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0話 中間報告

今日はいつもどおり、幕間のお話を挟んでから本編を投稿します!

本編は21:22頃投稿予定です!お楽しみに!

【秋季一次報告書】


 〇人間領での活動における資金繰りについて

 ・魔術結社が活動拠点としていた「フェティルア」へ、森の魔女含む魔女グループ(後述)が来訪したことにより、資金調達源であったレヒティン伯爵(はくしゃく)家地下で交戦。

 ・これにより、レヒティン領の領主である「モンテギュー=レヒティン」が巻き込まれ死亡。そのため、「フェティルア」及びレヒティン領からの撤退を余儀なくされ、新たな資金調達方法が急務となる。


 〇魔女グループの来訪について

 ・先日入手した古代神話級生物「バジリスク」を「ハルディビッツ」から「フェティルア」へ輸送する際に、術式の更新を誤ったことから「バジリスク」が暴走。

 ・これを鎮圧するために、保険として街に配置しておいた広域焼却魔術「ペイン・オブ・フレイム」を起動。「バジリスク」の鎮圧と共に、「ハルディビッツ」に甚大な被害が発生。※別紙報告書参考

 ・上記をレヒティン領の領主である「モンテギュー=レヒティン」へ掛け合い、“新世界計画”の要となる“神の器”(後述)を一連の犯人として仕立て上げたことが原因と考えられる。


 〇魔女グループの勢力について

 ・今回交戦し、確認された魔女グループの面々は以下となる。

 ・“神の器”シルヴィ=グランディア

 ・“ネイヴァールの悪魔”エルフォニア=ネイヴァール

 ・“魔導連合の総長”トゥナ=アーデルハイト

 ・その他、召喚獣である“凶兆の大鷹(カースド・イーグル)”と“神代の末裔”の神狼種

 ・【(とき)の女神】フローリアと、前例のない謎の魔法を行使した魔女レナ

 ※何故女神が現世へ顕現しているかは不明。計画の妨げになる可能性が大きいため、追って調査を行う必要あり。

 ・【夢幻の女神】ソラリア様により創造された、現王家から選抜されている勇者一行


 〇現在の“神の器”について

 ・魔術五師の一人マリアンヌと交戦時に、神の加護と自身の魔力の融和を果たして覚醒。以降はマリアンヌと“神の器”の両名を遠視の魔術で捉えることができなくなり、しばらくした後にマリアンヌが死亡した状態で帰還。

 ・マリアンヌには“反逆の呪板”を持たせていたにも拘らず死亡したことから、神話級魔道具さえも遥かに上回る力であったと考えられる。

 ・その後、魔女グループと共に「バジリスク」を鎮圧及び捕獲し、魔導連合の長と勇者一行以外は一旦ネイヴァール領へと移動したとのこと。


 〇今後の方針について

 ・魔術五師の二人を失ってしまったため、当面は魔術結社側としては様子見とする。

 ・また、“神の器”を要とした“新世界計画”の進行に影響が生じているため、魔術結社と秘匿の魔術(オブリビオン)の会合を近々行うものとする。


 本報告書は、確認後速やかに破棄願う。



 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★



 月明りが細く差し込む部屋の中で、差し出された報告書に目を通していた妙齢の女性は、報告書を手の上で燃やすと、机の上に置いてあったティーカップを一口啜った。


 そんな女性を、傍で控えていた侍女が窘める。


「ご主人様。そのような振る舞いはあまりよろしくありません」


「良いではありませんか。たかが報告書ですよ?」


「報告書を燃やす燃やさないはご主人様の自由ではございますが、そのように燃やされてしまいますと、燃えカスの掃除をする手間が増えてしまいます」


 ご主人様と呼ばれた女性は、報告書を呼んでいる時も閉じたままであった瞳の目尻を柔らかく下げ、給仕に笑いかける。


「あぁ、それはごめんなさいね。貴女の手間を考えていませんでした」


 女性は部屋を後にしようと立ち上がり、扉へと向かいながら口を開く。


「今日は少し気分が良いので、先に寝ますね。燃えカスの件は覚えておきます」


「はい。おやすみなさいませ、ご主人様」


 背中に侍女からの深い一礼を受けながら、女性は部屋の扉を後ろ手で閉める。

 そして、窓越しに見える夜空を見上げながら、独り微笑んだ。


「“神の器”シルヴィ=グランディア……。あぁ、貴女を手に入れられる日がとても待ち遠しいです。ですが今はどうか、もっと、もっと力を付けて熟してください。その実が熟れ、食べ頃となった時に――。私達秘匿の魔術(オブリビオン)が、必ず迎えに行きましょう。その時が新世界の幕開けとなるのです。ふふ、ふふふふ……」


 彼女は月明りに照らされている、赤み混じりの艶やかな黒髪を後ろへと払うと、目先に控えているイベントに思いを馳せて呟く。


「まずは、王家からの招待に応じなくてはなりませんね。そのついでに、ご挨拶だけは交わしておいても良いでしょう。いずれ貴女の所有主となる主人のことを、しっかりと記憶に焼き付けていただかなくては」


 妖艶に歪んだ笑みを浮かべ、細く瞳が開かれる。

 その瞳は薔薇のように紅く、怪しく輝いていた――。

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