07 裕福なお坊ちゃま
「俺はケント・エル・リザース。リザース領主の息子だ」
「あ、これはどうも」
おデブさんはケントというお名前のようです。
「……何だその態度は。平民のくせして、もっと敬えよ!」
「はぁ」
敬えと言われましても。
ハンター学園の生徒は、みな等しい学生という身分だと校則で定義されているはずです。
なので、貴族平民に関係なく、上下関係は無いのです。
私がそれを知ったのは、校則についての注意事項が連絡掲示板に張り出されてからなのですが。
ともかく、貴族だからという理由で偉ぶることはやってはいけないことなのです。
「それよりも、ケント様は何のご用かな?」
お姉さまは会話に割り込み、ケントくんに問いかけます。
「お前は関係ない、黙ってろ亜人め!」
「おや、これは失礼」
お姉さまは言って一歩下がります。
怒っているというよりは、少し笑いをこらえているようにも見えました。
私も正直、ケントくんについては失笑しそうになります。
何しろ、いかにもって感じの貴族だからです。
こういう悪役っているよなぁ、とほのぼのした気持ちになってしまいます。
「おい、ファーリ。お前は俺の手下になれ」
「はい?」
ケントくんの突拍子もない言葉に、私は首を傾げます。
「手下になれと言っているんだ。わかったな?」
「それはどういう了見ですの?」
今度はリグが会話に割り込みます。
「なんだ、お前アレじゃないか、子供に負けた女だろ」
「子供とは、ファーリのことかしら? それなら事実ですけれど、何か?」
「無能は引っ込んでろよ!」
ケントくんはリグのことを侮辱しました。
これをきっかけに、私の中で認識が変わります。
おもしろ悪役貴族から、絶対潰す対象へ。私は、ケントくんを何としてもギタギタにやっつけてやりたい気持ちになります。
「まあ、お前も後期試験では2番目の成績だって噂だったな。なんなら、お前も俺の手下にしてやってもいいぞ?」
「冗談。わたくしは誰の手下にもなりませんわ」
「おうおう、弱いくせしてよくいうぜ」
「わたくしが弱い、とおっしゃいました?」
「そりゃそうだろ。こんなガキに負けるんだからな。今年の入学者で一番弱いんじゃないか?」
次々とリグを侮辱する言葉を並べるケントくん。
そこまで言うなら、相当な実力者なのでしょう。
私はスーパーサーチで能力を調べます。
―☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆―
ケント・エル・リザース(Kent El Lizzarth)
ライフ:1215
パワー:1352
攻撃力:108
防御力:125
魔法力:297
敏捷性:85
技能:
魔法適性:土(C)
魔法耐性:
―☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆―
びっくりするぐらいの雑魚でした。
いえ、一応ハンター学園に入学しているのですから、これでも学生としては十分な実力なのでしょう。
けれど、正直私は『紅き清純』メンバーのステータスに慣れてしまっているのでケントくんが弱く見えてしまいます。
さっきの授業でのランクの話から考えると、ケントくんの年齢――おそらく一般的なハンター学園入学者の年齢である16歳――にしては土魔法適性がCというのはかなりのもののはずなのです。
ですが、そもそもリグが4属性Bランク、私自身が全属性Aランクということを考えると、たった一つCランクというだけでは驚くにも値しません。
「とにかくファーリ、お前は俺の手下になれよ。俺様は土属性魔法適性Cランクの天才魔道士様だからな。魔法を教えてやってもいいぜ」
「いえ、けっこうなのです」
教わるなら、リグに教わります。
リグは土属性魔法適性がBですし。この感じだと、知識も何もかもリグの方が上のような気がします。
無闇に偉ぶるやつは、不勉強だから自分の身の程を知らないものだと相場が決まっています。
私に断られて、ケントくんは怒りで顔を真っ赤にしています。
「貴様、俺の言うことが聞けないっていうのか!?」
「まあケント様、お待ち下さい」
お姉さまがまた会話に割り込みます。




