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16話 ご先祖様は認めてもらえない

『皆の者、今まで黙っていてすまぬ! 妾はシリア。シルヴィの魔女の師匠なのじゃ!』


 堂々と嘘の宣言をなさるシリア様。私はドキドキしながら周囲の反応を伺います。

 今の今まで姿を見せず話にも出さなかった私の師匠だという話を、そう簡単に信じてもらえるとは――。


「可愛いー!! 聞いた? にゃあ~んだって! きゃー!!」


「魔女様の飼い猫!? 触ってもいい!?」


 あ、あれ? もしかして、普通の猫としてしか見られてないのでしょうか……?

 シリア様も困惑しているようで、再び皆さんに宣言をし始めます。


『妾は猫ではない! シルヴィの師匠で――』


「猫ちゃーん、果物食べる? その代わりに触らせてー!」


『……』


 どうやら、シリア様が喋っている内容は他の方には猫が鳴いているようにしか聞こえていないようです。しかし、スピカさんには普通に聞こえているようで、周囲の反応に困惑しながら私を見てきました。


 私はスピカさんへ近寄り、耳元でお願いします。


「すみませんスピカさん。あとでお話ししますので、この場は私に合わせていただけませんでしょうか」


「あ、あぁ。よく分からないが分かった……」


 スピカさんも一旦は話に合わせていただけることになり一安心していると、獣人の方から質問が飛びました。


「あの魔女様の猫ちゃんは、今までどうしてたんすか? 村の中じゃ全く見ませんでしたが」


「えっと……とある事情で猫の姿をしていますが、実は私のお師匠様なのです。名前はシリアと言います。今までは森の中に猫を見かけなかったので、もしかしたらここら辺じゃ生息していないのかと思い、部屋の中でこっそりと過ごして頂いてまして。今日一日は私と交代したいという希望で、私の体を使っていただいていました」


「あぁ、じゃあ朝凄い勢いで食べてたのはいつもの魔女様ではなく猫のお師匠さんだったんすね! 魔女様めっちゃ食べるなってみんな驚いてたんでびっくりしましたよ!」


『す、すまぬ。久しぶりの食事で楽しくなってしまっての……』


 照れくさそうに言うシリア様ですが、やはり猫が鳴いているとしか聞こえていなかったようで、ハイエルフの方々がきゃあきゃあと騒いでいました。獣人の方も「これからは猫のお師匠さんの分も用意しますわ!」と笑い飛ばしていました。

 それに続くように、今度はハイエルフの方から質問が寄せられます。


「はいはーい! じゃあもしかして、今日私達を診てくれていたのもシリアちゃん?」


「はい。今日一日だけ変わる予定でしたので、治療の方もシリア様にお願いしていました」


「そうなんだ! 魔女様一人だーって聞いたから大変そうって思ってたけど、シリアちゃんも治療できるなら安心だね!」


「そうねー。この前みんなを治してもらった時、魔女様へとへとになってたものね」


「す、すみません……」


「謝んないでよー、みんな感謝してるんだから!」


 そう笑いあうハイエルフの方に、私も苦笑交じりに笑って見せます。

 どうやら、何とか乗り切れたような気がします。猫が魔女の師匠だなんて話は無理があると思いましたが、皆さん深く詮索されない方々で助かりました。それとも、魔女だからと言うことでしょうか。どちらにせよ、ありがたい限りです。


 ひとしきり質問や談笑が終わった頃、スピカさんが咳払いをひとつして口を開きました。


「それで、魔女殿とその師匠についてだが。今後は二人揃って生活したいという相談を受けていたのだ。皆、異論はないな?」


「もちろんですよ! 魔女様の家族なら俺達は大歓迎です!」


「私達も全然いいわよねー。魔女様は可愛いし、猫ちゃんはもっと可愛いし♪」


「ええ。可愛いのも大事だけど、魔女様の負担が分け合えるなら、診て頂ける私達としても嬉しい限りだわ」


「皆さん……。ありがとうございます!」


『礼を言うぞ。シルヴィ共々、よろしく頼む』


 二人で揃って頭を下げると、「見てみて! 猫ちゃんが魔女様と頭下げてる!! お利口さんだわー!」と言われてしまいました。

 スピカさんも笑っていましたが、話を進めるために他の方へ尋ねます。


「それでだいぶ脱線してしまったが、お前達は魔女殿に診てもらうために来たのではなかったか?」


「そうだ、魔女様ショックで忘れてました! 思い出したら痛くなってきた……」


「す、すみません! すぐに診ますのでこちらへ!」


「シルヴィ殿、すまないが診てやっていただけるだろうか。その間にシリア殿と話をしてくる」


「はい、分かりました。こちらはお任せください」


「え、長って猫語分かるの!?」


「まぁな。実際に魔女様のお師匠様みたいだから、あまり失礼の無いようにしろよ?」


「はーい! あ、でも今度触らせてねシリアちゃん!」


『断るッ! とりあえず上に行っておるぞシルヴィ』


「分かりました」


 こうして、私達は晴れて二人揃って村に受け入れて頂けることになりました。

 シリア様とスピカさんが二階へ上がっていくのを見送りましたし、そろそろ治療を始めることにしましょう。

偉大なご先祖様ですが、魔力を持たない種族からは

ただの猫としか見てもらえないようです。

今後は猫として村に溶け込んでいくことになりますが、

それが原因でトラブルが起きることも……?


次回更新は明日のお昼頃です!お楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[良い点] シリア様が満足そうで微笑ましかったし、それを見てるシルヴィの反応が可愛かったです。2人とも感情が豊かで読んでると楽しくなります! [気になる点] 冒頭部分のシルヴィの思考?の双子の姉設定っ…
2021/12/15 11:24 ディオネリア
[良い点] 喋る化け猫にはならなかったw
[良い点] ネコチャン!!!! にゃーにゃー鳴くネコチャンかわいいwww イケ美女スピカさん好き( *´艸`)♡ ハイエルフたちは陽気で可愛いですな〜♡
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