オメガバースに馴染めないオメガの独白
俺はオメガ。
好きなやつはアルファ。
俺たちは両思い。
だけど、あいつは俺を抱きたい。
俺もあいつを抱きたい。
もうどうしようもない。
抱かれるくらいなら死ぬ。
何度も説得された。
俺のようなオメガはたまにいるらしい。
よく知らないオメガとアルファの結婚した奴らに
最初は怖いけど大丈夫とか言われたりした。
そういうことじゃない。
精神病院にも連れて行かれた。
オメガ専門の心理内科や
催眠療法やら
リラックス療法やら
占いやら
何やらかにやら。
俺はどこにも解決されなかった問題として残った。
俺は俺でいるだけで問題となった。
好きだ。
でも、お前を抱きたいというこの想いに嘘をつくことは自分を裏切ることになるからできない。
あいつは俺の気持ちを無視することができない。
それは俺を好きだと言うあいつが自分を裏切ることになるからだ。
そばにいるだけでもいいと言えたら良かった。
それも嘘だ。
発情期に身を隠さなければいけない自分でお前のそばになんかいられるものか。
そばにいるだけでも俺は辛いのだ。
ああ、お前が生きていることが嬉しい。
そのことを知っているだけでいい。
幸せでもそうではなくても構わないので
生きていることをだけを知っていたい。
心の中に小さなお前が住んでいる。
真っ赤な顔で地団駄をふみ、俺を好きになれと叫んでいる。
そして幼い顔をしたお前はぽろぽろと泣く。
俺はお前の思い通りにしてやることができない。
どうして、どうしてとお前は俺を詰る。
ごめんな、ほんとにごめんな。
俺は四六時中お前に心の中で謝り
俺の心臓が止まる時までお前に謝り続けて死ぬことにする。
その後は、もう二度とお前には関わらないように神様に頼むつもりだ。
そんな俺を好きになったお前に甘えている今この時こそ、俺たちの愛の、あまりにもささやかに完成された形なのだと思っていいか。
お前のアルファとしての体面やらプライドやらをぶち壊してごめんな。
ごめんと思ってなくてごめんな。
こんな俺でごめんな。
でもお前も俺に抱かれるのだけは断ったろ。
俺たちはアルファでもオメガでもなく
男でも女でもなく
お前と俺でいられたら良かったんだ。