24 模擬戦、開始!
私はまず、素早くリグレットさんとの距離を詰めます。
対してリグレットさんは私から距離を取りつつ、銃剣を構え――射撃します。
予想はしていましたが、リグレットさんの銃剣は『魔法銃』です。
魔法による弾丸を発射する銃であり、威力はブリッツの比ではありません。弾速、威力は実銃に匹敵。
しかも魔法による追加効果もあります。爆発、雷撃、毒や氷結。変幻自在の弾丸を放つ、恐ろしい武器です。
しかも、リグレットさんの場合は二丁ともライフル型。
相当な威力だろう、と想像がつきます。
リグレットさんのはなった魔法銃の弾丸を、私は軌道を予測し、予め身を傾けて回避しておきます。
弾丸はスレスレを飛んでいき、私の背後の地面に着弾。
衝撃で吹き固められた土が吹き飛び、大きな土煙が上がります。
これを数回繰り返して、私もリグレットさんも状況の膠着を察知し、行動を変えます。
私は無理に追いかけるのをやめ、その場に立ち止まります。
リグレットさんも銃剣を構え、立ち止まります。
最大封印の私とリグレットさんの敏捷性はほぼ同じ。だから、追いかけっこに意味はありません。
私はリグレットさんの弾丸を避けることだけに専念することにしました。
詰め寄るチャンスがあるとしたら、リグレットさんが『射撃は無意味』と考え、新たな行動を起こしてくれる時でしょう。
一方で、足を止めたリグレットさん。恐らく私の行動を警戒してのことでしょう。
しかし、何故立ち止まっているのか。距離を離したほうが、射程で圧倒しているリグレットさんには有利なはず。
そして――次の瞬間、リグレットさんはこちらに向かって駆け寄ってきました。
私は驚くと同時に、なるほど、と思いました。
リグレットさんは剣でも、銃でもなく銃剣の使い手。
普通ならば、剣は近距離戦のおまけであり、あくまでも銃が主体となるところ。
けれどリグレットさんのステータスでは、射撃術だけでなく剣術もCランクの腕前があることが確認できています。
つまり、近距離戦もまた、射撃同様にお得意の分野だということです。
「――ハァッ!!」
リグレットさんは銃剣を振り、私に斬りかかってきます。
難なくこれを回避しますが、続けざまにもう一本の銃剣も襲ってきます。
二刀流による、息もつかせぬ連続攻撃。
私はこれらを見切り、回避していきます。
リグレットさんの太刀筋は鋭く、相当な鍛錬を積んだものだとひと目で分かります。無闇に振っているわけでもなく、ちゃんと私が嫌な太刀筋を連続して選び、追い詰めようとしてきます。
ですが――その練度は、あくまでも私の家の騎士団員と同等のレベルです。
その騎士団員よりも強かった私が、やすやすと捕まるわけがありません。
「チッ」
リグレットさんの舌打ち。それと同時に、太刀筋が変わります。
どこか大雑把にも思える、不思議な太刀筋。どちらかというと、大きく舞うような動き、とでも言いましょうか。
当然、回避は難しくありません。
ですが――回避と同時に、もう一方の銃剣が『射撃』をしてきました。
魔法弾が、私に襲いかかります。
思わぬ連携攻撃に、私は驚きながらも、なんとか回避を済ませます。
しかし、これで終わるはずがなく。
さらにリグレットさんの銃剣は斬撃を積み重ねてきます。
剣だけでは不可能な連携、そして嫌らしい攻めに、私は想像以上に追い込まれていきます。
リグレットさんの剣術と射撃術の連携攻撃が凄いというのもありますが、それ以上に見たことのない動き、というのが私を苦しめていました。
何しろ、次の一手が想像できません。
そして、太刀筋や弾道が見えていても、上手く回避する手段が想像できません。
連続攻撃を受けていくうちに、私は余裕を失っていきます。
そして――ついに、私は射撃の弾道上に、回避もできない体勢のまま捉えられてしまいます。
「貰いましたわッ!」
パアンッ、とリグレットさんの射撃音が響きました。




