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2-7 青い点の場所を探してみました

「ルーシー! どこだ!?」


 急にいなくなったルーシーの名を呼びながら、注意深く辺りを見回したが、彼女からの反応はないし、姿を見つけることもできなかった。


「戻ってみるか?」


 そう呟き、賢人は先ほど道を戻った。


「うおぁっ!?」

「きゃあっ!?」


 突然景色が変わり、あたりは鬱蒼とした森に包まれたので、賢人は思わず声を上げてしまう。

 その声に、ルーシーの驚いた声が返ってきた。


「ルーシー! いたのか、よかった……!」

「いたのか、じゃないわよ! 急にいなくなったりして、どうしたの!?」


 どうやらルーシーのほうでも賢人の姿を見失っていたらしい。


「どこかに隠れてたの? だとしても、ひと声かけてくれたっていいじゃない」


 あらためて賢人があたりを見回すと、そこは鬱蒼とした森で、姿を隠せそうな木々がそこら中に生えていた。

 たしかにこの景色の中で姿が見えなくなったとすれば、どこかの木陰に隠れたと思われても仕方がない。


「いや、それなんだけど、この先に変な広場があるんだよ」


 賢人は加護板を取り出し、〈マップ〉で青い点の位置を確認し、その方向を見た。


「広場? どこにもないと思うけど……」


 ルーシーの言うとおり、目の前には薄暗い森が広がるばかりである。


「でも、さっきは――」


 言いながら賢人が一歩踏み出すと、再び景色が変わり、広場が現われた。


「――って、またか!?」


 戸惑いつつ、賢人は前を向いたまま、元の位置に戻ってみる。

 やはりというべきか、景色が広場から森に戻った。


「……どうなってんだ?」


 そう呟いたあと、ふとルーシーのほうを見てみると、彼女はぽかんと口を開け、大きく目を見開いて賢人を見ていた。


「な……ケ、ケント、いま、フッて消えて……」

「え?」


 どうやらルーシーの目には、賢人が突然消えたように見えたらしい。

 先ほどと違って注意深く見ていたからこそ、賢人が広場に踏み込む瞬間を目にしたのだろう。


「なんだかよくわからないんだが、ここから先に進むとちょっと明るい広場に出るんだよ」

「ここから、先に……?」


 ルーシーは軽く首を傾げたあと、賢人の示す先を見た。

 少し怯えたような表情でじっとそちらを見た彼女は、口を引き結び、小さく頷いて一歩を踏み出す。


「……ん?」


 なにも、起こらなかった。

 ルーシーはただ、森のなかを一歩進んだだけで、賢人にもその姿は見えている。


「えっと……」


 不安げに尻尾をゆらゆらと揺らしながらも、ルーシーは2歩3歩と慎重に歩みを進めていく。

 しかし、彼女はただ森のなかを進み、賢人から少しずつ離れていくだけだった。


「ねぇ、広場なんてないけど?」


 振り返った彼女は、そう言って肩をすくめる。


「そんなはずは――」


 と、賢人が一歩踏み出すと、またも景色が広場に変わる。

 そして、さきほどまで数メートル先に見えていたルーシーの姿が、ふたたび見えなくなった。


「――どうなってんだよ」


 しばらくあたりを見回したあと、うしろにさがって景色を戻す。

 ルーシーが、こちらへ駆け寄ってきた。


「あなた、また、消えたわよ!」

「ああ、そうみたいだな……」


 たとえば、特定の人物だけが入れる領域といったものが、この世界には存在するのだろうか。


「〈マップ〉には、表示されてたんだけど……」


 〈マップ〉には、パーティーメンバーの位置も表示されるのだが、あの広場にいるあいだも賢人の位置を示す表示は消えなかったようだ。


「俺もよくわからないんだけど、この先に進むと突然景色が変わって、いままで見えていたもの……たとえばこのあたりの草木や、それから、ルーシーの姿が、見えなくなるんだよ」

「いったいなんなのかしらね……」


 どうやらルーシーには、こういったものの心当たりがないようだ。


「例えばさ、手をつないで入ってみるとか、どうだろう?」

「手を? そ、そうね。試してみましょう」


 少し照れたように返事をするルーシーの手を、賢人は握った。

 彼女の手は、少し汗ばんでいた。


「じゃあ、いくよ」


 と一歩踏み出すと、手から彼女の感触が消えた。

 念のため〈マップ〉を確認したところ、ルーシーを示す光点は、賢人の光点とほとんど重なる位置にあった。


「……だめみたいね」


 戻るなり、彼女は残念そうにそう言った。


「うーん、どうするかなぁ……」


 あらためて〈マップ〉を見る。

 ピンチアウトで表示倍率をあげてみると、青い点はいまいる場所より50メートルほど先のようだった。


「……なにも、見えないわね」


 賢人の〈マップ〉をのぞき込み、おおよその位置を把握したルーシーは、目をこらして点の示すあたりを見てみたが、どうやらなにも発見できなかったようだ。


「まずは、あたしが行ってみるよ」

「わかった。じゃあ俺はここで見ているよ」


 ルーシーが点の示すあたりを目指して歩き始めた。

 深い森ではあるが、50メートル先ならなんとか見失わずに済む。


「もう少し前……あー、ちょい左!」


 〈マップ〉の倍率を最大限に上げ、ルーシーの点と青い点とが重なるよう賢人は誘導した。


「だめー! なにもないわよー!」


 ひとしきりそのあたりを捜索したルーシーだったが、結局なにも発見できずに賢人のもとへ戻ってきた。


「俺が、行くしかないか……」


 互いの姿が見えなくなる、謎の広場。

 青い点が示すなにかは、やはりそちら側にあるようだった。

 

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