17 いつものアレ
リグに『アレ』を見られるのは、ちょっとだけ恥ずかしいのです。
でも……お姉さまの『アレ』は、正直なところ私も久々にやってもらいたいのです。
「どう、ファーリ? 別に隠し立てするようなことでもないよね?」
「ううう……そうです、いずれは行為の現場を見られることもあるかと思うのです。今だけ秘密にするというのも……でも、えっと」
「待ちなさいな、お二人とも。『アレ』とは何なのです。わたくしだけ置いてけぼりのまま話を進めないでくださる?」
リグが少し怒ったように言うと、お姉さまは意地悪な笑みを浮かべました。
「それなら――見せた方が早いかな」
言った途端、お姉さまは私の身体に覆いかぶさり、そして――首筋に、牙を突き立てました。
「んうぅっ!」
少しの痛みと、奇妙なことに淡い快楽のしびれが私の首筋に走ります。
そして、お姉さまの牙は私の血を吸い上げていきます。
血が吸われるほどに、私の身体に痺れるような快楽が広がっていきます。頭の奥がじんじんして、次第に意識がぽわぽわ、ふんわりしていきます。
あぁ~、なんともいえません。不思議な、いいきもちです。
「ちょっと、何をしていますの!?」
「見てのとおり、吸血ですよリグレット様」
「そ、そんなことして大丈夫ですの!? 眷属とか、そういうのになっちゃったりしませんの!?」
「それはおとぎ話の中のことですね。僕が血を吸いすぎなければ、身体の負担にもなりませんよ。むしろ、吸血の際に相手の身体に流し込む体液が、媚薬に近い効果を発揮しますから。今のファーリは夢心地のはずですよ」
「びっ……!? な、なんてものをファーリに与えてますの!?」
「いや、僕らは昔からこんな感じですから問題ありませんよ。ね、ファーリ?」
「はう~~、あ~、ちかちかするのです~」
お姉さまとリグが何かを言い合っているようですが、あたまがふわふわして何を言っているのかよくわかりません。
視界もちかちか眩しく光って、なんだかすごい感じです。
「……あー、久々すぎて加減を間違えちゃったかな? トリップしてますね、これ」
「貴女、自分の妹になんてことをしますの!! ……ファーリ、しっかりなさい! わたくしが貴女のお姉さまの毒牙から守って差し上げますからね!」
「ふえぇ~、リグ~~~」
リグが何かを言いながらわたしをだきしめてくれます。
きもちがいいのです~。
「あはは、リグレット様は本当にうちの妹のことが好きなんですね」
「ばっ、バカおっしゃい! わたくしはあくまでもこの子の安全を思って……」
「はいはい。……でも、僕の可愛い妹はそうそう簡単に渡しませんからね?」
「な、何を……」
「愛する人を取り合うつもりなら全力で、という意味ですよ」
「はぁっ!? あ、愛するって……貴女ファーリの姉でしょう!?」
だんだんと、お姉さまとリグの言い合う声が大きくなっていくのです。
何を言っているか聞こえませんが、大きな声があたまにガンガン響くのです~。
「愛に障害はつきものですよリグレット様。それとも、血の繋がりという差だけで僕に勝ったつもりですか?」
「勝ちも負けもありませんわ!」
「おや、リグレット様はファーリのことを愛していないと?」
「愛するもなにも……」
リグがことばにつまっているようです。
なにを話しているのかはわかりませんが、顔を真っ赤にしているリグはとっても可愛く見えるのです。
「わたくしはただ、ファーリのことが心配で、とても愛らしいと思っていて、いつも側で見守ってあげないと不安になって、この子の一生が健やかであるよう付き添ってあげたいだけですわ!!」
「大好きってことじゃないですか」
「そっ……そうなのですけれど、ちがうのですわぁっ!!!」
「あはは、リグレット様をからかうのは楽しいですね」
「はぁ!?」
「けどまあ、そろそろファーリの意識をこっちに戻してあげないとかわいそうです」
突然言い争いが終わったのです。なんのはなしをしていたのでしょうか?
あ~、フラフラするのです。
「ほら、ファーリ。今治してあげるからね。……霊なる存在よ、不浄なる力、蝕むものを我が声に応え浄化せよ。『キュア』!」
お姉さまの手が、わたしのひたいにあたります。
あったかいのです。
じんわりと、魔力が額から身体に広がっていって……。
……はっ!?
「私、もしかしてトリップしていたのですか!?」
「そうだよ、ファーリ。ごめんね、久々の吸血だったから少しやり過ぎちゃったよ」
「そうだったのですか……ところで、お二人は何かお話していたようだったのですが、何のお話を?」
「ファーリには関係ありませんわっ!!!」
なぜか、リグが怒ってしまいました。
お姉さまはガチレズです。
誰でもテゴメにしたがります。
そんなクエラお姉さまが好きだなって方や、この作品を面白い、続きが気になる等思ってくださった方はブックマークや評価の方をよろしくおねがいします!




