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終話:桜花の願い、決めたこと


 時刻は現在、お昼の十二時ちょっと過ぎ。この時間帯になれば、大抵の人はお腹が空くことだろう。

 それは霽月館の司書たちも例外ではなく・・・・・


「うむ。やっぱりここのパスタは格別だな」

「ありがとうね恵ちゃん。いつも来てもらっちゃって」

「なになに。マユさんにはお世話になりっぱなしだからな。こういう時ぐらいは客としてこなければ」

「ふふ。ありがとう」


 楽しそうに話す眞由莉と恵。年は割と離れているのに、周りを漂う雰囲気が二人を同年代の仲良しな友達というのを感じさせる。


「なんかいいですね。こういうのって」

「・・・・・そうだな」

「あら、珍しい。あなたがそういう事を言うなんて」

「・・・・・別に。俺はただ口下手なだけだ。賑やかなのが嫌いなわけじゃない」


 くすくすと笑う冬実に黙々と食べ進める飛鳥。性格が全く正反対の二人だから、見ていてなんだか笑いがこみ上げてくる。


「・・・・・ぐー・・・・・ぐー・・・・・」


 一人だけ、椅子に座って寝ている俊瑛。「寝かせてあげてください」と眞由莉の要望のため一人放置されている。


「そういや、今日って本当は学校あるんだよな」

「そう言えばそうでしたね。なんかこうしていると忘れてしまいますよ」

「まあでも、こういうの好きだな。みんなで楽しくご飯食べるの」


 学生組である愁、桜花、雄真は一緒のテーブルで食べていた。時折、学校の話や霽月館での出来事を話しながらご飯を食べていた。







 話し合い、というより愁の告白が終わった後、傾れ込むように司書たちが入って来た。本人たちは否定しているものの、ドア付近でこっそりと聞いていたらしい。先程の会話を聞かれたのかと、愁と桜花の二人はいつにもなく顔を真っ赤にした。

 そんな時に恵が「お腹すいたからどっか食べに行こう」と言い出し、どこに行こうかと話し合った結果、愁の両親がいる「Esperant」になった。

 突然やって来たお客たちに二人は少なからず驚いたが、愁の表情を見ると穏やかに笑って素早く料理を作った。愁たち学生組は普通にパスタを。飛鳥と冬実はステーキ。そして恵はその両方(しかも大盛り)を頼み、賑やかな食事となっている。


「それにしても、やっぱり雄真くんがいたことは驚いたな〜。まさか! な人物だったからさ」

「僕も桜花さんが来たときはびっくりしましたよ」

「事が急だったからな。でも、まあよかった」

「? 珍しいですね。いつにもなく弱気じゃないですか」

「ん。いやさ、流石にあんな形になるとは思わなかったからな」


 そう言うと頬を掻きながら苦笑する愁。

 大人たちはそれぞれのやり取りをしていて、三人の会話を聞いていない。眞由莉と恵は時折笑いながら談笑を。飛鳥と冬実は静かに語り合い。そして俊瑛は爆睡中。ついさっき、あんなシリアスな話をしていた面子とは思えないほどだった。


「でも、無事に解決できてよかった――」

「まだ終わってないよ」


 雄真の言葉をかき消すように、桜花が言葉を挟む。


「終わってないって・・・・・何がです?」

「う〜ん。そりゃ、今まで黙ってたことだよね。どうしてもらおうかな〜」

「うっ・・・・・何を企んでるんだ?」

「ふふ~ん。実はもう決まってるんだ」

「・・・・・何だ?」





「私も、司書になりたいな」





「・・・・・はっ?」

「・・・・・へっ?」


 桜花の突然の宣言に、二人は何を言ったらいいのか、言葉を失う。


「だめ、かな」

「だっ、駄目ですよ、そんないきなり! 危ないです! 危険です!」

「でも、もう決めた。私も司書になりたい」

「いやっ、でもですね。って、愁さん! 愁さんからも何か言わないと!」

 

必死に反対する雄真。だが、今の桜花にはその言葉は届いていない。そんな桜花を説得しようと愁に援護射撃を頼むが、


「・・・・・別に、良いんじゃないか」

「えっ!?」


 絶対に反対すると思っていた愁が、何故か桜花の味方になってしまった。


「愁さん! それ本気ですか? 今まで巻き込まないようにしてきたのに、いまになってそんな――」

「今だからこそ、なのかも」


 愁の目は何処か虚空を見つめるように、二人のどちらにも向けられていない。


「へっ? それはどういう・・・・・」


 雄真が尋ねると、愁は至極真面目、と言った表情で、


「う〜ん。なんていうか・・・・・一緒にいられる時間が増えるから、かな」


 その表情にはふざけている感じなど微塵もなく、本気で言ったらしい。

 その言葉に、顔を真っ赤にする桜花と、目が点になっている雄真。

 何故そんな風になるのか、愁は全然分からなかった。


「・・・・・まあ、愁さんらしいですよね」


 諦めた、とでも言うように雄真が言う。


「そうだよ雄真くん。もう決めた事だからね」

「そうですね・・・・・。これからますます忙しくなりそうです」




 兎に角、今分かる事はただ一つ。




 これから、自分が関わるであろう非日常が、今よりもスケールアップするという事だけだった。


ようやっと一章が終わりました・・・・・このペースで出来たらいいのに、と思ってしまいます。

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