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たとえ異世界であろうとコンプレックスは直らない件  作者: 製造物
序章、異世界召喚された王國編
6/22

5、実力の差

第6話改稿終了でーす!

来週はきっと勇馬とアゲハのお話。

 キンキンキンカキーン!!


 響く剣の乱舞。

 俺が振るった剣は敵の剣に受け止められ、上に弾かれる。

 体に入るであろう一撃を想定し、後ろに下がる。

 すると下段に構えられていた剣は矛先を向け、俺を穿たんとする。

 狙われたのは心臓。

 これを俺は身体を捻り、蹴りで剣を弾く。

 同時に剣を横薙ぎする。

 だが剣はすぐに逸らされる。

 そしてそのまま剣が喉に迫る。


「…チェックメイト、ですね! ユーマ様」


「……これで、呼吸荒れ、ないと、か…体力怪物、です、か?」


 喉には剣を添えられたまま俺の剣の師匠、アルベルト・ウィリアムが笑った。

 もっとも剣の師匠、というには実戦形式すぎるが…


 アルベルトさんは騎士団団長だ。

 というか1話目で俺が男だと初めて気がついた人だ。

 金髪サラサラの人だ。

 そんな人がこんな所で居ていいのか!?とか思ったが『王都防衛の最終防壁』だからこそ、とのことだ。


 またこの世界では【剣士】や【闘士】の称号の持ち主どころか接近戦を主とする人間が少ないのだ。

 故に魔法を持たず剣技などの武術を主とする人間はアルベルトさんにとっては格好の餌。

 つまりはどちらも成長できるのでウィンウィンな関係だ。


 人柄は結構優しめで純粋。

 実力主義な考えであり、新たな視点を積極的に取り入れていく人だ。

 純粋に尊敬できる数少ない人間でもある。

 その中にイミスはいない。テメェはダメだ。


 基本的には文句の付け所もない完璧な人間だ。

 ただし…


「あとユーマ様。アゲハ×ユーマ様の進展はどうでしょうか?」


「…アルベルトさん。誰にそれを教えられました?」


「Ms.アイザカです。彼女の教えてくれる『ニホン』の文化は素晴らしいですので!」


「そう…ですか」


 最近俺のクラステイトの腐女子を好きになったらしく、彼女の腐った趣味を凄まじい勢いで吸収してしまっている。

 こんな時にも無垢な彼の思考が彼を不幸としたのだ。

 なんとも幸せそうなのでなんとも口出しできないのがなお口惜しい。


 愛坂 香(あいざか かおり)は【賢者】と呼ばれる特殊な称号の持ち主だ。

 愛坂が持つスキル【鑑定】は他人のステータスを勝手に覗いたり、スキルや称号の詳しい能力を知ることができる。

 俺のスキルなどの知識も大概が彼女から教えてもらったものだ。


 愛坂は周りからはオタクオタクと言われると同時に絡みづらい性格と言われているが俺はそうは思わない。

 むしろ使いやすいよなー、と思っている。


 だってアイツ写真渡せばすぐに言うこと聞くし。

 男と男が二人組で写ってるやつ見せたら速攻だし。

 なお仲よさそうにしてたらなおよしだし。


 なおその写真を教室で堂々と見ていたため孤立してしまったのだが…

 また男子たちは全員そのアルバムを見て、吐き気を覚えていたりするのだが…


 それと俺は関係ございません。

 そんなの俺知らない。

 愛坂の扱いが悪いだけ。

 使用方法によって物は良くもなるし悪くもなる。

 俺の使い方が良い例です。


 さて愛坂の話になってしまった。

 ここからはアルベルトさんを元に戻すように頑張ろーー


「むむっ!!? 新たなカップリングの気配が!!」


「なんかアルベルトさん、変なスキル目覚めてません!!?」


「正解です! 最近【直感】というスキルを覚えました! レベル10です!」


「何急に目覚めてんですか、アンタは!!!??」


 …本当にこれさえなければ尊敬できる人なのに。


 世の中の人間、何かしら残念なところがあるのだなぁとぼんやり感じた。

 ちなみに俺は気がつけばアルベルトさんに引きずられていた。


 …いや、俺行くって言ってないんでくけど?


 そう言う間もなく、俺を超えるFPを持って走った。

 …戦力不足?

 ここにバケモン一人いるけど?


 そう思わざるを得なかった。


 ..................................................


 そして今、俺は人生最大級にこの場から逃げたい! そう思っていた。


 俺とアルベルトさんは今スキル【隠密】を使っている。

 アルベルトさんは覗き見のためだが、俺は必要に駆られてのものである。

 できれば覗きたくなくて、先程説得したのだが…


『では覗き見するか死ぬか、どちらか二択を選びなさい』


 いや、なんでその二択になったのか。

 愛坂は一体この人をどうしたいのか。

 さっぱり謎であった。


 ただ命の危険であったので従わねばならず、こうして俺は最大レベルでスキル維持に集中している。


『条件を満たしました。【隠密】のスキルレベルが3に上がりました。』


 …おかげでぐんぐん成長している。

 できればこんなことで成長したくなかったなぁー。


 俺も一応下世話な精神は持ち合わせている。

 園田と蓮は正直付き合いそうな感じなのでそれは全力でニヤニヤしながらサポートすると決めている。


 しかし今回ばかりは話が違う。


「七海さん! 俺と付き合ってください!」


 こう言うことだ。


 なんだか幼馴染みの告白されるシーンを見るのはむず痒かったのだ。

 ここに来る前になんとなく嫌がったのも、これを直感で感じたからだろうか?


『条件を満たしました。【直感】を獲得しました。レベルは1です。』


 お前は来なくていい!!


 さて相手の方を見定めよう。


 相手はクラスメイトの北村 亮(きたむら りょう)

 オタクグループに入っている地味な男だ。

 称号は【炎創士】。

【火創士】の上位互換の称号だ。

 実力自体は勇者やアゲハ、愛坂には及ばないものの戦闘組の中ではそれなりに強め。


 性格的には楽観的で物事に対する責任感が軽い。

 それはこちらに来て思いっきり浮かれていたことからよくわかる。

 ただ俺もよくは話していないのでよくはわからない。

 が、以前から隠し事をできる性格ではなかったのであいつの恋心はよくわかっていた。


 個人的にはいい物件とはあまり思えない。

 アゲハはどう応えるのだろうか?


「ごめんなさい! あまりタイプじゃないです!」


「なっ!!?」


 アゲハ、断る。

 北村、絶句。


「カップリングの完成はなりませんでしたか…残念」


「静かにしてください…」


 ただ安心はした。

 アゲハが不良物件に引っかからなくて良かった。

 アイツに対しては親心が割と芽生えるんだよな。


 すると北村が瞠目しながら喚く。


「俺なら問題ないだろ!? 強いし、お前のためならいくらでも金だって…」


「そういうのはいらないです」


「で、でも! お前の周りにいる奴らなんざただの雑魚だ! それよりも俺の隣にいたほうがーーー」


「黙って」


「「ーーーーーッ!!?」」


「…ほう。素晴らしいですね」


 風が吹いた。


 アゲハを中心とするように渦巻く災禍。

 敵を飲み込まんとするそれは明らかな怒気をのせている。

 おそらくは魔力によるものだろう。

 俺自身も体を震わせた。


 アルベルトさんだけは平然としていた。

 しかし声は笑っていても、目はしっかりとアゲハを捉えていた。

 アゲハを強者として捉えた証拠だろう。


 怒気に身体を震わせ続ける北村にアゲハはそっと近く。


「いい? 今回はこの程度で許してあげる。でも…もし勇馬くんたちのこと、また馬鹿にしたなら…」


「ひっ!!」


 アゲハの元に集う五色の光と数体もの怪物。

 アゲハが使役する精霊と魔獣だ。

 全てが北村に殺意を向けているのだろう。

 北村の腰は砕けてしまった。


「容赦はしない、よ?」


「は、はいぃ……」


 北村にもはや吠える体力は残っていなかった。

 返事にさえもそこに先ほどまでの威勢はなく、弱々しい光が瞳にほのかに映っている。


 アゲハの周りから精霊や魔獣が消える。


「さよなら。できることならそんなこと言って欲しくなかったよ」


 アゲハが北村に背を向けてその場から退散する。


 俺は、その姿を呆然と見ることしかできなかった。


 俺は…弱い。


 それを改めて認識した瞬間だった。

ちなみに前作ではこの序章で出て来ていたキャラも後々出てくる予定です。

木暮とか…

木暮とか木暮とか

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