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28話 魔女様は海へ行く(2日目)

「最っ高ぉぉぉぉぉぉぉ~!!」


「気持ちいい~!!」


 海面から勢いよく飛び出してきたのは、イルカの背に乗っていたレナさんとペルラさんでした。水しぶきを散らしながら弾けんばかりの笑顔を浮かべる彼女達を、私はウィズナビを構えて写真に収めます。


 今日はエルフォニアさんの提案で、“ドルフィンスイミング”というものを楽しむことになっています。何故ドルフィンスイミングかと言いますと――。


「シリア様。これに興味があるのだけど、明日の予定が無いならどうかしら」


『む? 妾は別に構わんが』


「珍しいわね~、エルフォニアちゃんが何かしたいって言うの」


「そうかしら。私はシリア様に楽しそうなことでも探すといい、って言われたから適当に探しただけよ」


「ふーん……って、あんたそれ昨日読んでたやつじゃない! こんなとこでも魔導書読むとか無いわーとか思ってたけど、思いっきりガイドブックじゃん! 滅茶苦茶楽しみにしてたんじゃない!」


「海なんてそうそう行かないもの。あなたと違って忙しいのよ」


「ぁんですってええええええ!?」


 という事が夕飯の後にあり、エルフォニアさんの意見が採用されたという流れです。


 昨日の宴会の席でも何だかんだ楽しそうにしていましたし、彼女らしいやり方で羽を伸ばして楽しんでいるのでしょうかと思い出し笑いをしていたところへ、レナさん達と交代してドルフィンスイミングを楽しんでいたらしいレオノーラの声が響いて来ました。


「シールヴィー!! 撮ってくださいませー!!」


「はーい!」


 声の方へウィズナビを向けると、こちらへ向けて手を振りながら海面をかなりの速度で進むレオノーラと、やや不安定ながらも楽しんでいる様子のスピカさんに続いて、表情が固まっているエルフォニアさんがいました。

 イルカの背ビレにがっちりと捕まり、一切表情を微動だにしない彼女はいつも通りにも見えますが、よく見ると口の端が引きつっているのが分かります。


 そんな彼女の様子を知る由もないイルカは、レオノーラ達が乗っているイルカと共に海中へ潜り、勢いよくハイジャンプを繰り出します。

 何とか写真に収めた三人の姿は、気持ちよさそうに笑顔を浮かべるレオノーラ達と、先ほどよりもやや低姿勢になりイルカにしがみついているエルフォニアさんが移っていました。


 流石のエルフォニアさんでも怖いものはあったのですねと笑っている私へ、いつの間にか足元に近寄っていたシリア様が声を掛けました。


『面白い絵でも撮れたかの?』


「はい。こちらです」


『どれどれ……。くははっ! 良い顔をしておるなエルフォニア! 顔が引きつるほど怖いか!』


「結構な速さでしたし、初めてとも仰っていたので無理もないかと」


『くふっ、いやぁ良い良い。あ奴のこの顔を見れただけでも十分じゃな!』


 満足そうに笑い続けるシリア様を微笑ましく見ている私の体に、突然背後から誰かに抱き付かれた感触が襲いました。

 押し付けられた柔らかな感触と、ほんのりと香る甘い香り。振り返るまでもなくフローリア様です。


「シルヴィちゃ~ん! 一緒に乗りましょ~!!」


「え、でも私は写真を……」


「あたしが撮ってあげるから行ってきなって」


「あ~、さてはシルヴィちゃん……怖くなっちゃったんでしょ?」


 図星を突かれ、思わず背筋が伸びてしまいます。あのエルフォニアさんですら表情が強張るのですから、それはもう怖いものに決まっています!


 そんな私の様子で察してしまったらしいレナさんは、私の手からパッとウィズナビを奪い取り、フローリア様が私を腰に抱きかかえました。


「えっ、あの、フローリア様?」


「何事も経験よ~シルヴィちゃん! それに、乗ってみたら案外気持ちいかもしれないわよ~?」


「いってらっしゃーい!」


「楽しかったよシルヴィちゃん! 頑張れー!」


「お姉ちゃん頑張れー!」


 無邪気に応援してくれるエミリとペルラさんの声を受けながら、どんどんイルカの方へと連れていかれてしまいます。

 ならばシリア様に助けを求めようと視線を向けるも。


『くふふ! ほれ、なかなか無い機会じゃ。しっかりと楽しんでくるがよい!』


「はぁい! 一名様、ご案内~♪」


「シリア様ああああああああ!」


 無情にも見捨てられ、フローリア様によってイルカの背に乗せられてしまい、その後は言うまでもありませんでした。


「早いです! わぷっ、落ち――きゃああああああああ!?」


「あっははははは!! ほらほらシルヴィちゃん! ピースピース!」


「む、むむむ無理ですってえええええ!!」


 私の反応が楽しかったらしいイルカに振り回され続け、終わった頃にはぐったりと疲れ切ってしまうのでした。

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