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たとえ異世界であろうとコンプレックスは直らない件  作者: 製造物
序章、異世界召喚された王國編
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0、異世界に召喚されてもコンプレックスは直らない件

 俺は黒輝 勇馬(くろき ゆうま)、絶賛好評のナイスガイだ。

 漢らしさでは人の軽く倍を行く。

 ミスター・ガイとでも呼んでくれ!


 だがそんなガイでも動揺はする。


 教室が光りだす、なんてことになれば尚更だ。

 しかもその光源が魔法陣らしいものぽかったり、クラスメイトが発狂していたりするならばさらに尚更だ。


 むしろ声に出さなかったことを評価してほしいものだ。


 クラスメイトは悲鳴を上げている。「よっしゃあああーーー!! 異世界召喚! フーーーッ!!」「ありがとうございます! ありがとうございます!」「ハーレムをあちらに築く!」……いや、これ悲鳴?


 あと「勇馬さんをまずハーレムメンバーに入れてみせる! もちメインで!」と言った男、表に出てこい。

 俺は男だ。何言い出してんの?


 そんなうちに光があっという間にその場を満たした。

 見える景色全てを白に染め上げて、消えていった。


 周りに便乗するのは嫌だが…これ、たしかに異世界召喚かもなぁー。


 それがこちらの世界にいた俺の最期の思いであり、日常が消え去る瞬間でもあった。


「お前らー。席につけー。ホームルームの時間だ………。あれ? あいつらいない? それどころか机も何一つたりともない? 何この大胆なボイコット?」


 もっとも俺たちが消えた後の地球のことは俺たちにとっては別の話だったが…


 ..................................................


 光の満ちが引き始め、周りの景色が見えるようになった時には俺たちは知らない場所に来ていた。


 とにかくだだ広い場所で薄暗い場所だった。

 どこかの屋内らしく、光源は謎の空中を飛ぶ炎しかない。


 周りを見渡すと壁、壁、壁。

 石レンガの壁しかない。

 上を見上げるものの高すぎて途中からが暗くなっていて見えない。

 とりあえずここがとてつもなく高い建物だということがわかった。


 そして俺の前に立つ王様ぽいのと姫ぽいのと王妃ぽいのと騎士ぽいの。

 ちなみに王様は多少まん丸だ。

 …装飾品は王冠しかないのでハズレだとは思いたくない。


 すると俺の方に何人か、というか結構な数の騎士達が向かってくる。

 ひとまず自意識過剰かと思ったが、視線が合うので違うようだ。


 そして彼らは俺の方に跪いて、一言。


「「「「「「好きです! 付き合ってください!」」」」」































 …は?


 いや、待て待て待て待て! 俺!

 これは勘違いだ。きっと俺じゃない。

 きっと後ろにいる誰かに対して告白したんだ!

 そうに決まってるぅっ!!


 俺は思いっきり後ろを見る。

 一途の望みをかけて背後の人物を確認する。


 →イケメン

 →見た目ショタ

 →見た目イケメン


 ふーむ、どいつだろう。

 この中に唯一女子はいるが、こいつの場合男子ではなく、女子に囲まれる。

 他の二人もだいたい同じ感じだ。


 すると後ろを向いていた俺の手を誰かが握った。

 振り向くと先程誰かを告白した騎士の一人がキラキラとした目をこちらに向けている。

 俺じゃないよね!? 違うよね!!?


「「「「「どうかお返事を! 麗しき貴女!」」」」」


 全員が俺を取り囲むように配置している。

 正直に言おう、気味が悪かった。

 どうしようもなく男に告白されるという事実に吐き気がする。


 だが俺は堪える。

 たとえもう逃げ道がなくても!

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!!


「ぇえーっと…もしかして騎士の方々が告白している相手とは……俺ですか?」


「「「「「もちろんですっ!!」」」」」


 騎士さん達がこちらにググイッと!

 俺は後ろにススイッと!

 しかし後ろにも騎士がいて逃げ場はなぁいっ!!


 周りからふと声が聞こえてくる。

 曰く『でたな。いつもの』『もはや流石勇馬さんクオリティだわ』『マジパネェっす』『つーか、ガチで洗礼だよな。あいつと関わることを考えると』『むしろ告白しない奴らがマジ勇者』と。


 …いや、コイツら喧嘩売ってんな。

 良かろう、買ってやる。

 とりあえずこの状況下から抜け出したら覚えておけ。

 俺は手加減はしない!


 と、思いつつも騎士様達に詰め寄られて割と引き気味。

 顔が下心全開過ぎて一周まわり、気持ち悪いんです。


 そして最後に一言。


「「「「「どうか俺と●●●を!!!」」」」」


「死ねぇえエエエーーーーーッ!!!」


「「「「「グフゥッッ!!!!」」」」」


 引いていた脚がすぐに騎士達の顎を穿つ!

 ついでに全員の象徴を余すことなく、蹴り上げていく!

 この間、コンマ数秒。

 匠の技が光ります…


 騎士達が揃いも揃って地面に落ちる。

 その中俺は額を拭う。

 やりきった感が本当に凄い。


 そして俺を悪魔のように見つめる王様とその他騎士。

 ちなみに姫と王妃はサムズアップ!

 いや、何に共感してのサムズアップですか?

 だがとりあえずサムズアップしておく。


 だがこの場に取り残されたのはなんだか何とも言えない雰囲気。

 悪いのは今、色んなものを垂れ流しながらピクピクしている男どもだ。

 しかしなんだかんだで俺にも非難の目が向けられている。


 一体なんなんですか?


 すると姫さまがこちらにスススッと来て、さらにサムズアップ!


「素晴らしい腕前でしたわ。あれは女の敵でしたわ。見事です。異界の()()


「いえいえそれほどで………は?」


「素晴らしく凛とした女性(・・)だこと。憧れてーーカペッ!!」


 姫様が空をぐるぐーると回転して地面に突き刺さる。


 顔面が陥没しており、思いっきりそこに打撃を受けたことを一目で理解できる。


 もちろん犯人は俺ですが何か?

 さっきからこっちの人、俺の性別勘違いしすぎ。

 つまりあちら側に非があります。


 周りがめっちゃくちゃざわめいている。(なおクラスメイトは慣れたように傍観中)


 王様らしきまん丸がこちらを動揺し、見てくる。

 周りの騎士達もなんだかもう仇を見るような目でこっちを見る。

 ただし騎士達はなんか血の涙を流しながら「こんな素敵な方を殺さねばならぬのか…」となんか言っている。

 …そう思うなら殺すなよ。


 すると俺の前に一人の騎士が立つ。

 他の騎士とは違い甲冑が一回り大きい騎士だった。

 金髪サラサラのイケメンだ。

 ただしうちのクラスには美男美女が多いのでスルーする。


 彼は俺の顔を見てふむふむと頷く。

 そして王様の方を見て、一言。


「この方、女性ではありませんよ?」


 何を言うか、突然。

 そんな至極当然のことを言うために確認しに来たのか…。


「「「「「「「「なん…だと!!?」」」」」」」」


「…は?」


 いや、異世界の皆様。

 何そんなに動揺していらっしゃるんですか?


「え!? めっちゃ黒髪ロングですけど!!?」


「ああ。真の男は髪を伸ばすので」


「…」


「こんな体型、男なら無理です!!」


「一応鍛えてはいるが、なんかガッチリしないんだ」


「……」


「お肌の手入れ完璧ですよ!!?」


「ん? シャンプーと石鹸しか使ってないが?」


「………」


 全員が沈黙した。

 何故だ?

 俺? 何もしてないが?


 とりあえず王様が俺の眼前に出てきて一言。


「えーーーーーっと……本当に女ではないのか?」


 未だに疑うか。

 そうか。

 よく見れば周りの連中も俺の方を疑問の目で見まくっている。


 よく理解した。


「違うわ、アホォおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!!!!!!!」


俺の絶叫は空まで届いた。

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