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【ここは魔法と剣の世界】 part3

ピンポーーン


いつもよりも早めの朝食を食べていると、玄関のチャイムが鳴る。


キョウカが約束通り迎えに来たらしい。


キエルは急いで残りを食べ切ると、鞄を持って玄関へ走る。


「おはよう」


「ハーイ!ちゃんと起きてたみたいだな」


「ふふ、キョウカちゃん寝癖ついてる」


元々癖毛な彼女だが、きょうは一段ともっさりしている。


彼女も朝は弱いのだろうか。



仲良く話しながら校門をくぐる。


早朝なだけあって、まだ他の生徒は居ないみたいだ。


「おー、お前ら早いな〜」


廊下で会ったジュンコ先生が声をかけてくる。


「「おはようございます」」


「おはようさん、二人してどうしたんだい?」


「昨日の授業の復習がしたくて。校庭使ってもいいですか?」


「いいけど、掃除したてだからあんまり汚すなよ?」


「いやいや〜、校庭を荒らすほどの魔法が出たら、逆に儲けもんですよ」


「ふっ、違いない。頑張れよ〜」


「はい」


やはり話のわかる先生で良かったと、二人で顔を見合わせて笑う。


「早く行こ!時間無くなっちゃう」


「行くぜー!」



芝の校庭は確かに綺麗になっていた。


昨日リンヌ先生が魔法の見本のために燃やしたところも元に戻っていた。これも魔法の力なのだろうか?


「じゃあ、キエル先生っ!ご指導よろしくぅ!」


「そんな、先生だなんて...昨日たまたま出来ただけだし」


「まぁまぁ、それでどんな感じなんだ?」


キエルは一生懸命に昨日感じたことを伝える。


マナの捉え方、魔力の湧き出る感じなどを感覚で伝える。


「ほうほう...やってみるわ」


「頑張って!」


「はあぁぁぁぁぁ!!」


「!」


キョウカの体が光のオーラに包まれる。マナと呼応している証拠だ。


しかしその光は昨日出来た一年生たちの中でも、圧倒的に巨大なものだった。


「はぁ、はぁ...、どうかな?」


「凄いよ!凄い魔力だったよ!これなら天才魔法使いになれるかもしれないよ!」


「え?な、なれるかなぁ」


「キョウカちゃんなら絶対なれるよ!」


「なんか、キエルがそう言うならそうなんだなって気がするぜ」


「うん!」



これで復習は終わりだ。魔力は全ての魔法の基礎となるので、躓かずに出来たのはかなりラッキーだった。


自慢げな二人は教室へと帰る。


「待って、キョウカちゃん」


「ん?」


しかし。


「なんか、あっちの方、変な感じじゃない?」


「変な感じ?」


キエルが南棟を指さし異変を訴える。見ても、何も変わった様子は無いようだ。


「どう、変なんだよ?」


「分からない。でも、なんか」


パリーーーーン!!


窓ガラスが割れる轟音と共に、南棟の窓から男性が落ちてくる。


彼は無抵抗に地面に激突する。その頭はぐしゃっと潰れ、どす黒い血が辺り一面に広がる。


「きゃぁぁ!!」


あまりの光景にキエルは崩れ落ち、キョウカも両手で口を抑えている。


割れた窓からは、数人の黒い影が見えた。彼らがこんなことをしたのか!?


「ダメだ、キエル、逃げよう。ここに居たら殺される」


「うぅ...キョウカ、ちゃん...」


「立って!きっと先生たちが何とかしてくれる!だからあたいたちは逃げるの!」


キョウカの肩に掴まり、何とか立ち上がる。


彼女の手も震えていた。


それはそうだ。こんなの、普通じゃない!


「校門は校舎の向こう側だ。何とか回避していこう」


「...うん」


二人は走る。学校から逃げ出すために。


耳をすませると、校舎からは明らかな戦闘の音が聞こえる。


人の悲鳴や打撃音が聞こえる度、キエルは泣きそうになる。


(嫌だ。こんなの嫌だ。私の楽しい学園生活はどこへ行ったの)


次々に窓が割れていく校舎を、何とか横を駆け抜ける。ガラスの破片を浴びながらもどうにか無事だった。


「もうすぐ校門が見えるはず。もう少しだ」


この角を曲がれば、出口だ。助かる。


「あっ!!」


「そんな...」


校門の前には、先程窓から見えた男たちと同じような人達が沢山立っていた。さらには、巨大な馬車のようなものが校門を完全に塞いでいた。これならすり抜けることも絶望的だ。


しかし二人が見たのはそれでは無い。


男たちに囲まれて、血まみれで倒れている人がいたのだ。


「ジュンコ先生...そんな!」


彼女の身体中には無数の剣が突き刺さっており、肉は完全にちぎれ、所々骨がむき出しになっていた。


涙と血液でぐちゃぐちゃになった顔は憎悪の表情で歪み切っていた。


「おぉうぅぅぅぅぅー」


あまりの光景に、キエルは思わず吐き出す。


頭が混乱でおかしくなりそうだ。これが悪夢なんかじゃないことは、彼女自身苦しい程わかっている。


残酷すぎる現実を見せられ、彼女の頭はおかしくなりそうだ。


「おい、あっちにガキがいるぜ」


「殺しとけ」


「しまった!」


どうやら気づかれてしまった。数人の男たちが剣を片手に向かってくる。


「キエル!逃げて!」


二人は慌てて逃げるが、間に合わない!男たちがどんどんと近づいてくる!


「うおぉぉぉ!!」


キョウカは急に立ち止まり振り返ると、男たちに立ち塞がる。


「キョウカちゃん!」


「お前は逃げろぉ!!」


近づくキエルをキョウカは突き飛ばす。


男たちはどんどん近づいてくる。


「お前言ってくれたよな?私ならいい魔法使いになれるって!なら今がそれを咲かせる時よ」


「キョウカぢゃん!!!!!!」


「逃げて生き延びろ。お前と友達になれて良かったぜ」


男たちの斬撃がキョウカに突き刺さる!しかし彼女は両手を広げたまま一歩も譲らない。


泣きじゃくりながらキエルは走る。親友の命を無駄にしないために。ただ泣きながら。


「本当は、一緒に卒業したかったね...」


男たちはキョウカを突き飛ばして追おうとするが、絶対にさせない。必死に男たちにしがみつく。


「これがあたい達の、最初で最期の友情の魔法だ!」


泣きながら。でも笑いながら。


「爆破魔法!バグバム!!!」


キョウカが金色の光に包まれる刹那、男たちを巻き込んで爆散する!


爆音と降ってくる血飛沫を背に、ただひたすらにキエルは走っていく。

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