11 クエラの実力
私はお姉さまに言われるがまま、学園の訓練場――昨日は入学試験を実施していた場所に向かいました。
その道中、お姉さまは簡単に説明をしてくれました。
強敵と戦いたい。
……はい、それだけです。
昔からお姉さまはそうでした。
お屋敷の敷地内では自由がありましたが、お姉さまは外に出ることが許されていませんでした。
なので、お姉さまのやることと言ったら、お勉強と修行。そればかりだったのです。
気付くと、お姉さまはお屋敷内ではパパ以外に敵うものなし、というほど強くなっていました。
その頃からお姉さまは……パパ以外の、全力で戦える相手というのに飢えていました。
そんなところに、私というイレギュラーな実力者が現れました。
元々、私はお姉さまほどの力はありませんでした。
しかし、今は魔法適性に目覚め、それに引きずられて潜在能力まで開花しています。
きっと、お姉さまの目には新たな好敵手が現れたように見えたでしょう。
「――準備はいいかい、ファーリ」
お姉さまは、一本のロングソードを手に持って言います。
訓練場は朝ということもあり、かなり空いていました。
その一角を、私とお姉さまで占拠し、これから決闘……もとい、模擬戦を行います。
審判として、リグが無理を言って教員を呼んできてくれました。
なんと、ちょうど私を昨日見つけてくれた、あのリリーナ先生でした。
「……いつでも、戦えるのです」
私は言って、エクスコルドを構えます。
いつものお仕置きモードではありません。
無属性魔法の魔力を流し、ちゃんと切れる魔法剣を生み出します。
そして、私は自分に解除できる全ての封印を解除します。
――というのも、お姉さまのステータスをスーパーサーチで確認してめちゃくちゃビビってしまったからです。
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クエラ・フォン・ダズエル(Quela Fon Dazzuel)
ライフ:32882
パワー:28996
攻撃力:3053
防御力:1285
魔法力:1812
敏捷性:1427
技能:総合武術(B+) 剣術(A) 飛行(C) 魔眼(C) 自然治癒(D)
造血(B) 血液操作(B) 魔力結晶(B) パワー回復(B)
魔法適性:闇(D+)、命(D+)
魔法耐性:闇(C)
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バケモノです。
最初見た時、そう思いました。
ステータスに関しては、私を上回っている部分がたくさんあります。
ですが、まだ私が上回っているステータスもあります。
むしろ、ステータスよりも技能の方です。
一つ一つをスーパーサーチで確認していくほどに、恐ろしくなっていきました。
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総合武術:一般的な武器全てに関する技術。
飛行:空中をパワーを消費して飛行する能力。
魔眼:様々な情報を直感的に見抜く力。
自然治癒:時間経過と共に肉体の負傷、そしてライフが回復していく。
造血:自分の血液をパワーを消費して増やす。
血液操作:パワーを消費し、血液を自在に操る。
魔力結晶:魔力を結晶化し、固形化する。
パワー回復:時間経過と共にパワーを回復する。
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最後の技能で、他の技能のデメリットを全部打ち消しちゃってます。
つまりお姉さまは、空が飛べて、怪我が勝手に治って、血や魔力を直接武器に変えて戦えるのに、それで何も消費しないも同然ということです。
いや、ホント人間じゃないです。
まず飛んじゃダメですよお姉さま……。
いくら吸血鬼だからって、それは人外すぎます。
「それでは、2人とも準備はできたようだね」
リリーナ先生が最後の確認をします。
私とお姉さまは頷き、肯定の合図を出します。
「それでは――模擬戦、開始ッ!」




