16 お姉さまの反省
しばらくの間、私とリグは甘~いお友達タイムを続けていました。
ですが、カーテンの向こう側から声が聞こえてきて、ついに2人っきり気分は終わりを迎えます。
「……うぅ、ここは?」
それはお姉さまの声でした。
「目覚めたみたいですわね」
「お姉さま!」
私はベッドから起き上がり、お姉さまの方へ向かいます。
治癒術のおかげか、足は既になんともありません。
カーテンを開くと、そこには横たわったままのお姉さまの姿。
「ああ、ファーリ。――そうか、僕は負けたんだね」
はぁっ、とお姉さまは深いため息を吐きました。
「いやあ、ズルまでしたのに負けるなんて。正直びっくりだなぁ」
「へっ? ズルですか?」
「ふふ。僕のステータスをサーチしてごらん、ファーリ」
お姉さまに言われるがまま、私はスーパーサーチを使います。
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クエラ・フォン・ダズエル(Quela Fon Dazzuel)
ライフ:7295
パワー:3567
攻撃力:1264
防御力:587
魔法力:803
敏捷性:641
技能:総合武術(B+) 剣術(A) 飛行(D) 魔眼(C) 自然治癒(E)
造血(D) 血液操作(D) 魔力結晶(D) パワー回復(D) 吸血(D)
魔法適性:闇(D-)、命(D-)
魔法耐性:闇(D)
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……あれ?
模擬戦の時よりも、ステータスが下がっています。
しかも、模擬戦の時には無かった技能、吸血というものが増えています。
詳細を見てみましょう
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吸血:血を吸うことで力を蓄える。任意に蓄えた力を開放し、自分を強化する。
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なるほど。
つまり、模擬戦の時のお姉さまは吸血で蓄えた力の分、自分を強化していたというわけですね。
でも、それはズルとは言いません。
「見えたかな、ファーリ?」
「はい。でもお姉さま」
「言わなくていいよ。何にせよ、僕は負けたんだからね……細かいことはどうでもいいさ」
はぁっ、とまた大きく息を吐くお姉さま。
でも、その息はどこか清々しい、軽い調子のため息でした。
「僕は、少し自惚れていたかもしれないね。ファーリを守ってあげる騎士のつもりでいたんだけど、思い違いだったみたいだ」
「そんな、お姉さま! 私にとって、お姉さまはいつまでも憧れの人です!」
私は、お姉さまの手を取って言います。
けれど、お姉さまは首を横に振りました。
「いや、別に自分を卑下しているわけではないよファーリ。ただ、自分の妹だって強くなるんだ、ってことを思い違えていたんだ。それを、反省しているだけさ」
言うと、お姉さまは私の手を強くぎゅっと握りしめます。
「これからは、妹を守るナイト気取りはしない。共に強くなっていこう、ファーリ。これからの僕たちは、対等な仲間。そして、ライバルだ」
「――はいっ!!」
憧れのお姉さまに対等とまで言ってもらえて、私は嬉しくて飛び上がりそうな気持ちになりました。
「――さて、いつまでもこうしちゃいられないな。ファーリに負けないよう、強くならないと」
お姉さまはベッドから身体を起こし、私の方を見る。
「というわけで、すまないけどファーリ。いつもの『アレ』、お願いしてもいいかな?」
お姉さまに言われ、私は顔が赤くなります。
「アレですかっ!? でも、今はリグが見ています……」
「……アレ、とは何ですの?」
リグは訝しげな声を出して、首を傾げました。




