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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界に放り出されました……

作者: Roy

夢で見た状況を元にして、物語のプロローグ風に書いてみました。



 青く透き通る海。白く輝くような砂浜。

 空には雲ひとつなく、太陽の強い日差しが燦々と降り注いでいる……

 まるで海外のリゾート地かと思うような光景が360度、全方位に広がる中に影が3つ。


 その元は俺自身と、目の前にある手紙一枚。そして背後に建つ不自然な祠だ。


「……マジか……」


 手紙に書かれている内容をもう一度見直すが……


『やぁ! 神様だよ! 上島君がこの手紙を見ているなら、無事に地球から僕の世界に転生できたということだね。一瞬だったと思うけど、とりあえずお疲れ様。

 さて、君には転生前に説明した通り、これから僕の世界で生きてもらうわけだけど、そのためにやってもらいたいことがある。その島にある祠の地下にあるアーティファクトで、その貧弱な体を改造して強化することだ。分かりやすく言うとサイボーグになってくれ』


 手紙を破り捨てたくなるが、ぐっとこらえる。


『君にはよくあるチートの類は与えていないし、現状では体の構造も地球人のままにしてある。この世界には地球に存在しない危険な動植物。その島にも君にとっては未知の病原菌の類が沢山存在しているので、そのままの状態だと3日ともたずに死ぬことになるだろう。

 ちなみに君が今立っている島、というか浜辺は1日に数時間。干潮の時にのみ現れる浜辺なのでじきに沈む。そうなったらアーティファクトの祠も保全機能が働いて中に入れなくなるから、君は海の上に放り出されることになる。

 改造を受け入れて生き残るか、何らかの原因で死ぬか、決断は早くした方がいいよ!

 それじゃ頑張ってね!』


 ……やっぱり一言一句、読み間違っているところはなかった。


「これさぁ……実質的に選択肢ないだろうがーーッ!!!!!」


 怒りに任せて手紙を破り捨てる。

 紙吹雪になったそれが風に飛ばされていくのを見送り、重い足を祠へと向ける。


 ここに来る前……手紙の送り主であろう、神を自称する存在とは会っている。

 いい年をした大人にもかかわらず、少年のような話し方をする男だった。

 相手は一方的に俺を転生させると言い放った後に、能力を1つ与えるから選べと言った。


 しかし……

 剣術などの技術を選べば、“技術を与えてもその貧弱な体じゃ扱い切れないよ!”と却下。

 なら肉体の強化を選べば、“人体には限界があるから体だけじゃ無駄だよ!”と却下。

 魔法や特殊能力を選べば、“素質がないから使い物になるまでに死ぬよ!”と却下。

 用意された無数の候補が減り続け、選択肢が最後の1つになるとここに飛ばされた。

 最初から自由に選ばせる気はなかったんだろう。

 その“最後の1つ”が、手紙に書かれていたサイボーグ化を含む、“アーティファクト使用権限”なのだから。


 あいつが神かどうか、その真偽はわからないけれど……いきなりよく分からない島に放り出されたのは事実。


「このままじゃ死ぬ。死んだら終わりだ。だったら指示に従うしかない」


 納得は微塵もできていない。

 だけど、無駄に時間を消費すれば死ぬ可能性が高い。

 あいつが心変わりをして助けてくれる、などと期待はできない。

 だからとりあえずは指示に従うしかない。


 自分自身に言い聞かせながら、祠の入り口をくぐる。

 そこは浜辺から突き出した岩をくりぬいたような構造で、狭いし一見何もない。

 しかし祠の中心部には、マンホールのような入り口がある。


 外から入り込んだ砂を払うと、ほのかに青い光の線がマンホール全体に広がる。

 さらにその中心には人の手形を模した壁画風の絵が2つ浮かび上がる。


「ここに両手をかざせ、ってことだろうな……!!」


 その予測は正しかった。

 手形に自分の両手を重ねると、マンホールは自動的に2つに分かれて地下へのはしごが現れる。


『ヒューマンの来訪を確認――ようこそ。貴方を当施設のマスター候補として歓迎します。

 はしごを下って施設内へお入りください』


 聞こえてきた声に従って降りていくと、入り口が空気の抜けるような音と共に閉まる。

 しかし石に見えた壁そのものがぼんやりと光っているため足元は見える。

 さらにはしごの一番下には、ガラスのような透明な壁。

 その先は天井に照明器具がついた、明るい通路が伸びている。


『固有名称の登録をお願いします』

「……上島勝平」

『固有名称:ウエシマ カッペイ――登録完了。ゲートを開きます』

「……ここからどう行けばいいんだ?」


 ゲートの先はT字路だ。

 案内板のようなものもないし、どこに行けばいいかわからない。

 すると、


『案内開始。右にお進みください。突き当たりが強化改造室です』

「……さっきから誰なんだ?」

『質問を確認。私は当施設のサポートAIです。現在はマスター不在のため、当施設の管理を代行しています』

「ここは何なんだ?」

『回答します。ここは小型移動式水中拠点アーティファクト、“アパーム・ナパート”の内部です』


 アーティファクト……神を自称したあいつはこう話していた。


 “僕は科学が発達した世界が好きなんだ! 特に工場とかカッコいいよね! 僕の世界も地球みたいになってほしいんだけど、上手くいかなくてさ……せっかくアーティファクトとして完成品の状態で色々送り込んであげたのに、現地人は使い方がわからなくてほとんどゴミ扱いするんだよねー”


 と……


 そしてこの状況を見て思うことが1つ。


 人体改造(サイボーグ化)、水中拠点、AI。

 お前が好きなのは科学というよりSFじゃないか……?


「こんなオーバーテクノロジーじゃ地球人でも理解できねーよ!」

『発言の意図がわかりません』

「今のは独り言だよ……どこかに休める場所はないか?」

『質問を確認。ありません。現在のウエシマ様の権限では、強化改造室のみの使用が許可されています。それ以外の施設を利用するためには、強化改造室で肉体の改造を行った後、当施設の“マスター候補”から“正式なマスター”へと昇格していただく必要があります』

「……強化改造室のみ、ってことは、その処置を受けなきゃ何もできないってことか?」

『質問を確認。肯定します。現状では強化改造室を除き、ウエシマ様は当施設の設備を一切利用できません。ただしマスター候補であるウエシマ様に危害を加えることもありませんので、その場で座る、あるいは眠るなどの行為は可能です。

 しかしウエシマ様は地上の病原菌に感染した恐れがありますので、2日以内に何らかの発症する確立は99.7%とほぼ100%に近く、3日以内に死亡する確率は73.4%です。早期に処置を受けることを推奨します』


 だ、か、ら、


「それは選択肢がないのと同じだろうが……」

『肯定します』


 あるものは自分の体と衣服のみ。

 このままでは体すら失うかもしれない。

 行動の指針は用意されているが、信用できるわけがない。

 しかし従う以外に生き残る方法に見当がつかない……


 同じ事を何度も繰り返し考えながら、仕方なく歩みを進める。

 ……俺はこれからどうなるのだろうか……

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[一言] ウポツでーす。 気になる。
[気になる点] エネルギー源なんだろう? [一言] とても続きが気になります・・・
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