう干渉しようと構いませんが、他の神がどう動いているかを逐一報せる理由はありません」


「で、では、現世で妾とシルヴィの存在が消されていたことも……」


「えぇ、それも知っています。現人間領の王家では、お前の代わりにソラリアが崇められていることも知っています」


「大神様、私そのソラリアって子知らないんだけど」


「あの子を知っているのは、それこそ世界創造の初期に創った子達でしょう。お前達は知らないかもしれません」


 大神様は私の頭の上に置いていた手を離すと、マジックウィンドウを表示させる。そこには、黒い前髪がぱっつんに切り揃えられた、可愛らしい女の子の騎士みたいな子が映し出されている。

 表情はシルヴィちゃんみたいなおっとりとした感じだけど、赤い瞳がどこか悲しそうな色を浮かべているみたいに見えるわね。泣きほくろの効果かしら?


「これが【夢幻の女神】ソラリアです。かつては私達と共に、世界をより良くするために活動していたのですが、大昔に権能を使いすぎて世界を終わらせかけたため、神の座から追放する形を取らざるを得ませんでした」


「世界を終わらせるとは、また大層な……。そのような事は一女神に可能なのですか?」


「出来なくはない、と言ったところです。特に彼女の場合は、“願いを現実に反映させる”という権能を持っているので、世界を終わらせることも、創り変えることも、やろうと思えば出来なくは無いのです」


「大神様、なんでそんな強い力を渡しちゃったの?」


 私の疑問に、大神様か少し悲しそうに顔を伏せながら答える。


「……私が軽率だった、としか言いようがありません。あの頃は私もまだ経験が浅く、世界を良くしよう、人が住みやすいようにしようと懸命だったが故に、人の望みもある程度叶えられるようにしてしまっていたのです。その結果、創り出されたのがソラリアでした」


「人はどの時代でも、欲深く浅ましい生き物じゃが、管理する側からすればそれでも可愛がってやりたいという気持ちだったのじゃろうな……」


「お前の言う通りです。私はあらゆる天災や飢饉から人を護ろうとした結果、人が神に甘え、神がそれを許すようになり、とても自立できているとは言えない状況になってしまいました。そんな時、ソラリアがとある欲深い人間の願いを聞き入れようとした結果、世界が終りかけたのです」


「それで神の座から追放ってなっちゃったのね~。ソラリアちゃんだけが悪いって訳じゃなさそうだけど、世界を壊しかねないことしたから仕方ないわね」


「フローリア、お前が世界渡りをするのも十分世界を壊しかねない行為ですからね。気を付けるように」


「は~い☆」


「貴様の返事は分かっておるのか分かっておらんのか読みづらい……」


 シリアが頭を悩ませながらそう言い、話を切り替えるように大神様へ尋ねた。


「では大神様。そのソラリアなる者が人間領で力を振るっているということで間違いはないのでしょうか」


「そうですね。何故今になって表舞台に出てくるようになったのか、何故取り上げたはずの権能を使えているのかは私でも分かりかねますが、あの子がグランディア王家に干渉しているのは間違いないでしょう」


「大神様はソラリアちゃんを捕まえに行くの?」


「いいえ、それは私の役目ではありません。お前達を始め、現世に顕現している神々の仕事ですよ」


「えぇ~!? 私もやるの!?」


「当然です。特にお前は、神としての在り方の再確認中なのです。率先して動きなさい」


「はぁーい……」


 そうよね、昔から大神様は管理はするけど直接手出しはしないもんね。分かってはいたけどめんどくさいわね~。


 溜め息を吐きながら渋々了承すると、ふと思い出したようにシリアが再び大神様に尋ねる。


「そうじゃ、忘れるところで会った。大神様、シルヴィに魔法をお教えになられましたか? 何やら“過去を追体験させる魔法”とシルヴィは言っておりましたが」


「えぇ、教えましたよ。概ねその認識で間違ってはいませんが、正確には“展開した結界内で世界を創造し、自身の世界を反映させる魔法”です」


「世界を、創造……!? 妾ですら成し遂げられなかった物を、シルヴィは使えたのですか!?」


「えぇ。あの子はソラリアの加護を持っていることから、世界に干渉する力を微弱ながら備えているようでした。そこにお前の力が加わり、結界内という限定的な状況下であれば世界を創造できるようになりました。もっとも、絶望を知らないお前には一生できなくて当然でしたから気に病まないように」


「そう、ですか……。そうか、シルヴィは妾を超えてくれたか……」


 てっきり落ち込むかと思いきや、シリアはどこか嬉しそうに表情を緩ませた。


「ですが、それに伴ってあの子の魔力は、この世界で追従を許さないほど強力になっています。私が魔力を抑えるペンダントを渡してはいますが、神の力を己が物とし、覚醒したあの子を何者かが狙ってくる可能性も十分考えられます。お前達はシルヴィの傍を離れないようにしなさい」


「分かりました」


「は~い!」


 大神様は私達ににっこりと微笑むと、机の上に置いてあった砂時計を見ながら言う。


「さて、そろそろ遅延の権能も時間切れです。お前達は地上に戻りなさい」


「はーいっ。また遊びに来るわね、大神様!」


「教えていただきありがとうございました、大神様。妾達でシルヴィを護りつつ、ソラリアの件を調べていきます」


「任せましたよ」


 行きなさい、と体を起こされた私は、シリアの側に近寄り。


「ねぇシリア、戻る前にちょっといいかしら」


「なん――ふぉっ!?」


「ん~!! これよこれ! このおっぱいの感触! シルヴィちゃんも大きいけど、全然比べ物にならないずっしり感ともっちもちの肌! 帰る前に堪能させて~!!」


「は、離さんかこの色欲魔!! やめよ、揉むな揉むな!! なっ、そこはやめ――くぅっ!」


「あらぁ? 何々シリア、久々の本体で敏感になってるの?」


「~~~~っ!!! 殺す!!!」


「いたっ!! やだ冗談だって! 痛い痛い! ごめんねシリア~!!」

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