37 いよいよチーム結成!
仕方なく、私は自分の職業を消去法で選びます。
この中で、無属性魔法を扱えるのは私だけです。
そして、前衛は2人、後衛が1人。やるとすれば、私は完全な後衛です。
けれど、魔法で攻撃をするポジションはリグが担当しています。最大封印の私よりも魔法力は高いので、私が半端に無属性魔法で混ざっても役には立たないでしょう。
では、補助系の後衛魔法使い、というのはどうでしょうか。
お姉さまも言っていたとおり、このチームで治癒魔法が使えるのは私とお姉さまのみです。
なので、このチームで足りていない戦力は『治癒魔法や補助魔法の使い手』と『無属性魔法の魔法使い』の2つになります。
これらを兼ね合わせる職業は……。
「――そうです、『神官』なのです!」
私は見つけました。
治癒や補助の魔法を使いつつ、無属性魔法で攻撃を行っても不自然ではない職業。
「ん、ファーリは神官にするのかい?」
「はいです」
私はお姉さまに問われて頷きます。
「特典はどんな感じですの?」
「えっと……」
リグに言われてから、私は神官の特典をチェックします。
―☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆―
E:『聖典売買価格優遇』
D:『長物系武器売買優遇』
E:『治療実績による特別賞与、特別報酬へのボーナス付与』
D:『自然素材系売買価格優遇』
―☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆―
思っていたよりも良さそうな特典がついています。
この中で、私がよく分からないのは聖典とかいうものについてです。
「あの、聖典とは何なのです?」
「知らずに神官を選んだのかい?」
お姉さまに咎められるように言われ、私は視線を逸らします。
「……まあ、ぴったりだと思うからいいけどね。聖典とは古典英雄教がまとめた独自の魔法体系についての書物だよ。普通の魔導書と違って、命属性の攻撃魔法や補助魔法なんかもたくさん載ってる。まあ、魔法適性が高いファーリにはいい勉強道具になるんじゃないかな?」
「そ、そうだったのですか……」
図らずしも、目的通りの職業を選べたのです。
その後、ハンター登録の書類はすぐに書き終わって提出しました。
最後に残るのは、チーム登録の為の書類です。
というか、必要事項はほぼ書き終わりました。
問題は――チームの名前です。
「どうする?」
「ここはリーダーであるクエラさんが決めるのがよろしいのでは?」
お姉さまに向けて、リグが言います。
「いや、僕は正直ネーミングセンスがアレだと言われていてね」
「あら、では試しに一つどうぞ」
面白いものを見つけたような顔をしてリグは言います。
お姉さまは困ったようにしながらも、一生懸命考えます。
「……『高貴なる怪人たち』というのはどうだろう?」
「キッモイ名前ですわね、却下ですわ」
リグにばっさり切り捨てられ、お姉さまのアイディアは却下されました。
いや、リグの意見には私も同意なのですが。にしてもバッサリいきすぎです。普通にお姉さまが泣きそうな顔になっています。
「……じゃあ、サブリーダーのリグレット様が決めて下さいよ」
「そっ、それは嫌ですわっ!」
「何故なのです?」
私が聞くと、リグは顔を紅くします。
「わ、わたくしが決めた名前をみんなが呼ぶなんて、恥ずかしくて耐えられそうにないのですわ。だから無理なのですっ!」
恥ずかしがり屋さんですか。
はぁ、リグはやっぱり可愛いのです。尊いのです。
ああ……好き。
とまあ、お友達の素敵さにうつつを抜かしている場合ではありません。
「はいはいだにゃ! アタシにいいアイディアがあるんだにゃ!」
アンネちゃんが手を上げます。
「よし、アン。君のアイディアに賭けよう」
「みんなの名前から文字を一つずつとって、それっぽい名前にしてみるにゃ!」
「なるほど、それは良いアイディアだね」
お姉さまが良いと思うなら、恐らく失敗なのです。
結果挙がった文字は『クリファアカ』でした。
意味わかんないのです。
「……まあ、却下ですわね」
「そんにゃ!?」
アンネちゃんはショックを受けた様子。でも、妥当な結果なので同情はしないのです。
「じゃあ……後は、ファーリぐらいしかまともな意見を言ってくれそうな人は残ってないんだけど、どうかな?」
お姉さまは私に話を振ります。
「あれ? 私は? カミーユって人がこのチームに居る気がするんだけどな? あれ? いなかったかな? いそうな感じがしたんだけどな?」
カミさまが無視されたことについて抗議してきますが、当然これも無視します。
泣くカミさまをよそに、私は名前について考えます。




