07 トラブル体質はどうなったの!?
「じゃあカミさま! トラブル体質はどうなんです!? 私のトラブル体質は治ってないじゃないですか!」
そうです。
10歳の私の記憶を遡れば、子爵令嬢ファーリちゃんの人生はトラブル続き。
馬に蹴られて10メートルぐらい吹き飛んだり。
笑い話かと思ってメイドの話に付き合っていたら突然泣かれて屋敷から出て行かれたり。
どうにも、前世の私が経験したような不幸なトラブル、そして空気の読めない発言で嫌われるようなトラブルが頻繁に発生しています。
「そこは、可能な限りって言ったでしょ? さすがにユッキーのトラブル体質を治しちゃったら、私が楽しめないからね。むしろ、ちょっと強化しておきました!」
「ひ、ひどい……」
つまり、私が前世で望んだものは何一つ手に入っていないということです。
こんなひっどいカミさま、いるのでしょうか。
まあ、実際いまここにいるわけですが。
「ともかく、ユッキーはこれから剣術の実技試験なんだよね?」
「え? はい、そうです」
「そろそろ行ってあげないと、お父さんが待ちくたびれちゃいますよ?」
カミさまに言われて、思い出します。
そうです。私は今、パパから剣術の実技指導を受けるのです。
そして、その成果如何では私の今後も決まる、と言われました。
つまり、武家の娘としての将来を決める重要な一戦なのです。
前世の記憶を取り戻したと言っても、私はファーリ・フォン・ダズエル。武家の娘として、立派に奉公したいという思いがあります。
表情を引き締め、私は意識を持ち直します。
「――とにかく、カミさまとは後でお話しましょう。今は、パパと闘うことに集中します。転生についての詳しい話は後ほど、ということで」
「もちろん。私はいつでもユッキーの側で、ユッキーのことを見てるからね。君を転生させた神として、責任持って生涯見守り続けるつもりだよ。聞きたいことがあればいつだって応えてあげる」
「ありがとうございます、カミさま」
なんだか妙にスケールのでかい話で応えられた気がします。
ともかく、今は戦いに集中です。
私は部屋に置かれた姿見の前に立ちます。
赤く、宝石のように透き通った光を跳ね返す長髪。ウェーブのかかったロングヘア。今は、闘う為に高い位置で縛ってポニーテールにしています。
そして金色の瞳。とても10歳の女の子とは思えないような、鋭く妖艶な眼光。
そう。私、ファーリは美少女なのです。
多少なり、以前から可愛いなという自覚はありました。
しかしまあ、前世の記憶を取り戻してみると、これは特上の可愛さだと気付いてしまいます。
とまあ、外見についてはここまでです。服、剣を収める鞘やそれを吊るすベルト。そういった装備を一通り点検して、私は気合を入れて声をあげます。
「――よし、頑張るのです、私!」