10 四天王とエシルクロニア
私たちが議事堂跡の奥に進むと――帝国議会の人たちが集まっていました。
既に襲撃があったことは理解しているらしく、全員があたふたしています。
「聞けッ! 議長及び四天王以外の人間に危害は加えない! 今は黙って控えていろ!」
お姉さまが、声を張り上げます。
それだけで、議事堂跡に集った人々は壁際へと寄って、自分が逆らうつもりがないことを意思表示します。
そして、部屋の中心には私たち五人と――帝国議会側の五人が残りました。
議長にて皇帝のエシルクロニア、そして四天王の四人です。
「ここまで来るとは、恐れ入ったな」
口を開いた男――エシルクロニアは、金髪碧眼の美男子です。
まるで物語の主人公のような整った外見と、堂々とした雰囲気。
なるほど、敵のリーダーを務めているだけはあるな、と感じます。
「だが残念だったな、お前たちがここまでくるのも想定のうちなんだよ」
「……どういうことだ?」
エシルクロニアの言葉に、お姉さまが眉をしかめます。
「戦争を回避したければ、政治の中枢を担っている人物を暗殺するのが早い。俺のような人間がいると分かっていれば、こういう日に暗殺者が襲ってくる可能性は高い。分かりきっていることだろう?」
「……それのどこが想定の内なのかな?」
お姉さまは、エシルクロニアを睨みながら尋ねます。
「わからないか? ――つまり俺は、最初からお前たちのような奴らが襲ってくるつもりでいた。そして、護衛のSランクハンター共さえ突破してくる可能性も考えていた。だが、こうして余裕を持ってお前たちと相対している」
言いながら、エシルクロニアはニヤリと嫌な笑みを浮かべます。
「つまりだな……俺は、その程度の奴らが襲ってきても、何の問題も無いほど強いということだ」
その言葉に、私以外の全員が息を飲みます。
皇帝エシルクロニアの実力、それが測りきれずに緊張しているようです。
「そして、俺だけではない。俺を囲む四天王たちもまた、俺と同様に強い。まあ、転生チートのおすそ分けというやつだ。……お前たちこの世界の人間には理解できんだろうがな」
エシルクロニアの言葉に応じて、四天王たちが前に出てきます。
聞き捨てならない言葉が混じっていたような気がしますが、今は四天王の方に集中しましょう。
四天王たちは、姿を覆い隠すように着ていた黒いローブを脱ぎ捨てます。
そして――四人の女性が姿を現しました。
「まず私から名乗らせてもらうわね。前ゴルトランドの皇帝の娘だったけれど、エシルに救われ、今は一緒に戦わせてもらっているわ。リーベリンネ・ソォン・ゴルティフェイスよ」
一人目の女性はそう言って、仰々しくカーテシーで礼をしてきます。
「アタシはエシルの幼馴染で、剣士のアンナだ! エシルの敵なら、容赦しないからな!」
続いて、大剣を抱えた女の子が獰猛な目つきでこちらを睨みながら宣言します。
「私は、旧ゴルトランドの政策によって弾圧されていた聖女教の神官、ミリエラです。戦いは好きではありませんが……世界平和の為には、エシルが世界を治める必要があるんです。だから、逃げません!」
次に声を上げたのは、神官服を着た女の子です。
ちなみに聖女教というのは、古典英雄教の中でも特に聖女を信仰する派閥です。
それだけなら問題ないのですが……治癒の力を神の力と同一視する傾向があり、他の古典英雄教とはあまり仲が良くありません。
国教でもなければ、どの国でも微妙に立場の悪い宗教だったりします。
「最後は私だね。名前はフォノン……エシルが才能を見出してくれたお陰で、スラムから抜け出すことが出来た。勇者、っていう存在らしいんだけど、自分ではよく分かってない。でも、エシルの為に使える力があるなら、全てを捧げて戦うつもりだよ。宜しく」
そう言って、最後の女の子は儀礼剣のように装飾の施された剣を構えます。
「――とまあ、以上四人の信頼できる仲間であり、俺の嫁でもある彼女達がお前らと戦う。万に一つも、貴様らに勝ち目は無い。諦めるんだな」
エシルクロニアは、女の子たちを見回しながら、自慢げに語ります。
……もしかして、四天王って、エシルクロニアのハーレムパーティーなのです?
テンプレハーレム野郎が出てきました。
テンプレどおり、ハーレム野郎が無双するのか?
それとも、我らがファーリさんがチートを粉砕するのか!?
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