22話 魔女様は攫われる
思わぬところで魔王直下の四天王に遭遇してしまったシルヴィ。
彼は何かを探しにこの森へ訪れたようです。
その男性――クローダスさんは、私を捕らえていた尻尾を切り落とすと、自由になった私の手を取って起こしてくださいました。
魔族……それも、魔王様に仕えている四天王と聞き、私は思わず身構えてしまいます。すると、そんな私を見ながらクローダスさんは小さく笑いだしました。
「ふふふっ、警戒心の強いお嬢さんですね。ご安心を、あなたに危害を加えるつもりはありませんよ」
彼は胸に手を当てながら、柔らかな笑みを浮かべながら言葉を続けます。
「俺は、この森に住んでいるという魔女を探しています。森に住んでいるお嬢さんなら、魔女の居場所をご存じではありませんか?」
「魔女……と言いますと?」
「【慈愛の魔女】と呼ばれている、とても優秀な魔女です」
思わず自分の魔女名を呼ばれ、体がびくりと反応してしまいました。
それを見逃すほど彼は甘くはなく、追い打ちをかけるように続けます。
「やはりご存じでしたか。良ければ、俺を案内していただけませんか?」
クローダスさんはにこやかにしていますが、目が笑っていないように見えます。
まるで、黙っているならばどんな手を使ってでも情報を引きずり出すと言わんばかりの圧すら感じます。
嫌な汗が額を伝うのを感じながら、私は聞き返してみます。
「魔女様にご用事とのことですが、どのようなご用件なのでしょうか」
「お嬢さんは関係のない内容ですよ。魔族と魔女とのお話ですから、兎人族は知る必要はありません」
……彼の口ぶりから、恐らく魔王様からの呼び出しについての内容でしょう。
しかし、夕方にゲイルさんが家へ来るとのお話だったと思いますが、何故四天王の方が来るのでしょう。
私が話す気が無いと判断したらしいクローダスさんは、やれやれと嘆息しながら続けます。
「俺も手荒なことはしたくないんです。できればお嬢さんから教えてもらいたいんですが、どうしても教えたくないと言うのであれば……」
そこで一旦言葉を切ると、先ほどまで魔獣の甲羅に突き刺さっていた剣を私の首元に添えながら、背筋が冷えるような声色で言い放ちました。
「お嬢さんの体に聞くしかありません」
恐怖に竦みそうになるのを抑え、刺すような視線に耐えていると、私の首筋に彼の剣が触れます。
直後、クローダスさんの剣が突然大きく弾かれ、彼の手から剣が飛ばされました。
「なっ!?」
「えっ!?」
私にも何が起きたか分かっていませんが、それはクローダスさんも同じだったようで、木に突き刺さった剣を呆然と見ています。
剣が私に触れた途端、剣をはじくように何かの力が働いた……?
そこで私は、力の正体に気が付きました。
これは間違いなく、私の【制約】の効果です。脅しとは言え私を傷付けようとした剣を敵とみなし、効果が発動したのでしょう。
兎人族の姿で魔法が使えなくなっていたと思っていましたが、これは予想外の幸運です!
私は呆然としている彼に背を向け、一目散に森の中へ逃げ込みます。
「くっ、待ちなさい!!」
木々を縫うように走り、なんとか振り撒こうとするものの、相手は男性で魔族。すぐに追いつかれてしまい、首元を腕で抑えるように捕まってしまいました。
「けほっ、放してください!!」
チョーカーを外そうと手を伸ばしましたが、抵抗と思われ腕も掴まれてしまいました。
私にできるのは、体をばたつかせることだけです。
「俺の剣が弾かれたのは、お嬢さんで三回目ですよ。とんでもない力の持ち主がいたものです……」
「放して!!」
「【慈愛の魔女】についての情報も知りたいですが、一度魔王様にあなたのこともご報告しましょうか。一緒に来ていただきますよ」
彼がそう言うと同時に、彼が羽織っていたマントがひとりでに動き出し、私の体と視界を覆います。
何とか逃げないとと暴れようとしましたが、唐突に私を眠気が襲い、真っ暗な視界の中で意識が途絶えました。
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