16、死にかけたが天国
相当遅れましたー!
ーー背中が冷たい。
まるでドッキリで氷水をぶっかけられたような感覚だ。
俺は冷静にそんな感想を抱いた。
目を開けると空が広がっていた。
ここでようやく俺は今まで寝ていたことを自覚する。
今まで寝なさすぎて寝る感覚をすっかり忘れていたことも要因に数えられる。
最近も訓練に時間を割きすぎたのと魔獣に警戒していたのもあって寝れなかったし。
寝ていた時間、よく死ななかったなー。
体幹を使って俺は起き上がる。
というか水底に足をつけた。
どうやら俺は今の今まで水に浮かびながら寝ていたらしい。
水は腰のあたりまで及んでいた。
体に神経を移すと全身が体の芯から冷えていた。
何時間もずっと水の中にいたのだ。
仕方がないだろう。
ここでようやく気絶する前の記憶を取り戻した。
確か俺はイタチによって谷底に落とされた後、滝に飲み込まれた。
そこで記憶が途絶えているが、恐らくは落ち切る寸前で滝がクッションがわりにでもなったのだろう。
運が良かった、そうとしか言えない。
とりあえず見つけたらあのイタチは殺そう。
生きたまま生皮を剥いで、麻酔も打たずに急所を突き刺してくれよう。
ついでに胃袋ひらけてパンが残ってるか確認…
というかアイツどこにパン持ってたの?
もしかして【アイテムボックス】持ち?
モンスターが?
…ないわーーーー。
いや、ないわー。
そんなの余程のモンスターよりも数十倍ウザいわー。
さて、イタチのことは放っておいて再び状況確認に急ぐとする。
まず大変なのが深刻なHPとSPの貧困問題だ。
勿論HPにも回復する手段はある。
その一つが回復作用のある植物を食べること。
【万能味覚】曰く、調合した方がいいらしいがそんな余裕はありはしない。
バクバクとアイテムボックスの中にある植物を全て食らう。
これのおかげでHPは半分ほどまで回復を果たした。
しかし問題はSPだ。
SPの回復には食べ物を満腹になるまで食べるという手段がポピュラーだ。
ただ植物だとその回復量は少ない。
この世界、割とカロリーが高いものを食べないとSPが回復しないので困るんです。
ここがポイント。
先程やられたように俺は今、パンがない。
これは俺が持っていた炭水化物の全てだ。
しかも肉に関してもこんな水の中、ただえさえ付かない火が起こせるとは思えない。
つまり食べられるのは…
「ビタミンだけですね。分かります」
最悪カロテンも取れますね。分かります。
もはやこうなればやけ食いだ。
俺は片っ端から野菜類を食らっていく。
周りにもはや気はかけず。
満腹になるために食らう。
ちなみにHPが無くなったら死亡だが、SPが無くなったらしばらく動けなくなる。
そして2日間が立つとそのまま死ぬらしい。
その間に誰かにご飯を恵んでいただければ助かる。
だがこんな森の中で助けが来るとも思えない。
せいぜいモンスターが足元に来て、そのまま腹一杯喰らわれるのが関の山だ。
それだけは全力で避けたい。
邪神の前であんなことを抜かした以上、それはよしたい。
そんな訳で一生懸命食らう。
マジであのイタチ覚えとけーーー!!!
..................................................
さて、ここは谷の底。
すなわち渓谷です。
俺は全身が濡れている上によりにもよって外気が寒い。
風も強く、体力は相当奪われていく。
『条件を満たしました。【持久】のスキルレベルが5に上がります』
この中でスキルレベル上昇は非常にありがたい。
これがなければまずSPが先に尽きるだろうから。
ちなみにこのスキル、名前から分かるようにSPの減少速度を下げる効果がある。
要は走れる時間が伸びるということだ。
速度には自信があるものの正直に言うと持久戦ならば結構苦手だ。
それは前回の狼戦から分かることだ。
あの狼、マジヤバイ。
こうして体半分が水に沈んだまま進んでいくと、陸地が見えた。
その先には洞窟の入り口が見える。
物騒にもその入り口が魔獣の顎門に見えたのは勘違いであってほしいものだ。
不穏な予感がするものの俺は陸地に上がった。
水のフィールドでは隙が多くできる。
何よりも俺の1番の武器であるSPが奪われる。
そのためにも水辺から逃れると言うのは的確な判断だっただろう。
今まで敵とも会っていないと言うのもまた好都合。
恐らくは今の状態で敵が出て来てしまえば、簡単に死ぬ。
服が重しにもなるし、ね。
ともかく俺は横にある壁を蹴り、陸地に上がる。
陸地は水面から割と高い位置にある。
これだけ高ければ氾濫などが起きても心配は要らないだろう。
『条件を満たしました。称号【泳ぐ者】を獲得しました。それに従いスキル【水泳】、【水の心得】を獲得しました。スキルレベルは1です。』
…それは水から上がる前に欲しかった。
空気を読んでください、天の声さん。
嘆きながら服装を変更。
フードにチェンジです。
その下は制服に。
ただし男人類最後の障壁は変えがないため死守だ。
濡れていて気持ち悪いが仕方があるまい。
さて、わざわざ陸地まで来たが正直に言う所早くここを逃れたい感じがある。
その理由は至極単純。
「木の実ねーじゃん!!」
炭水化物代表、パン
タンパク質代表、肉
この二つを食べられるのが封じられた今、俺は植物しか食べるものがない。
しかしここはどうだろうか。
→川
→岸壁
→如何にも苔しか生えてなさそうな洞窟
選択肢はこれしかない。
いや苔って食べられるらしいけど熱湯処理が必要なんです。
皆さんは火が手に入れられてから苔を召し上がってください。
現実逃避はどうでもいいがマジで木の実は生命線。
木の実に関してはすすいで【万能味覚】で食べられるか確認して食べる。
この方法一択で済むので楽なんですね、はい。
ちなみにアイテムボックス内にある食物はあと三日程度しか持たない。
まあ先程死にそうだったから仕方がないが。
ところでどうやって登ろう?
この岸壁を登るにしてもあくまでさっきは運が良かっただけ。
次、高所から落ちたら生きている自信がない。
というか死ぬわ。
死に方、無様に落ちて死亡とかロキのクソ野郎に笑われるわ。
それだけは避けねばならない。
ーーポチャーン
ギュイン!!
俺の頭が九十度横に回転!
今のは川からだ!
川からだった!
【並列思考】、【天眼】、【千里眼】オーンッ!!
今の音の正体を探し当てるのだ!!
すると川から飛沫が上がる。
それは俺からすれば思考の範疇から出て行っていた生物だった。
ただただ勇馬さんが肥えただけのお話。
次回本格バトル開始ッ!!




