表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/320

43 咄嗟の出来事




 足音が近づいてくるほどに、私たちは緊張します。

 この足音の大きさ――恐らく、サイクロプスです。

 それが、複数同時に迫ってきているのですから。


「サイクロプスは温和で、群れるのを嫌うはずなんだけどな。今日は厄日だ」

「……逃げるかにゃ?」

「それがいいと思う」


 アンネとお姉さまが会話した通り、今は逃げたほうがいいはずです。

 サイクロプス複数を相手に、しかも今度は先手を取ることもできません。


 ハンター活動を始めたばかりの私たちには、リスクが高すぎる相手です。


 私たちは頷きあい、この場を離れることを決めます。


 が――それは少し遅かったようです。


『グオオオオオッ!!』


 モンスターの叫び声が響きます。

 気付くと、5体のオークが巣に戻ってきていました。


「クソッ、もう戻ってきたのか!」


 お姉さまはオークの方を向き、剣を構えます。


「突破して離脱しよう!」

「分かったにゃ!」


 まず、お姉さまとアンネちゃんが飛び出します。

 素早い動きで、お姉さまはオークの身体を袈裟斬りにします。

 また、アンネちゃんはハルバードを振り下ろし、オークを頭から叩き潰すようにして倒します。


 しかしまだ3体。


 私とリグは2人を追いつつ、ブリッツを放って援護します。

 オーク達はブリッツで負傷し、行動を制限されます。

 そこへ、お姉さまとアンネちゃんの追撃。


 オーク5体は、あっさりと撃破できました。


「さあ、逃げるぞみんな――」


 お姉さまはこちらを振り向いて言い、同時に息を飲みました。


 私とリグも後ろを振り返ります。

 既に、そこには3体のサイクロプスが立っていました。


『グゴオオオオッ!!』

『オオオオオッッ!』

『ガアアアアッ!!』


 雄叫びを上げ、サイクロプスは巨大な拳を振り上げました。


「くっ――」


 私のすぐ側で、リグが小さく声を上げます。

 逃げるとしても、サイクロプスの巨体から繰り出される拳です。

 これだけ近づかれてしまえば、余波だけでもダメージになってしまうでしょう。



 私は――咄嗟に、封印を開放していました。

 本来の私の力を解き放ち、そして3つのバスターブリッツを生み出します。

 ありったけのパワーを込めた、最大出力のバスターブリッツ。


「――ハアァァッ!!」


 私は、これをサイクロプスに目掛けて放ちます。


 強烈な威力のブリッツは弾丸のような速さで全てサイクロプスの頭部に着弾し――次の瞬間、頭がまるごと消し飛びます。


 そして、遅れて衝撃が響きます。

 強すぎる威力のバスターブリッツに頭部を射抜かれ、その反動でサイクロプスの肉体は後方へと吹き飛びます。


 巨体が3つ、10メートルほど飛ばされました。


 ドスン、と地に落ちる轟音が鳴ります。



 何が起こったのかわからない様子で、私以外の3人は呆然と立ち尽くしていました。


 しばらくして、ようやくお姉さまが口を開きます。


「――はは、そうか。これがファーリの全力の魔法ってわけだ」


 お姉さまは頭を抱えて、どこか乾いた笑い声を上げます。


「助かったよ、ファーリ。ありがとう」


 そう言って、お姉さまは私に近づいてきます。


「いえ、当然のことなのです」


 私は言いながら、リグを見ます。

 とても驚いた表情をしていました。


 私はなぜか、とてももやもやとした気持ちが胸に湧き上がるのを感じました。

 それは黒くて、嫌な感じのする感情でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ