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18話 異世界人達は捜索する 【レナ視点】

時間は少し巻き戻り、シルヴィが攫われた当日。

拘束されていたレナ達に視点は移動します。

 シルヴィが家を飛び出してから数時間後。シリアの助言を受けながらエルフォニアが進めた拘束解除のおかげで、あたし達は拘束から抜け出すことが出来た。

 やられて初めて分かったけど、あの魔法って本当に身動きもロクにできなくなるくらい制限してくるのね……。あれで未完成って言うんだから末恐ろしいわ。


 拘束を解いてもらえたシリアが、全身を震わせながらあたし達に鋭く指示を飛ばしてきた。


『早くシルヴィを探しに行くぞ! エミリの奴も後を追ってしまっておる、何かあってからでは間に合わん! レナはフローリアと共に、獣人の村の方を探すのじゃ! 妾はエルフォニアと川向うを探す!』


「分かったわ!」


 一斉に家を飛び出して、エミリとシルヴィの捜索が始まった。

 あたし達は言われた通りに、まずは獣人の村へ向かって聞き込みをしてみることにする。


「ねぇ村長さん!」


「む? おぉ、レナ様ではありませんか。どうかなさいましたかな?」


「こっちにシルヴィかエミリ、来てなかった?」


「魔女様とエミリですか? 私は見ていませんが……。おーい、誰か! 今日、村の方に魔女様かエミリの姿を見た者はおらんか!」


「いやー、俺は見てないっすね。お前は?」


「見てないなぁ。魔女様の顔を見たらその日は幸せな気分になれるんだが、今日は普通だ」


「そんな話聞いてねぇよ。またカミさんに怒られるぞ?」


「はっはっは! 今は内職中だから聞かれるはずがな――」


「悪かったわねぇ……歳を重ねて見劣りするようになって」


「お、おまっ、なんでここに――ぎゃああああああああ!!」


 ……また夫婦間での狩りが始まっちゃった。これ以上聞けなさそうかな。

 あたしは村長さんにお礼を言って、後ろであくびをしていたマイペース女神の腕を引いて、ハイエルフの集落へと向かう。


 途中でバテたフローリアをおぶりながら走ったせいで、ちょっと上がり気味な呼吸を整えていると、あたしを見つけたスピカが駆け寄ってきた。


「そんなに息を切らせて、どうしたのだレナ殿? 何か急ぎの用か?」


「はぁっ……はっ……。こっちに、シルヴィかエミリ、来てなかった?」


「魔女殿と妹殿か? こっちには来ていないはずだが……。何かあったのか?」


「話すと長くなるんだけど、シルヴィを怒らせちゃって家出されちゃって」


「魔女殿が怒る!? 一体何があったのだ!?」


「ごめん、詳しく話してる時間は無いから他を当たらせて! もし見かけたら、何としてでも捕まえておいてくれると嬉しいわ!」


「あ、あぁ……。分かった」


「ほら立ってフローリア! それでも女神なの!?」


「ふえぇぇぇん……もう足が動かないのよレナちゃぁぁぁん……」


「もぉー!! こういう時に役立たずなんだから! ほら乗って! 次は森の中を探しに行くわよ!」


「まだ走るのぉ? きっとお夕飯には帰ってきてくれるってぇ……」


「この前それで帰ってこられなかったでしょうが! よっこらせっ、と……。それじゃあスピカ、よろしくねー!」


 早速他のハイエルフに話に行ってくれたスピカに手を振りながら駆け出し、ウィズナビでエルフォニアに連絡を取る。


「あ、エルフォニア? あたしあたし。村の方には来てないって!」


『そう。ちょうど今、私達も兎人族の酒場で聞き込みを終えたところよ。残念だけど、こっちにも来ていなかったらしいわ』


「どこ行っちゃったのよシルヴィ……。いや、シルヴィよりエミリの方が危ないわ。あの子は自分の身を守れる力も無いんだから……。分かった、それじゃあたし達はこのまま森の奥を探してみる!」


『えぇ。こっちもシリア様や兎人族の子達と探してみるわ』


 通話を切ってポケットにしまっていると、頭の後ろからフローリアが何かに気づいたような声を出した。


「あ、ねぇ見てレナちゃん。あそこ」


 フローリアが指差す先には、結構遠いけど何かが獣道の上に転がっている。

 何だろうあれ……。岩? でも足っぽいのもあるし魔獣なのかな。


 そのまま近づくと、それはメイナードよりも大きい亀の魔獣だと分かった。

 細長い尻尾が綺麗に切られていて、甲羅の頂点には剣が刺されたような刺し跡が深く残ってる。よく見れば、その亀の横の木にも突き刺さった跡があるし、誰かがこの亀と戦ったんだとは思う。


 でも、この森でこんな大きな剣を振るう人いたっけ……? 狩りをする獣人の人達でも、もっと小振りな剣だったはず。


「フローリア。この森に住んでる人で、あたしの知らない人っている?」


「ん~? いないと思う。そもそもこの森自体が危険な魔獣の棲み処になってるみたいだから、獣人とハイエルフ、あと兎人族くらいしか住んでなさそうね」


「そうよね……」


「何か気になるの?」


「ほら、森で狩りをしてる獣人も剣は持ってるけど、この亀の甲羅に突き立てられた傷ほど太くも大きくも無いじゃない? それってさ、もしかしたらあたし達が知らない誰かがここにいた。ってことじゃないのかなって」


「…………あぁ~! レナちゃん天才! 名探偵!」


「いや、これくらいは分かってよ……。とりあえず、何か無いか周辺を探してみましょ」


 誰かが潜んでいるかもしれないし、一応戦闘になっても大丈夫なように戦う準備だけはしておく。

 周囲を警戒しながら、この亀が通ってきたであろう跡を逆に辿ってみる。すると、村の獣人達が運搬に使っている荷車の残骸が散らばっている上に、木々が深く抉られている場所に出た。


 見た感じ、こっちはさっきの剣で付いたようなものじゃ無さそう。一瞬で三本ぐらい剣戟を飛ばす超人がいたら話は別かもしれないけど。


「レナちゃん。シルヴィちゃん達が初めてここに来た時に、獣人さん達を襲ってた熊と戦ったって言ってたじゃない? もしかしたら、ここはその熊が暴れてたんじゃないかしら?」


「あー、そう言われるとそれっぽいかも。熊の爪なら三本くらい傷が同時にできるだろうし、それかもしれないわね。ナイス名推理!」


 珍しく冴えてるフローリアにグッジョブと親指を立てると、嬉しそうに両手で返してきた。ホントに子どもっぽいんだから……。

 そんなフローリアに笑っていた時、すぐ近くからガサゴソと物音がした。音源は茂みの中だったような気がする。


 慎重に音のした方へ向かい、牽制のつもりで軽く風魔法をぶつけてみると――。


「ひゃああああ!?」


「え、エミリ!?」


 可愛い悲鳴と共に、勢いよく立ち上がったエミリが出てきた。

 あたしがぶつけた風魔法のせいで、髪がボサボサになっちゃっている……。なんかごめんね。


「よかったー……。エミリのことも探してたんだからね? で、なんでこんなとこに隠れてたの?」


「うっ、うわあぁぁぁぁぁん! レナちゃぁぁぁぁん!!」


 あたし達の姿を見て、エミリは突然抱き付きながら泣き出してしまった。


「な、何!? どうしたの!?」


「お姉ちゃんが、お姉ちゃんが連れて行かれちゃったぁぁぁぁ!!」


「はぁ!?」


 泣きじゃくるエミリからとんでもない情報を手に入れてしまったあたしは、フローリアと顔を見合わせることしかできなかった。

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